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92 ずっと安全なところで生きていけるほど、人生は甘くはないよ。

 ずっと安全なところで生きていけるほど、人生は甘くはないよ。


 ……これが死にかけている幽霊ホロウの姿なんだ。

 まめまきはかげろうを観察しながら、そんなことを頭の中で思った。

 まめまきはかげろうがびっくりして大きな声を出さないように、その口を手で押さえていた。(かげろうはなにかを言いたそうにして、もごもごとその手の中で口を動かしていた)

「……私はあなたの敵じゃない。いいね」とまめまきはかげろうの耳元で(優しい声で)囁いた。

 かげろうは小さくこくんとうなずいた。

 そこで初めて、まめまきはかげろうの口から、その手をゆっくりと離した。

 それからくるりとかげろうの小さな体の向きを変えて捕まえた幽霊ホロウの男の子、浮雲かげろうの顔を見る。

 ……まめまきが初めて出会う女の子ではない幽霊ホロウの男の子。

 浮雲かげろうは(幽霊ホロウの特徴である)星のある大きな瞳と短いさらさらの黒髪をしていて、鼻筋の通っている、とても整った顔をしている、なんだか可愛らしい顔をした男の子だった。(お金持ちの家の甘やかされて育ったおぼっちゃまみたいな男の子。ぱっとみると女の子みたいだった)

 まめまきはじっとかげろうを見る。

 するとかげろうはその星のある大きな瞳に、いっぱいの涙をためて涙目になって、(今にも大粒の涙がこぼれて落ちそうだった)ぷるぷるとその小さな体を震わせながら、まめまきのことをじっと見返していた。(半分、まめまきによって、無理やりに)

 まめまきは少しだけ様子を見る。(死にかけている幽霊ホロウとは、初めて出会ったからだった。見た目は普通だけど、幽霊ホロウとはなにかが違っているのかもしれない)

 そうしていると、かげろうは「……お願いします。いい子にしているので、殺さないでください」と震えている小さな(かわいらしい)声で、まめまきに言った。

 そんな様子の、どこにでもいる普通の地上で生まれて、地上で生活をしているたくさんの小さな子供たちとなにも変わらない幽霊ホロウの男の子、浮雲かげろうを見て、まめまきはあらためて、……、こんな砂漠の地下で、あなたはなんて残酷な実験をしているの。……ひまわり。と思って、その美しい顔を(ほんの少しだけ)小さくゆがませた。

 本当はすぐにでもかげろうに、私はあなたを殺しにきたんじゃない。誘拐するためにきたわけでもない。私はあなたを助けにきたんだよ、と言ってあげたいけどまめまきは我慢する。

 かげろうは、死にかけている。

 壊れかけている幽霊ホロウなのだ。

 もしかすると、暴走したり、普通の思考ができなくなたったり、あるいは最悪の場合、この場で(あっという間に)ロストチャイルドに変化してしまうかもしれない。(幽霊ホロウの情報が少なすぎてわからないけど、まだ様子を見るしかないと思った)

 やがて、かげろうのその星のある大きな瞳から(ついに限界がきて)涙がこぼれ落ちそうになった。

 それからすぐに、かげろうはその可愛らしい口を大きく開けて、(ため込んだ感情を大爆発させて)今にも大声を出してわんわんと泣き出そうとするような(子供特有の)表情になった。

 そのかげろうの口をまめまきはまた自分の手でしっかりと蓋をした。

「だめ。泣くのはだめだよ。大きな声を出すのもだめ。ちゃんと我慢しなさい。あなたは男の子でしょ?」とまめまきはにっこりと笑って、なるべく優しい声で(年の離れたお姉ちゃんのように)かげろうに言った。

 すると、かげろうはこくこくと顔を動かしながら、まめまきにそう「イエス」の合図を何回も(必死になって)おくった。(そんなかげろうはまめまきに言われた通りに、本当に頑張って泣くことを我慢しているようだった。そんなかげろうを見て、本当に素直で、食べちゃいたいくらいに、とてもかわいい男の子だな、とまめまきは思った)

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