64 砂漠で見る(観測する)満天の星空と宇宙飛行士
砂漠で見る(観測する)満天の星空と宇宙飛行士
『星は美しいね。本当に綺麗だ。……地上にあるどんな光よりも夜空に輝く星が一番美しい』さいころは言う。
確かにさいころの言う通り、砂漠で観る星空はとても綺麗だとこまは思った。
透明な、無限に広がっているような、奥行きのある、まるで凹レンズのような、そんな巨大な(巨大すぎて丸く見える)砂漠で見上げる幾千幾億の星々が輝く星空はそれはもう、まるで宇宙そのものだとこまは思った。(その認識は間違いではない。確かに今、こまは宇宙のすべてををその大きな目に写し取っていた。宇宙の始まりの光を、その大きな目で、宇宙の始まる光景を目撃していたのだ。頭の中で空想していたのだ)
「こまちゃん。あんまりずっと外にいると、風邪ひいちゃうよ。いくら今の季節が夏とはいささ、ここは砂漠の真ん中なんだからさ」ぶるぶると震えながら、わたあめが言う。
「はい。わかりました」こまは言う。
こまはその小さな体に厚手のクリーム色のコートを着ていた。(羊の毛の入ったふかふかの綿羊のコートだ)砂漠は昼と夜でその温度差が激しい。昼間は四十度を超え、夜には氷点下になる。
砂漠とは、そんな人間に、(あるいは命に)厳しい場所だった。(それは、まるで宇宙のようだとこまは思った。自分は今、生まれ育った青色の美しい星ではなく、どこか遠い宇宙にある別の惑星の上にいるみたいだと、そんなことをこまは思って、なんだか、すごく心がわくわくした)
こまは砂漠の上に足跡を残しながらとことこと歩いて、わたあめの元へと移動をする。
「おかえりなさい。こまちゃん」
黒ぶちの(大きめの)メガネの奥で、優しい目をして、にっこりと笑ったらくだ色をした厚手のコートを着ている三つ星わたあめがこまを抱きしめながら言った。
「はい。ただいま。わたあめさん」にっこりと笑ってこまは言う。
こまのほっぺたはもう真っ赤になっている。(やっぱり、かわいいとわたあめは思った)
どうやら想像していた以上に、あまりにも星が美しすぎて、ずっと楽しみにしていた砂漠の天体観測に夢中になりすぎてしまったみたいだった。(冷えている体を感じて、こまは反省した)
「僕、ずっと小さころは、将来は、今のみたいに発掘士じゃなくて本当は宇宙飛行士になりたいってずっと思っていたんです」
わたあめと手をつないで、とことこと木登砂漠発掘隊キャンプの仮設テントに向かって砂漠の上を歩いているときにこまは言った。
「宇宙飛行士? へー、そうなんだ。こまちゃんはおじいちゃんのすごろく博士に憧れて、最初っからずっと砂漠の発掘士になりたいって思っていたんだと思ってた」と驚いた顔をしてひまわりが言う。
「今はもちろんそうです。でも、もっと小さいころは違いました、……お父さんが、星が大好きだったんです。ずっとお父さんは宇宙飛行士になりたかったって言ってました。それがお父さんの夢だったんです」と自分よりずっと高いところにあるわたあめの顔を見ながら、子供っぽい顔でにっこりと笑ってこまは言った。
「……そうだったんだ」わたあめは言う。
「わたあめさん」
「うん。なに? こまちゃん」こまを見て、わたあめは言う。
「このことは、すごろくおじいちゃんには内緒にしておいてくださいね」と真剣な目をしてわたあめを見上げて、こまは言う。
「うん。もちろん。わかっているよ。こまちゃん。約束する」
とにっこりと笑って、こまのほっぺたに約束のキスを「はい。約束」と言いながらちゅっとして、(目を丸くしたこまの顔は火照って真っ赤になった)わたあめは言った。
二人のいる別の惑星みたいな砂漠の世界の上には、今も広大な宇宙が広がっている。
とても静かな夜。
……それは、とても美しい夜だった。(思わず、宇宙にいってみたいと思うような夜だった)




