第56話 卒論
短めのお話です。
あれから、数ヶ月……
いま、天野はスーツ姿である。
そしてその周りの誰もが同じであった。
今日は学園の卒業論文発表会が行われるからだ。
会場となるホールは各学科、各研究室の学生、教員で埋め尽くされている。
天野達は各研究室の発表を聞きながら、自分たちの出番を待っている状態だ。
卒論ではエデンシステムについての説明と三体のAIの紹介で終わるつもりだ。
そのAIはタカミ・カムス・アシカビの三人(?)の予定である。
「いよいよだね」
天野の隣に座る久美が言う。
「ああ」
天野は余裕を持った笑みで答える。
「けど、コトアマちゃんも出したかったな〜」
「みんなで決めたことだろ?」
「そうだけどさぁ〜」
AI課の卒論発表として、量子コンピュータ『天』のAIと呼べる『コトアマテラス』の発表はしない事にした。
理由はエデンシステムは順次[開発中]であり、日々システムの内容が変化していて[結果]として発表出来ないと判断した事と、天野の防衛省とのシミュレーション騒動だ。
学園は情報を抑え、メディアなどに触れぬ様にしてきた。
今回の卒論発表会は一般企業の参加は出来ないものとしてはいるものの、何せ多数の人員である。
関係者を装って入ってくる者がいないとは限らず、その様な者にこそ目に止まる事は避けたい。
学園側もそれを考察し、今年の高木研究室の発表は時間を短くして、なるべく目立たない様にしている。
そんな中での呑気な二人の会話だった。
「まぁ、今年の文化祭でお披露目はするんだから」
「そうね、みんなビックリするよね」
「ああ、間違いない」
二人の会話に後ろの席からクニヨシの声がかかる。
「おい、天野もうすぐだぞ」
「ああ、用意しよう。久美行こう」
「うん」
三人は席を立ち、発表に向けての移動・準備に向かう。
移動の途中で天野は周りの様子を伺うと、中間発表会の時とずいぶん違う事に気付く。
待機する学生の内、数人は緊張している様だが多くは落ち着いている。
なかには笑顔を浮かべる学生も見受けられた。
三人は目立たぬよう会場裏の待機場所に着くと、その準備の様子を覗く。
スタッフと後輩となる学生達が慌ただしく動き回っていた。
「次はAI課だからね。3Dディスプレイの配線確認と音声コードの確認をして」
その中に美奈の姿が見える。
年が明けて高木研究室に十二名の後輩が入ってきている。
学科の異なる美奈は、他の生徒と打ち解けられるのか? などちょっと心配していたが杞憂に終わったようだ。
システム課の男子学生を使っている。
「あっ、先輩! 発表頑張って下さいね」
美奈は天野に気付くと足早にタッタッタッと駆け寄ってきた。
「ありがとう。今日は大変だね」
「大丈夫です。けど、卒業も間近なんですね…… 」
目元に寂しげな表情を浮かべる美奈に、天野は口元を少し曲げながら言う。
「それだけど、もうちょっと学園にいると思う」
「えっ!?」
「研究員院生として、高木研究室に残る事が決定したよ」
その言葉に美奈に明るい表情が灯る。
「ほっ、本当ですか!」
「ああ、久美も一緒だ」
「やったぁー」
天野と久美は学園に残る事となった。
この二人、早くから院生として学園に希望していたのだが、決定したのはごく最近である。
その原因はやはりあの騒動のせいである。
久美はともかく、天野の学園内での評価は微妙というよりも、際どかった。
学園内でも、社会不適合者ではないのか? などの話が出ていたのだが、高木教授が「彼はそのような人物では無い! 」と普段見られない気迫で、反対の意を唱える教員を押し留めたのだ。
そして高木教授からその旨を、つい先ほど受けたばかりだった。
だから本当は「久美も一緒だ」より「(なんとか)自分も一緒だ」が正しい。
その様子を新しく入った研究生は、面白くなさそうに見ている。
あとに聞いた話だが、今年の高木研究室の希望倍率は例年に比べて跳ね上がっていた。
原因は美奈である。
容姿可愛らしく、現役の人気イラストレーターである彼女は、男女関わらず多くのファンが学園内に存在している。
その彼女が高木研究室に入ったとの情報が流れると、違う学科からも多くの希望者が殺到したのだ。
そんな彼女の笑顔を、冴えない男子学生が受け止めていると思えば納得である。
そんな美奈の表情が少し曇る。
クニヨシが難しい表情をしていたからだ。
「えっ…… と、立木先輩は…… 」
その言葉にクニヨシは「いま気付いた」といった返事をする。
「んっ…… ああ、悪いな俺は残らねぇ。就職決まってるからな」
「なぁ〜んだ。もう、先輩ったら! ちゃんと決まってるじゃないですか。心配させないで下さいよ!」
ホッとした表情から、拗ねたように言う美奈。
「おう、悪い、悪い。今ならどんな作品作れるか考えてたんだ」
「気が早いですね。フフッ」
その様子を見て、他の男子生徒はさらに気を重くするのであった。
はっきり言ってクニヨシは黙っていればイケメンである。
黙っていれば。
その彼は、どうも小さなゲーム会社に就職したらしい。
詳しい事は天野もまだ聞いていない。
ブーーーー
前の発表の終了時間を知らせるブザーが鳴る。
会場からはパチパチとした拍手が鳴っている。
どうやら、前の発表が終わったみたいだ。
「私達の番ね! 行きましょう!」
「「おう」」
久美の掛け声に、応える天野とクニヨシ。
三人は並んで、大観衆の中へ足を向けて行くのだった。
〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜
その年の文化祭で、エデンシステムを一般公開する事になるが、反響が反響を呼び海外でも注目される事となる。
その事で、ひと騒動起こるのだが、これはまた別のお話。
残りのお話も5話を切りました。
ここまで読んで下さった読者の方々には感謝の言葉もありません。
何せ小説を書く事など初めてのことで、文法もハッキリ言って本人がよく分かっていない中での投稿です。
(一人称とか三人称とかわかんな〜い)
物語を書く文章としては、最低レベルでしょう。
ただ、この作品は[物語]というより[伝言]として書いている部分が何となく私の内にあります。
キチンとした文章で書くとなると、おそらく五年後か十年後、もしかしたら一生かけても、出て来なかったかも知れません。
その結果として、加齢臭が気になる筆者の、このような厨二病臭漂う文章が出来ております。
これを読んで下さる方々には本当に感謝です。
(ああ、フレーメン反応する読者の顔が浮かぶ…… )




