0053 闇の中
「クロウド、貴様こんなところで何をしている?」
闇の中から声が聞こえる。おらにとって聞き馴染みのある声。
「何って……そっちが勝手に追い出したんだろ」
「ふっ、まだ根に持っていたのか。貴様のようなチビが何を言おうとあやつらには信じてもらえなかったのだろう?私は悪くないぞ?悪いのは奴の血を引いておきながら弱い貴様だ」
今でも鮮明に思い出すことができる。忘れたくて忘れようとした嫌で苦い最悪の記憶を。
「お前は大器晩成型だ」
そう父上はおらに子供の頃からずっと言い聞かせてくれた。
今は弱くてもきっといつかは父上みたいに強くてかっこいい悪魔になれる。そう信じ続けて過ごしていた。
なのに……あの日、こいつのせいで……!
自分の溢れ出しそうな気持ちを抑え、口を開いた。
「今、悪魔界はきちんと安全なんだろうな……?」
「何、心配しなくても悪魔界はもうお前と関わりはない。気にせず生きろ。ふっ、貴様は死んでも誰にもわからない程度の存在だろうがな」
いちいちそうやって上から目線で貶してくる。昔はそんな奴じゃなかったのに。
「母上は、母上は無事なんだろうな……?」
「ああ、無事だぞ。私の隣で無事に過ごしているさ」
「お、お前!!母上に何をしたんだッ!!」
目の前の男は嘲笑うように、口角を上げた。
「何もしていないさ。私はお前の父のことを話しただけだ。何もしちゃいない。あっちが勝手にしているだけだ。結婚もあっちが決めたこと。私は提案しただけだ」
「お、お前……!ど、どこまでおら達を壊せば済む気なんだ……!」
おらは怒りのあまり手を強く握りしめた。爪が刺さって血が出るほどに。
「ふっ、勝手に壊れているだけだろう?そこで倒れた女もそうだ。私はただこの闇を作り出しただけ。勝手にそいつの心が壊れた。まあ、その女はもうダメだろうな」
「くっ……おらのせいで……」
「なんだ、自覚はあったのか。お前の周りが壊れていくのはお前のせいだ。私のせいじゃない。責任転嫁もいいところだ」
男はおらのことを鼻で笑った。
それも昔と何も変わっていない。こいつが愉快な時の笑い方。
「まあ好きにするがいい。私は失礼するとしよう。目的のブツは回収できたからな」
男はワープゲートに近づいていく。
こいつをそのままにしておいちゃいけないことはわかってる。でも、今のおらじゃ絶対に勝てない。おらは、おらは、どんどん周りを不幸にしていく。本当におらは生きていていいのか……?
「おっと、そうだったそうだった。貴様の母親から言われていたのだった。貴様に最後のチャンスをやろう。私はそこの女を貴様についての記憶をなくし、心を元に戻した上でこの空間から出してやろう。ただ、悪魔の力を全て私に渡せ。これが交換条件だ。どうだ?貴様にもメリットはあるだろう?」
悪魔の力を全て渡す……?
そんなことをしたら絶対に父上の力も悪用されて、悪魔界がどんどん危険になっていく。で、でもそうしないとおらの主人はこのまま……?
「わかった。その取引に応じる」
「ほう、わかっているではないか。それでは貴様の力は全てもらおう。永遠にさよならだ、デビル・クロウド・ルシファー」
『デビル・クロウドの悪魔の力が消滅したことを確認。悪魔として存在の可能性0%。エラー。想定していない状態のモンスターです。ゲームに対する有害度99%。危険を確認。緊急対処を開始します』
『ツムグはgrimwarを取得しました』
意味がわからなかったらそれで正解です。そのまま読んでいただけたらいつかわかります。




