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ひかりちゃんが自分の目の前までとことこと歩いてやってくるとまめまきはぎゅっとひかりちゃんのことを抱きしめた。
「……、ひかりちゃん。ひかりちゃんに渡したいものがあるの」とまめまきはひかりちゃんの耳元で(小さな声で)そう言った。
まめまきは自分のスパイの服の特殊なポケットから(なくさないように大切にしまっておいた)小さなものを手のひらの上に取り出した。
……、それは、いなくなってしまった幽霊ホロウの男の子、浮雲かげろうの残した『小さなねじ』だった。
「まめまきさん。これはなんですか?」とひかりちゃんは言った。
「かげろうだよ」とにっこりと笑ってまめまきは言った。
その言葉を聞いて、ひかりちゃんはびっくりして、その幽霊ホロウの星のある大きな瞳をもっと大きくして、まめまきを見た。(なんだか少しだけ、かげろうににていた)
「……、これが、かげろうちゃん?」とひかりちゃんは言った。「うん。そうだよ」とまめまきは言った。ひかりちゃんはまめまきからかげろうの残した小さなねじを両手の手のひらをお椀のように合わせるようにして、……もらった。
ひかりちゃんはかげろうの残した小さなねじをじっと見ている。
……、すると、かげろうの残した小さなねじがぼんやりと淡い青白い色でぼんやりと光りだした。(まめまきとひかりちゃんは小さなねじが光ったところを見て、その顔をなんだか嬉しそうに輝かせる。まるでまだそこにかげろうがいてくれたみたいだったから)
ぼんやりと青白く光る小さなねじから、かげろうの(たくさんの)思いが、かげろうの心が、ひかりちゃんに伝わってくる。
ひかりちゃん。僕といつも一緒にいてくれてどうもありがとう。僕と一緒に遊んでくれてどうもありがとう。僕と一緒に笑ったり泣いたりしてくれて、どうもありがとう。……僕と友達になってくれて、本当にどうもありがとう。 ずっと一緒にいようねって、約束したのに、最後まで、ずっと一緒にいてあげらなくてごめんなさい。さようなら、ひかりちゃん。さようなら。愛してます。……ばいばい。と確かにかげろうの声で、かげろうの笑顔で、浮雲かげろうの心は、残された幽霊ホロウの女の子、水玉ひかりちゃんにそう言った。それがかげろうの残したぼんやりと青白く光る小さなねじから、しっかりとひかりちゃんに伝わってきた。
「……ひっく、かげろうちゃん。……、さようなら。私のほうこそ、私と出会ってくれて、……私と友達になってくれて、……、本当に、どうもありがとう」とぽろぽろと真珠のような丸い大粒の涙をたくさんこぼしながら、ひかりちゃんは言った。
それから、かげろうの残した小さなねじはまるでその大切な役目を終えたかのように、ぼんやりと淡く青白く光ることをやめると、そこでかげろうの最後のときと同じように、さらさらの白い砂漠の砂になって、ひかりちゃんの手のひらの上から風に吹かれるようにして、消えてしまった。(幽霊列車の客車の中に風は吹いていない。それなのに、白い砂漠の砂はどこかへ飛んで行ってしまった。かげろうのところにもどっていったのだろうか?)
「まめまきさん。私、かげろうちゃんにちゃんとさようならが言えました。私と出会ってくれて、友達になってくれてありがとうって、ちゃんと言うことができました」とまめまきを見ながら、……、泣きながら、にっこりと笑ってひかりちゃんは言った。
「……、うん。よかったね、ひかりちゃん」とたくさんの涙をその猫っぽい目にためながら(うれしそうな顔で)まめまきは言った。
「はい。本当によかったです」とうれしそうな顔で、(赤い目をした)涙目のひかりちゃんは言った。
そこで二人は顔を見合わせて笑いあった。
「ひかり。こっちに戻ってきなさい」と(二人の間を引き離すように、少しだけ大きな声で)ひまわりは言った。
ひまわりの声には明らかに怒りの感情が込められていた。
そのひまわりの怒っている声を聞いてひかりちゃんは振り返ってひまわりを見る。
「……ひまわりお母さん。ごめんなさい。私はひまわりお母さんのところにはいきません。まめまきさんと一緒にいます」とはっきりとひまわりにひかりちゃんは言った。(いろんな覚悟を決めたような、強い目をして)
そのひかりちゃんの言葉を聞いて、ひまわりが今まで以上に『すっごく怒っている』ことが、白い薄いヴェール越しでも、まめまきとひかりちゃんには(もちろん、ひまわりの隣にいるつばさちゃんにも)はっきりとわかった。




