0064 ダンジョンとイベント後
ここからしばらくはダンジョンの中のお話!
(プロローグから0020みたいな)
『4名のプレイヤーが侵入しました』
「ほんっとうに止まらないね、この侵入ラッシュ」
イベントが終了してから一夜が明けた今日、紬のダンジョンには多くのプレイヤーが挑戦しに来ていた。
運営からの慈悲なのか、はたまた偶然なのか、イベント終了後にこのゲームにメンテナンスが入り、終了後すぐにダンジョンに殺到する最悪のケースは免れた。さらに、紬だけメンテナンス期間に少しだけログインすることを許され、少しだけプレイヤー対策の改造を行うことができていた。
とはいえ、その改造も応急処置。
このままではコアに到達されるのも時間の問題である。
「僕も戦うかー」
紬は管理部屋から出て、シルトのもとへ向かった。
プレイヤーが管理しているダンジョン、その明らかな特異点から踏破したら何か重大なことが起こるに違いない、と今まで戦うことを避けていたシルトに挑むプレイヤーは増えていた。
「火炎放射」
「シールドバッシュ」
シルトのシールドバッシュで相手の攻撃を無効化しながら、スタンを与え、火炎放射で大ダメージを確実に与えていく。このコンボをしているだけで、プレイヤーのHPは簡単に消し飛んでいく。今回も例外ではなかった。
「倒した倒した。シルトおつかれー!」
「マスター、早くコアを強化してよ……持ってきたんでしょ?」
「あっ、そういえばそうだった。一位事件のせいでわすれてたぁ……」
一位事件とは、イベントで紬が一位になってしまった出来事のことである。
あの事件の真相は、あの後すぐに解明した。それは……。
「まさかさ、取られた水晶の数が僕の獲得数になってるとは思わないじゃん?水晶ゴーレムの水晶が一位の原因だろうね」
「まあ、そのおかげでDPがたくさん貯まるようになったからいいんじゃない?でも、疲れるからもう少しダンジョンを拡張して人を分散させてほしいけどね」
紬はごめんごめん、と笑いながら手を合掌させた。
紬がイベントで一位になったのは、水晶ゴーレムが水晶のカモにされていたことで、大量にとられた水晶。それが、紬の獲得した水晶になっていたのである。100人以上いたプレイヤーがこぞってとった水晶の数。それはそれは一位にふさわしい数だった。
「それじゃコアを強化してくるね。多分ダンジョンが揺れたり壊れたりするけど気にしないでね」
「うん、それは大丈夫。でもプレイヤーがいてもできるんだっけ?」
「あっ、そういえばそうだった」
紬はウィンドウを開き、ダンジョン管理の項目をタップした。
すると、いくつかの項目がさらに表示された。そこには、「ダンジョンを侵入不可にする」というダンジョン改造の時にのみ認められる項目があった。
紬は「侵入不可にする」をタップし、ウィンドウを閉じた。
「これで今この中にいるプレイヤーがいなくなったら、コアを強化するね。えーっと……あと三十人いるみたいだから頑張って」
「三十人!?多いなぁ……マスターも手伝ってよ」
「ええー……やだよー……」
三十人が固まって動いているわけではなく、各々で動いているため、全員倒すためには複数回戦闘する必要がある。そうすると、かなりの時間が必要になる。そのため、シルトも紬もめんどくさがっていた。
「おっ、なんか十人減った。おーっ……なんかみるみる減っていくんだけどー……」
紬がウィンドウを確認すると、プレイヤーの数は見る見るうちに減っていき、いつの間にか残りは一桁になっている。
「グレイトウルフたちの仕業かもね」
シルトは嬉しそうに言った。
グレイトウルフはシルトの次に古参の仲間だが、あまり最近は活躍できていなかった子たちである。
「グレイトウルフたちか!最近見てないや、元気にしてるの?」
「ガルッ」
紬が後ろを振り向くと、そこにはお座りをして尻尾をぶんぶんふっているグレイトウルフたちの姿があった。
「元気してたー?ごめんねー、なかなか会ってあげれてなくて」
「ガルッ」
グレイトウルフたちは首を縦に振り、紬の手に顔を近づけた。
撫でてほしそうである。
紬はグレイトウルフたちの要望に従って体中を撫でまわした。
ふっかふかの毛が気持ちよく、紬もグレイトウルフもにっこにこで戯れていた。
『ダンジョン内からプレイヤーがいなくなりました』
「きたきた、今こそ拡張のチャンスだね」
紬はグレイトウルフから手を放し、立ち上がった。
「じゃあ、またあとで来るからね、ばいばーい」
紬はグレイトウルフたちに手を振り、管理部屋の中へと消えていった。
グレイトウルフは久しぶりにマスターに会えてうれしかったのか、興奮気味で尻尾を振り回している。
シルトはその様子を見て、優しく微笑んだ。
「ウルフたちも進化できるといいね」
「「ガウッ!」」
グレイトウルフたちは元気よく返事をして、にっこり笑った。




