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ルナお姫はこまの仕事机の隣にある、もう一つの丸い机の上を見る。
淡いオイルランプの光によって照らされてるその丸い机の上には様々なものが置いてある。
象と駱駝の木彫りの置物。
青色の砂の入った飾り細工のある砂時計。
ロゼッタストーンとピラミッドの模型。
複製されたおもちゃのファラオの仮面。
……それから、木彫りの写真たての中に飾られている、お父さんとお母さんとこまのうつっている家族三人の写真。(古い写真だけど、とても大切にされていることがわかった。どうやらこまはお母さんに似ているようだ)
それは、こまの大切にしている宝物たちだった。
『こまは鉱物資源だけじゃなくて、ほかにもとても珍しくて貴重なものを、たとえば恐竜の化石に、巨人の骨。それから砂漠に住む音楽を奏でる獣たちの生活の痕跡。あるいは、この砂漠に過去にあったとされる失われた幻の王国の遺跡跡などを今までに発掘していますよ。ルナお姫様』
さいころの言葉の中で、『失われた幻の王国』と言う声を聞いて、ルナお姫様の体がぴくっと震えた。(ルナお姫様と体が密着しているこまにはそれが背中越しにわかった)
「すごいね」(真顔になって)ルナお姫様は言う。
「歌を歌う砂漠の獣たち、……か。いいね。夜の砂漠に響き渡る獣たちの歌声。獣たちは砂漠で歌を歌う。なぜ、もっと住みやすい場所に彼らは移住しないのか? なぜ獣たちは砂漠で歌を歌い続けるのか? 彼らはどこからきて、やがてどこにいくのか? あるいは、どこにも行かないのか? なんだか、いろんな物語が生まれそうな言葉たちだよね。砂漠には人の心も、あるいは魂もたくさん、たくさん埋っているのかもしれない」
(笑顔に戻って)ルナお姫様は言う。
『さすが砂漠の国のお姫様ですね。ルナお姫様はよく、砂漠の暮らしや古い砂漠の物語のことをわかっている。素晴らしいことです』
ルナお姫様はさいころ(作業机の上の古い石板のような白いタブレット)を見る。
「さいころ。あなたは砂漠に興味があるの?」
『砂漠に興味、……ですか? うーん。難しいですね。ないことはないけど、……僕がもっとも興味があるのは『歌』ですよ。ルナお姫様。砂漠の歌に興味があります』
「歌?」
『そう。歌です。歌はいいですよね。世界中にはたくさんの歌があります。その地方や国のそれぞれのたくさんの歌がある。歌は人の心を伝えます。歌は世界を平和にします』
と(最後にこまのお母さんの大好きな歌のメロディーの)口笛を吹いて、さいころは言う。
そのさいころの言葉を聞いて、ルナお姫様はずっと真剣な表情になった。
「……歌は、世界を救ったりしないよ」
そんなことをルナお姫様は悲しい声で、こまの耳元で、つまらなさそうな顔をしてつぶやいた。(ぎゅっとルナお姫様は小ぶりな形のいい胸を押し当てるようにしてこまを抱きしめた)
『悲しいことを言いますね。ルナお姫様』
さいころが言う。
「だって、それが『世界の現実だから』……」
その美しい青色の瞳を閉じて、ルナお姫様が(自分に言い聞かせるように)言った。(二人の会話はそこで終わった)
こまはそんな二人の会話に仕事をしながら、そっと耳を傾けてこっそりと聞いていた。




