50
「まめまき。まだゲームははじまったばかりですよ」と楽しそうなひまわりの声が(どこか遠いところから)聞こえる。
……まずい。こいつをなんとかしないといけない。こいつに頭の中にはいわれたら終わりだ。体にふれられるだけで、こんなにどす黒い感情に支配されてしまうんだ。もし、頭の中にはいられたら、……私は、もうきっと、今の私ではなくなってしまう。(ただの猫に戻ってしまう)
まめまきは真っ暗な闇の中にいる。光を求めてがむしゃらに走るがどこにも光はない。それは当然のことだった。まめまきは光をもっていない。……夢を、……希望を、……愛を。もっていないのだ。(からっぽなのだ。花のない、水のない花瓶のように)
くそ。ちくしょう。……こんちくしょう。
まめまきは真っ暗な闇の中で叫ぶ。
そのまま地下のときと同じようにまめまきは電源コードを無理やり引っこ抜かれたおもちゃように、動くことをやめて、気を失いそうになった。
でも、そうはならなかった。
なにかとてもあったかいものがまめまきの背中に触れている。
これはいったいなんだろう?
そう思ってまめまきが後ろをみると、そこには幽霊ホロウの街の地下で見たあの『不思議な白く輝く女の子』がいた。
白い女の子はにっこりと笑っている。優しい顔で。そっとまめまきの震えている、丸まっている背中をその小さな手でなでてくれていた。
……その不思議な白く輝く女の子は、幽霊ホロウの女の子、小枝つばさだった。
間違いない。
その顔や姿は小枝つばさちゃん、そのものだった。
綺麗な三つ編みの髪の毛も、大きな瞳も、顔の形も、体の大きさも、服装も、そのすべてが同じだった。ただ白く、強く、真っ暗な闇の中で女の子だけがきらきらと美しく輝いているだけで……。
『まめまきさん。こっちにきてください』と白い女の子はまめまきにその小さな手を差し出しながら、なんだかとっても懐かしい声で言った。
まめまきはその白い女の子の言葉の通りに「うん。わかった」と言って、自分にさしだされている、白い女の子の手をしっかりと握りしめた。(その手はまるで陽だまりのように温かかった。ずっと、もとめていたぬくもりがあった)




