20 白黒の都市の風景 ……愛は私のことを、ちゃんと救ってくれますか?
白黒の都市の風景
……愛は私のことを、ちゃんと救ってくれますか?
窓の外ではとても激しい雨が降っている。
……本当に、とても強い雨だ。
そんな雨降りの空を、自慢の白く長い足を大胆に露出している黒いミニスカートのパーティードレスに身を包んだ胡桃まめまきは一人で、壁一面に広がる大きなガラス窓のそばに立って、ずっと、……ただ、ぼんやりと眺めていた。
スパイの特殊な服装ではなくて、そんな普通の格好をしていると、まめまきは年相応のどこかの富豪か貴族のお嬢様のような十五歳のとても美しい華奢な(世間知らずの)少女にみえた。
まめまきは、雨があまり好きではなかった。
……悲しいことをたくさん、思い出すからだ。(少し泣きそうだった)
まめまきのいる豪華な装飾や家具の並べられた大きな部屋には、まめまき一人しかいない。まめまきはここで、次の仕事の契約をするために、これから会う約束をしている人を待っていた。
とても大きな権力を持っている人物だ。
まめまきのいる部屋の通路を挟んで隣のホールでは晩餐会が開かれている。この巨大な白黒の街のあらゆる権力や人脈、お金を握っている、いわゆる上流階級と呼ばれる人たちが、そこでは今、また新しい悪巧みをするために、パーティーを開催しているのだ。選挙も近いので、票集めのようなそんな理由もあるのかもしれない。
まめまきは胡桃色のふわふわの自慢の長く美しい髪の毛を、いつものようにポニーテールの髪型にまとめないで、今日はまっすぐにおろしていた。耳元には星と月のダイヤモンドのイヤリングをしている。仕事中ではないので、相棒の人工知能みちびきは、今はここにはいない。これは『本当に普通』のイヤリングだった。
まめまきの見ている街の風景はあらゆるものが白黒だった。
この街に『色はない』。
色彩は存在していないのだ。(少なくともまめまきの猫のような瞳にはそう見えたし、まめまきの心はそう思った)
まめまきは黒いミニスカートのパーティードレスのほかにも、手には白い手袋、足元には黒のストッキングを履いている。足元はガラスのハイヒール。そして、その右手には、いつものように仕事用の特殊な秘密道具を持っているのではなくて、今日は黒い小さな最高級ブランド品のバックを持っていた。
「……雨、やまないかな?」
そんな風にため息をついて、まめまきが言ったときだった。
誰かがまめまきのいる大きな部屋に近づいてくる気配を感じた。(ドア越しでも、あるいは壁越しでも、まめまきにはその気配が確かにわかった)




