111 綺麗な白い花の咲く場所 眠れる巨人 ねむれるきょじん
綺麗な白い花の咲く場所
……ねえ、覚えていますか?
私たち二人が手をつないで、一緒に歩いていた日々のことを……。
その日、一つの大きなミサイルが青色の砂漠の空の中を飛んだ。その大きなミサイルがもし、ある国の大きな街の中心に落っこちて爆発したとしたら、その瞬間に何十万人という人たちがこの世界から消えてしまっただろう。そして、悲劇はそこで終わらずに、そのまま大きなミサイルを発射した国と、大きなミサイルが落っこちた国とで戦争になったはずだ。その戦争はやがて周辺の国々を巻き込んでいき、そのまま世界のぜんぶの国を飲み込むような『とても大きな戦争』になっただろう。でも、大きなミサイルはある国の大きな街の中心には落っこちなかった。その大きなミサイルは誰も人が住んでいない砂漠の真ん中に落っこちた。そして、大きな爆発もしなかった。その大きなミサイルははりぼてのミサイルで、そのミサイルの中に爆弾はつまれていなかったからだ。しかし、この事件はとても大きなニュースとなって世界中を駆け巡った。そして世界は大きなミサイルを発射した国と大きなミサイルが落っこちるはずだった国を巻き込んで世界会議を行った。それは二つの国の緊張を和らげて、戦争をおこなさいようにするための会議だった。
その世界会議は世界会議の議会がある北の国でおこなわれた。
その会議の中心には、とても若い王子様とその妹であるお姫様がいた。二人は世界会議で大きなミサイルを発射した国である緑の国と大きなミサイルが落っこちるはずだった国である黄色の国の現在の問題を世界中の人たちの前でたくさん話した。いろんな問題があった。それも何百年という時間の中で難しく絡み合った問題がたくさんあった。その問題を今すぐにぜんぶ解決することは不可能なことだった。(神様にだって、きっと不可能だろう)でも、王子様とお姫様は緑の国と黄色の国の問題を二つの国の不利益になるような話や、国家機密にかかわるような情報も惜しげもなく話して、世界中の人たちに協力を呼び掛けて、世界中の国々の代表と話し合いをした。
その結果、戦争は回避された。緑の国と黄色の国の代表はみんなの前で握手をして、戦争をしないことを議会で誓った。(もちろん、正式な国と国との契約を結んだ)本来起こるはずだった戦争はおこらなかった。それは『神様の奇跡』だと誰もが言った。(仲の悪い隣り合った二つの国にとって、もうすぐ大きな戦争が起こることは、誰しもが仕方のないことだと考えていた)
戦争はおこらなかった。でも、その火種はまだたくさん緑の国と黄色の国の中には残ったままになっている。それらをひとつひとつ消していくのが、これからの王子様とお姫様の、そして緑の国と黄色の国の国民の、あるいは世界中の国々の人たちの、やらなければいけないことだった。(そうしなければ、またすぐにでも、戦争はおこってしまうのだろう)
こまは砂漠の新聞で、その記事を読んだ。そこには笑顔のスター王子様とルナお姫様の写真が(たくさんの国々の王族や代表の人たちと一緒に並んでいる)掲載されていた。こまはなんだかとっても嬉しくなった。その日の木登砂漠発掘隊の晩ご飯は、すごいごちそうになった。みんなが嬉しそうだった。でも、その中でみずあめお姉ちゃんだけが、少しだけ元気がなかった。そのことが、こまはとても気になった。
大きなはりぼてのミサイルが落っこちた砂漠の真ん中ではもう一つの奇跡がおこっていた。
大きなはりぼてのミサイルの周りに、綺麗な花が咲いていたのだ。砂漠の真ん中に、大きなはりぼてのミサイルを中心にして、緑の草木が生えていて、そこには綺麗な白い花がたくさん咲いていた。その奇跡は世界中の人たちに希望を与えた。
その砂漠に咲く綺麗な白い花を一番初めに見つけたのは、どこの国の諜報機関も砂漠の磁気嵐によって大きなはりぼてのミサイルが落っこちた正確な位置が見つけられないなかで、その位置を探り当てることに成功した、ちょうどそのときに、砂漠に発掘調査にきていた木登砂漠発掘隊の発掘士である九歳の男の子、木登こまだった。
眠れる巨人 ねむれるきょじん
星の記憶。私の見る夢。あなたのこと。
巨人の骨が見つかってこの星にかつて巨人が生きていたことが明らかになったのは、本当にごく最近のことだった。
巨人の見る夢
湖の麓にある真っ白な青色の屋根のお城と真っ白な街。そして、その真っ白なお城に寄り添うようにして眠っている一人の巨大な真っ白な色をした女の子がいる。
巨大な真っ白な色をした女の子はその場所でずっと眠り続けていた。何年も、何年も、ずっとずっと、ただひたすらに、眠り続けていたのだ。
……自分を迎えにきてくれる人が、「起きて。もう朝だよ」と声をかけて、その長い眠りから目覚めさせてくれるときがくるまでの間、……ずっと、……ずっと。長い眠りの中で幸せな夢を見ていた。
浅い海の世界
冷たくて気持ちいいね。
「ねえ、ベル。これからどこに行こうか?」
にっこりと笑って、白い美しい髪と白い大きな体をした白い大きな服を着ている、(ベルが頑張って作ってくれた服だった)大きな大きな巨人の女の子のドナはいう。
実際にドナは口を開けてベルと会話をしているわけではない。ドナがそう言っている声がベルの頭の中に直接、聞こえているだけだった。
それはとても不思議な現象だったのだけど、こうしてドナと会話できることは嬉しいことだったし、なによりも便利だったから、ベルは『ドナの声が自分にだけ聞こえる不思議な現象』のことを、それほど変なことだとは思ってはいなかった。
「どこでもいいよ、ドナの好きなところに行こう」
おんぼろのカラフルな(つぎはぎの)気球に乗っている、気球乗りの十三歳の少女、ベルはにっこりと笑ってドナに言った。(ベルの気球にはとてもたくさんの荷物が積まれていて、その一部は気球から頑丈なひもで吊り下げるようにしていた)
風がとても気持ちよかった。
見渡す限りの一面が青色の空と海の世界には、とても暖かな南風が吹いている。
その風の中でドナはその大きな目を閉じで、ゆっくりと匂いを嗅ぐようにしてその風を大きく吸い込んで、またゆっくりと吐き出した。
「いい匂い」
ドナは言った。
それからドナはベルを見て「南に行きたい」と言った。
そのドナの言葉を聞いて、「わかった。じゃあこれから二人で南に行こう!」とにっこりと笑って大きな声でベルは言った。
するとドナは浅い透明な海の中を歩きながら、嬉しそうな声で、「うん! そうしよう!」とベルに言った。
やがて世界は一つになる。(ベルの気球にはってある古い新聞記事の切り抜き、ある有名な女性の気球冒険家の残した言葉)




