89 さようなら、嫌な気持ち。ばいばい。
さようなら、嫌な気持ち。ばいばい。
ひかりちゃんは自分の身に起こったことを(ゆっくりと)かげろうに話し始めた。かげろうとひかりちゃんは、その小さな手をぎゅっとお互いにつないでいる。怖い話やつらかった話や悲しい話をするときは、いつもこんな風にして、かげろうとひかりちゃんはお互いの手をつないで話をしていた。
かげろうとひかりちゃんは、この世界に、たった二人っきりの幽霊ホロウの友達だった。
……世界に二人だけの、……たった二人だけの。(家族だった)
かげろうと別れてから、ひかりちゃんは一人になってからひまわりお母さんに(急に)呼ばれて、ひまわりお母さんと一緒に幽霊ホロウのお城の図書室にいった。
(ひまわりお母さんはそのとき薄い絹の布で、その顔を隠していたらしい。ひまわりお母さんは毎日違ったお面でその綺麗な素顔を隠していた)
少し前に行った幽霊ホロウの試験の結果が悪かったかげろうはひまわりお母さんのお仕置きを受けることになって、(そのときのお仕置きは『電気椅子』だった。びりびりして、頭の上から白い煙も出て、数日の間、うまく動けなくなるくらいに、体中がすごく痛かった)幽霊ホロウの試験の結果が良かったひかりちゃんは、お仕置きではなくて、ひまわりお母さんから図書室にある映像保管室(通称、記憶の間)で『ある長い映像』を見て、そのときに感じたことや思ったことを、ひまわりお母さんに伝えるようにとそのときに言われたらしい。
そのひかりちゃんの見たある長い映像とは、『今までの人類の戦争の記録(切り取ったのもではあるけど、ほぼすべての)』だった。
ひかりちゃんはたくさんのテレビに囲まれた薄暗い映像保管室の中で、その今までの人類の戦争の記録を、……ずっと一人で見ていたらしい。(……泣きながら、……震えながら)
そこで見た映像は、ひかりちゃんの『生まれたての小さな心』を簡単に、痛めつけさせて、傷つけさせて、(めちゃくちゃに描きまくったクレヨンで描いた無秩序な子供の絵のように)感情を無茶苦茶にするのに、有り余るくらい刺激的で残酷な映像の洪水だったらしい……。
ひかりちゃんはその話をするときに、いつもよりも力強く、……ぎゅっとかげろうの手をにぎっていた。……まるで自分がこのまま世界のどこかに消えてしまわないように。必死になって。(かげろうはしっかりと、その震えている小さなひかりちゃんの手を握り返した)
かげろうはそのひかりちゃんの恐ろしい話を聞いていて、……思わずぶるっと一度、(我慢していたのだけど、怖くなって)その小さな体の全身を震わせた。




