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100/145

100 愛のために……。 ……あなたのために。

 愛のために……。


 ……あなたのために。


 きたときと同じように一人で、星屑を抜け出して、幽霊ホロウの街の中を走っているとき、世界に急激な変化が訪れた。

 ごーん、ごーん、ごーん。

 それは『とても大きな音がする鐘の音』だった。

 その鐘の音は地下の空洞の世界にある大きな幽霊ホロウの街、全部に聞こえているようなくらいに、大きな鐘の音だった。(もともと、幽霊ホロウの街全体になにかのひまわりからの合図を伝えるための設備なのだろう)

 ごーん、ごーん、ごーん。

 と鐘の音は一定の間隔で鳴り続けている。

 まめまきは(驚きながらも)その鐘の音を風のように闇の中を走りながら聞いていた。

「みちびき。鐘は(音の発信源は)どこにあるの?」まめまきが言う。

『音のやってくる方向から予測すると、幽霊ホロウのお城の高い場所にある、どこかのようです』とみちびきは言った。

 みると、あれだけ騒ぎまくっていた無数の黄色に発光するロストチャイルドたちはいっせいにその動きをぴたりと止めて、皆が幽霊ホロウのお城をほうに目を向けて、じっとして動かなくなって、その鳴り響く鐘の音に耳をかたむけていた。(……それは異様な光景だった。まるでみんなが讃美歌、美しい歌、でも魂を引かれるようにして、聞いているようだった)

 ……この鐘の音は、なにを告げているのだろう?(ひまわりからの合図であることは間違いないけど)

 ……、時間切れって、ことだろうか?

 あるいは、(それとはまったく真逆で)ひまわりが大好きなゲームの始まりを告げる鐘の音なのだろうか? ……どっちだろう? 

 そんなことをまめまきが考えていると、再び世界に大きな変化がおこった。

 ご、ごごごご、ごご、ご、……。 

(そんな大きな音がして)大地が大きく揺れだした。

 その揺れを感じて、まめまきはずっと走り続けていた足を止めて、(すぐに周囲の地形を確認して)近くにある少し高い建物の屋根の上に移動した。

 そこから、幽霊ホロウの街の風景を見て、まめまきは絶句する。

 ……、幽霊ホロウの街が、崩れ始めている。

 だんだんとはじっこのほうから、街が崩れて、瓦礫となって、巨大な空洞の中に落ちていく。これは、(たまたま今、発生した)……自然な地震なのだろうか? いや、違う。揺れているのは幽霊ホロウの街だけだ。天上にある砂漠の大地のふたも、幽霊ホロウの街をぐるりと取り囲んでいる空洞の外にある大地も揺れてはいない。まめまきは獣化した月のように美しく光る猫のような瞳で周囲の様子をぐるりと見る。(みちびきに確認してもまめまきと同じ意見だった。そもそも、これほど大きな地震がおこるような地層には、地下の巨大な研究所など建設しないだろう)

 これは人工的な揺れだ。

『浮雲ひまわり博士自身が、幽霊ホロウの街を破壊している』のだ。

「なるほど。どうやら時間切れってことみたいだね」とため息をついて、まめまきは言った。

 ひまわりのこの地下の秘密の研究所での幽霊ホロウの実験も、……、私とのゲームも終わり。

「……、やがて、世界も終わる。そして、ひまわり。私とあなたとの最後の決着は、きっともうすぐやってくる」

 まめまきは再び、風のように崩れていく幽霊ホロウの街の中を走り始めた。

 無数の黄色に発光するロストチャイルドたちは、大きな揺れがおこって、幽霊ホロウの街が崩れ始めたあとでも、まるであんなに楽しかった幽霊ホロウのお祭りがこの瞬間に終わってしまったかのように、今もずっとその場で止まっていて、鐘の鳴るほうを見ながら、ぴくりとも動かないままだった。(まめまきにはたくさんのロストチャイルドたちが、そこから目に見えない神様に祈りを捧げているように思えた)

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