68 愛とは、人類を愛することである。
王子様とお姫様はそれぞれ、自分たちの名前をスター・G・メランコリーとルナ・Y・メランコリーだと名乗った。(実際には王子様が自分とお姫様の紹介をみんなにした)
金色の髪をした青い目の社交界にでるときのような高価な白いスーツと白いドレスに身を包んだ王子様とお姫様。(こまは本物の王族である王子様とお姫様をこのとき、生まれて初めて見た。本当にどこか高貴の生まれの人たちがまとっているという雰囲気、あるいは輝くようなオーラのようなもをこまは感じた)
そんなことを思いながらこまがじっと初めて見る王族の二人のことをまじまじと見ていると、ルナお姫様がそっと自分を見ているこまに向かってその視線を向けてきた。
こまと視線が合うと、ルナお姫様はにっこりとこまに向かって微笑んだ。
そのまるで天使のようなかわいらしい微笑みを見て、(本当に一瞬、背中に天使の翼が生えているようにみえた)こまはその顔をまた、真っ赤にさせた。 そんなこまの片っぽの鼻の穴には、みずあめにいれられた鼻血止めの丸められた赤い血のにじんだ大きなティッシュが詰め込まれているままだった。
愛とは、人類を愛することである。
気分には浮き沈みがある。浮いているときもあれば、沈んでいるときもある。だから気にしなくていい。沈んでいるときは、もう少ししたら浮かび上がることができると思えばいいんだ。それまでは、じっとしていればいい。おいしいご飯でもたべながらね。
「こまちゃん。なにしてるの?」こまが砂漠の木登発掘隊キャンプの本拠地である巨大な二階建ての(まるでサーカスのテントみたいな)仮設テントの中で仕事をしていると、そんなことを言って、後ろからルナ・Y・メランコリーお姫様に声をかけられた。
ルナお姫様は社交界の華やかなドレスを脱いで、今は水色のりぼんのついた白色の水着と水色の模様のある白いミニのパンツという(細い足とおへそのでている)肌の露出の多い格好をしている。肩までの綺麗な耳の出ている、金色のさらさらの髪は美しく輝いている。(金色の長くて美しい形をしたまつげがとても綺麗だった)太めの眉と、ぷるんとしたピンク色のくちびるが美しかった。(小柄で肌が真っ白で、体の形がしなやかで、薄着になったルナお姫様は天使でもあり、どこか美しい獅子のような雰囲気があった)
「えっと、仕事をしているんです」
「え? 仕事? 子供のこまちゃんが?」
そう言ってルナお姫様は椅子に座っているこまの背中からぎゅっと、こまの体に抱き着くようにしてこまに言った。(美しい天使のような、小ぶりの形のいい胸のルナお姫様に抱き着かれて、こまはどきどきした)
ルナお姫様の年齢は十五歳でわたあめとみずあめと同じ年齢だった。ルナお姫様も子供だけど、そのルナお姫様から見ても、九歳のこまは子供だった。ちなみにお兄さんのスター王子様の年齢は十六歳だった。
「こまちゃんは立派な木登砂漠発掘隊の一員なんですよ。なにせ、現在の時点で、すでに数々の世紀の発掘を成し遂げた若き天才発掘士なんですから、こまちゃんは。今では発掘にかけては、すごろく博士をぬいて、この木登砂漠発掘隊のエースでもあるんです。ルナお姫様」
わたあめと一緒にみんなの料理の準備をしているみずあめが、大型の銀色の鍋の料理をおたまで味見をしながら、ルナお姫様に近寄って、少し小さい声で自信満々の顔をして、(まるで自分の家族の自慢でもするようにして、すごろくにだけは聞こえないようにひそひそ話をするようにしながら)ルナお姫様に言った。
「え!? そうなの? こまちゃん」
興味津々と言ったような顔でこまを見ながらルナお姫様が言う。
こまは恥ずかしそうに顔を赤くしながら黙っている。するとこまの仕事机の上においてあったタブレットの中からさいころが『その通りです。お姫様』とルナお姫様に言った。
「へー。そうなんだ。こまちゃん。小さいのにすごいね。頑張っていて、えらいえらい」
よしよし、とこまのさらさらした黒髪を撫でながらお母さんみたいな口調でルナお姫様は(とっても、にこにこしながら)言った。
こんな風にして、なぜか木登こまは、異国の『砂漠の黄色い国』のお姫様である、ルナ・Y・メランコリーに会ったときから、すごく懐かれてしまったのだった。
「これは今はなにをしているの? こまちゃん」机の上に置いてある砂漠の地図と書類を見ながらルナお姫様は言う。
こまの仕事机の上には大きな地図があり、様々な大きさと形をした定規とインクと羽根ペンがあり、たくさんの資料と山積みにされた大量の本たちがところせましと置いてあった。
「これは砂漠のどこを掘ったら砂に埋まってしまったものを発見できるのか、過去の情報と、自分の目と足で調べたテータを基にして、その確率の計算をしています」手を動かしながらこまは言う。
「それで、発掘品を掘り当てることができるの?」
「もちろん、絶対というわけではありません。でも、それなりに根拠があるところは、掘ればなにか出てくることが一応、多いです。ほとんどなにも出てこないことばっかりですけど」
「ふんふん。なるほど」とこまのほっぺに自分のほっぺたを(ぷにぷにと)押し付けながらルナお姫様は言う。
こまはルナお姫様に自分の仕事をほめられてすごく嬉しかったのだけど、やっぱりちょっと恥ずかしかった。こまはほめられるよりも、子供ではなくて一人の発掘隊の仲間として、きちんとみんなに認めてほしかった。
ルナお姫様からはすごくいい匂いがした。(澄み切った高原に咲いたばかりの上品で瑞々しい美しい白い花の香りのような匂いがした。すこしだけお母さんの匂いに似ていると思った)白い肌はすべすべで、綺麗な耳の出ている金色の肩までの髪もさらさらだった。
こまはそんな綺麗な(本物の天使のような)ルナお姫様に抱きしめられて、すごくどきどきしたのだけど、仕事に集中すると、心の中が澄み切っていつものように心の中に深く沈み込むようにして仕事をした。そんなこまのことを見て、ルナお姫様はなんだか本当に感心しているようだった。




