98 とっても怖い夢 ……ある日、わたしは本当に怖い夢を見た。
とっても怖い夢
……ある日、わたしは本当に怖い夢を見た。
かげろうはとても、とても怖い夢を見て、まるでその夢の中から逃げ出すようにして、くるまっていた毛布の中で目を覚ました。
……それは、夢を見るようになってから初めての経験だった。
かげろうは(小さなねじが頭から取れてしまった日の夜から)夢を見るようになってから、今までいろんな夢を見ていたのだけど、その夢はだいたいは意味もわからない不思議な世界で遊んでいる夢だったり、あるいは、(まだ会ったことのない、名前や顔のない)幽霊ホロウのみんなと一緒に(楽園のような場所で)遊んだりするような、そんなとても楽しい夢ばかりだったのに、こんなに眠っているときに夢を見ていて、……、『怖い』と感じたことは今日が初めての経験だった。
かげろうはしばらくの間、薄暗い星屑の隠れ場(捨てられている青色の電車の車両)の中で、手作りのベットの上で、毛布にくるまって横になったまま、その大きな二つの(幽霊ホロウの瞳の中に星のある)目だけをぱっちりと開けて、見慣れた隠れ場の暗いぼろぼろの天井を、……、ただ、じっと見つめていた。
かげろうは自分がどんな怖い夢を見たのか、夢の中のできごとを思い出すことができなかった。(怖い夢は目覚めと一緒にどこかに消えてしまった。……、よかった)
……、なのに、かげろうはその闇の中に確かに恐怖を感じていた。怖い夢を見たという感情だけが、まだかげろうの心の中に残っていた。
闇が怖いと思うこと、闇に恐怖を感じること。
……それも今日、かげろうが生まれて初めて感じる経験だった。(今まで闇が怖いと思っていなかったことが、不思議なくらいに怖かった)
かげろうは(闇の中で)思考する。
かげろうは幽霊ホロウの服である(幽霊ホロウはみんな、ひまわりお母さんからもらった同じ服を着ていた)ぶかぶかな袖の大きめのフード付きの白色のコートのポケットの中から、『ぼんやりと青白く光る小さなねじ』をとりだして、それを手のひらの上で見る。……、闇の中でぼんやりと光る青白い光。(見ていると、なんだかとっても安心する不思議な光)……その綺麗な光は、まるでお守りのようにかげろうを(いろいろな怖いものから)守っていてくれるような気がした。
かげろうはぼんやりと青白く光る小さなねじをポケットの中にしまった。(勇気をもらえた気がしたんだ)
それから目をつぶり、『もう一度、安心できるふかふかの毛布の中でやすらかな眠りにつこうかと思ったのだけど』、……、やっぱり、また怖い夢を見てしまうのではないかと思って、ちょっとだけ怖かったので、かげろうは毛布の中から抜け出して、とことこと歩いて隠れ家の廃棄された電車の半分しかないドアから外に出ると、そこから真っ暗な空の広がっている風景を眺めた。
しばらくの間、そうやって、かげろうは、そのいつもの風景を見て、いつもの起きたときにすることをして、ようやく気持ちが(いつものように)落ち着いてきた。
それからかげろうはこんな風に、真っ暗な空を眺めるために星屑から拾ってきた外に置きっぱなしにしてある壊れかけの足の長い丸い椅子に座って、(修理はまだ終わっていなかった)そこからじっと、もう少しの間、真っ暗な空を眺めていた。
……、もう一度、あのときに見た奇跡の星を見たいと思ったのだけど、やっぱり今日も、どこにも、かげろうの見上げる真っ暗な空に星は輝いていなかった。
かげろうにとって、ひまわりお母さんにいらない子として星屑に捨てられてから、幽霊ホロウのお城で暮らしていたときのように、こうして静かな(音のない)闇の中で、外の真っ暗な(すごく高くて、広い)空の風景を眺めている時間は、今の星屑でのひとりぼっちの暮らしの中で、……、一番大好きな、とっても大切な時間だった。
浮雲かげろうは壊れかけの足の長い丸い椅子の上で、幽霊ホロウの星のある大きな瞳で(顔を頑張って上に向けながら)真っ暗な空を見ながら、その地面にまで足の届いていない、二つの(子供の)足をぶらぶらと空中で動かしていた。それは友達の幽霊ホロウの女の子、水玉ひかりちゃんの癖だった。そのひかりちゃんの癖がいつの間にか、いつも一緒にいた浮雲かげろうにも、うつってしまっていたみたいだった。(そのことにかげろう自身も、きがついてはいなかった)
……願いは、いつか、あの星にまで、とどくのかな? (とどかない高い空に、がんばって、手を伸ばしながら)




