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「砂漠に埋まっている骨には記憶が宿っている。それは偽物ではない。本物の記憶だ」
ビールを美味しそうにがぶがぶと飲みながら木登すごろくは言った。
「興味深い話です」
静かな夜の時間に、(幽霊でもでてきそうな夜だった)砂漠の木登砂漠発掘隊キャンプの仮設テントの中で、ホットコーヒーを優雅に飲みながらスター王子様が言う。
「僕の暮らしているこの砂漠にある黄色い国でも、こんな言い伝えがあります。砂漠に住む獣たちの歌う歌には命の希望が託されている。その歌の旋律と本当の意味を忘れてはいけない、……と」
「砂漠に住む獣たちの歌に意味などないよ。彼らはただ歌を歌っているだけじゃ。好きな歌を好きなように歌っている。自らの身を守るために。あるいは、愛を伝えるためにの」
ふぉふぉ、と笑いながらもじゃもじゃの白いひげをさわってすごろくは言う。
「獣の歌に勝手に意味を見出しているのは、歌を聞いている人間のほうということですか?」興味深いと言ったような顔をしてスター王子様が言った。
「その言い伝えが間違っとると言っとるわけではない。それなりに深い意味があるのだろう。でも、それと砂漠に住んでいる獣たちの歌には、本質的にはなんの因果関係もないという話じゃよ。獣たちは平和を願っている。君たちの国のように、隣国と戦争をしたりはせんよ。獣たちはいつも捕食者たちから逃げ回っている。戦うことはせん。獣たちは弱く、戦っても勝てる見込みはないし、逃げるにしても、捕食者は頭が良く狡猾で、凶暴だ。逃げきれん。だから獣たちは歌を歌うことにした。歌を歌って、仲間たちとつながり、捕食者たちと戦うことを避け、共存する道を選んだんじゃよ。長い年月をかけて、たくさんの同胞たちの犠牲を出して、ようやく捕食者と共存できる環境を手に入れた。とても長い時間はかかったが、君たちよりも、いや、私たち人間よりもはるかに賢い選択じゃよ。争いはなにも生み出さないからの。ただ死体が増えるだけじゃよ。たくさんの数えきれないくらいの死体がの。……悲しいことじゃ」
ビールを飲み、すごろくは言う。(死者を弔うように、すごろくは大きなジョッキを高く掲げた)
わたあめとみずあめは洗い物をしながら、こまとルナお姫様は食器を拭きながら、そんな二人の会話に静かに耳を傾けている。(二人の会話の邪魔をしないようにみんなが言葉を話さなかった)
「返す言葉がありませんね。でも、すごろく博士。僕たちは好きで戦争ばかりをしているわけではありません。戦争を望んでいない人たちだって、僕たちの黄色い国には、あるいは隣国(敵国)である緑の国にもたくさんいるんです。僕とルナはその人たちの思いを世界中の人たちに届けるために、こうして危険な旅をしているんです」
まっすぐな目をして、すごろくを見ながらスターは言う。(スター王子様の青色の瞳は本当に、そこに星が浮かんでいるかのように、輝いているように見えた)
「スター王子。君はとても綺麗な目をしている。いや、君だけじゃない、ルナ王女もとても澄んだ色をした目をしている。まるでまだ本当の隠されている、世界や人間たちの見てはいけない姿や語ってはいけない言葉や、汚くよごれた血にまみれた歴史や真実を知らない無垢な子供たちのように。ちょうど、ほら。あそこにいる私の可愛い孫であるこまのような、そんなとても純粋な目をしておる」
そう言ってふぉふぉと笑ってから、すごろくはこまを見る。
同じようにスター王子様も、こまに目を向けた。
こまとスター王子様の目が空中で重なる。(こまはどきっとした)
スター王子様はいつものにこやかな(ひょうきんな)表情ではなくとてもりりしい顔をしていた。(お父さんににているとこまは思った)
お片づけをしながら、二人の様子を盗み見ていたこまは、すごろくとスター王子様に同時に見つめられて、とても恥ずかしくなってしまって、となりにいたルナお姫様の後ろに、思わずその小さな体をとっさに隠してしまった。(こうしてすぐにどこかに隠れてしまうのは、こまの悪い癖だった)
「あらまあ。こまちゃんたら」
と、嬉しそうな顔で(まるで母親のように)笑いながら、スター王子様を見ながらルナお姫様は言った。




