106 さようなら。わたしの生まれて、育って、暮らした愛おしい世界。
さようなら。わたしの生まれて、育って、暮らした愛おしい世界。
ここは地獄だよ。一人の天才科学者の心が生み出した、本当の実在する地獄だ。地獄とは、きっと人の心の中にあるんだよ。
「ひかりちゃん。こっちにきて」とまめまきは言った。
そのまめまきの言葉にぴくりと(泣きながらずっと下を向いていた)ひかりちゃんの体が動いた。
ひまわりはその白い手袋をしている左手と右手でそれぞれ、(自分の左と右にたっている)つばさちゃんとひかりちゃんと手をつないでいた。ひかりちゃんは斜め上をみるようにして、ひまわりを見る。
ひまわりも顔を動かして、白い薄いヴェール越しにじっとひかりちゃんのことを見ている。
ひかりちゃんの星のある大きな瞳は、涙でいっぱいになっている。ひまわりとひかりちゃんはそのまま少しの間、お互いの顔をじっと見つめた。
ひかりちゃんがそっとつないでいたひまわりの手を、……離した。(ひまわりは自分の手から離れていったひかりちゃんの手を自分からつかもうとはしなかった)
それから両手を胸の前で合わせながら、ひかりちゃんはまめまきを見た。
「まめまきさん。私はどうしたらいいんですか?」と震える声でひかりちゃんが言った。
「ひかりちゃん。自分の頭で考えるの。自分の足で歩いて、自分の道を作って、自分の手で、自分の運命の扉を開くの。誰かの命令を待つのではなくて、自分の心で正しいと思った通りに行動するの。そのためにひかりちゃん。幽霊ホロウのみんなは、ずっといろんなことを今までがんばって勉強してきたんでしょ?」とまめまきは言った。
そのまめまきの言葉を聞いて、ひかりちゃんの大きな瞳の中の星が、大きく光り輝いて弾けた。(その瞬間、本当にひかりちゃんの瞳の中が、光で満ち溢れるようにして、輝いて見えた)
その美しい星の輝きは、まめまきにも見えたし、ひまわりにも見えたしも、つばさちゃんにも見えただろう。(ひまわりもつばさちゃんも驚いた顔をしていた。きっと私も)
それから、ひかりちゃんはゆっくりとまめまきのところにむかって豪華な客車の赤い絨毯のひかれている通路の上を歩き出した。
……自分自身の意志で。
……(ずっと、一緒にいた)ひまわりのところから離れるように。
ひまわりはそんなひかりちゃんのことを、ずっと、とても興味深い対象を観察するように見ていた。(まめまきにはそれが白い薄いヴェールの上からでもわかった)ひまわりの目線は歩いているひかりちゃんを追うようにして動いている。
ひまわりの横にいるつばさちゃんはひかりちゃんのことを応援するような顔で、(ずっと、心の中で、がんばれって言っているようだった。ちょっとだけ口も動いていたかもしれない)ずっとひかりちゃんのことを心配そうな顔で見つめていた。
そんなつばさちゃんはどことなく、ひかりちゃんの年の近い(とても仲のいい)妹を応援している姉妹のお姉ちゃんのように見えた。




