91 愛は居場所である。 ……僕はここにいてもいいの?
愛は居場所である。
……僕はここにいてもいいの?
星屑にやってきたまめまきはがらくたの山の中を歩いている小さな影を見つけた。
まめまきはその小さな影に気がついて、気配を完全に決して、がらくたの影に身を潜めて、やがて完全に周囲にある夜の闇の中に同化した。(その白い眼帯をしていない片方の猫のような眼だけが、暗闇の中で一つ、ぼんやりと淡い月ような光で輝いていた)
まめまきは小さな影の動きに集中する。
その小さな影は(少し先にいったところで)歩くことをやめる。そして、きょろきょろと周囲を見渡したあとで、再び歩き始める。
まめまきは音もなく動いて、その小さな影のあとを追いかける。
すると、少しして小さな影は(がらくたの山のふもとのところに)廃棄されている一両の電車の車両のあるところまで移動する。どうやら、そこがこの小さな影の見つけた星屑の隠れ家のようだった。(なかなかいい隠れ家じゃないか、とにやにやしながらまめまきは思った)
小さな影がきょろきょろと周囲のようすを見てから、かたっぽしかない電車のドアを通って、隠れ家の中に入ろうとした。
その瞬間、まめまきは風のように動いて、(あっという間に移動して、一瞬で)小さな影の背後をとった。
「動かなで」
浮雲かげろうの耳元で、静かな声で胡桃まめまきはそう囁いた。
かげろうは身動きひとつできない。
スパイであるまめまきは特殊な訓練を受けたものだけが習得できる、武術の心得があり、そのまめまきによって背中から体の動きを押さえられているかげろうは、(どういう原理なのか、かげろうにはわからないけど)本当に指一本も、動かすことができなかった。
まめまきは完璧なタイミングで、音もなく、かげろうを捕まえることに成功した。それは大きな体をした大人でも(一対多の複数人を相手にした戦闘でも)ねじ伏せることができる、まめまきの武術を持ってすれば、(幽霊ホロウとはいえ、小さな子供一人の動きを封じることは)とても簡単なことだった。
星屑の中で、(まるでかくれんぼのように)誰にも見つからないように隠れて暮らしているかげろうを見つけることも簡単だった。ひかりちゃんからはうまく隠れることができていたようだけど、まめまきからすると、かげろうの動きは子供そのものであり、大人が本気で見つけようとすれば、簡単に見つけられる動きだった。(……、だから、きっとひまわりはかげろうがこんな風に星屑で隠れて生活をしていることも、もうとっくの昔に見つけて知っているのだろうと思った)
ただ、まめまきにも少し誤算があった。
……かげろうの体はまめまきの予想していた以上に冷たかった。
(これはまめまきが実際に触ったことのある幽霊ホロウであるつばさちゃんや、ひかりちゃんの体よりも、冷凍庫でかちかちに凍らせた氷のように、……、ずっと、ずっと、冷たくなっていた)
なので、かげろうの体に密着しているまめまきの手や体の部分は、ただじっとしているだけで赤く腫れ上がり、その冷え切った氷のような(まるで本当に冬の雪の降る日に、庭で作った雪だるまを友達のように抱きしめているみたいだった)冷たさによる凍傷を起こし始めていた。
……このかげろうの冷たさは、きっと『この子がもうすぐロストチャイルドになってしまう、その前兆なのだ』と、まめまきは思い、(その予想はおそらく、当たっているだろう)その小さなふくらみの胸の奥がとても痛くなった。(この可愛らしい幽霊ホロウの男の子は、……、ここで今、私の腕の中で死にかけているのだ)




