第31話 再会
三人が加賀見助教授の元へ着いた時、彼女はまさにタカミに変わるAIについての考察を終え、それを纏めている最中であった。
「このまま続けさせて下さい!」
普段の天野からは、想像できないくらいの強い主張に加賀見助教授は驚いた表情を浮かべたが、それも一瞬で、彼女が声を出す時はその目を鋭いものに変えた。
「認めん、これは自分自身の事だぞ」
「一方的です。元々あなt…… 加賀見先生がすすめた事でしょう」
「その通りだ。だからこそ、この問題は大きい。放っておくわけにもいかない」
「タカミはもう組み上がろうとしているのです。組むにあたり今までの生活データも使用してです。新しいAIを組んでもタカミと同等の蓄積データは持ち合わせてはいないはずです。どれだけ時間が掛かるか分からないんですよ」
「確かに時間は掛かるが、それとの話は別だ」
このようなやり取りを数回繰り返していた。
最初の方こそクニヨシも久美も真剣な表情で聞いていたが、話が繰り返されるたびに顔は緩み、最後には呆れた表情を浮かべていた。
そして、結果から見れば天野に軍牌が上がる、加賀見助教授の方が折れたのだ。
「わかった、しかし学園としても、今後は責任は取れないぞ」
「はい、覚悟してます」
その言葉に憮然とした表情を見せる加賀見助教授。
(覚悟なんかされてたまるか)
そんな想いもあってか、口調は不満を帯びたものが出てくる。
「それで、その肝心のタカミの現状はどうなんだ?」
「もう出来上がってもおかしく無いくらいです。先ほど見た時、進行状況で90%を超えてました」
「出来上がったら、報告してくれ」
「はい」
(間に合った)
それが天野の本音だった。
これで継続して、タカミを使用する事が出来る運びとなったのだ。
ホッと肩を撫で下ろすと、話は終わりと部屋を出て行こうとする。
「「「失礼します」」」
そこに加賀見助教授の声が掛かる。
「ちょっと待て、豊野。話したい事がある」
「はい?」
あれ? なんだろう? と言った表情でその場に立ち止まる。
「じゃあ、先に行ってる」
ドア越しの天野が久美に向かって言う。
「うん、またね」
久美はそう答えると、彼女はそのまま残り。
天野は静かに扉を閉じた。
部屋を出たあと、クニヨシが先に足を進める。
「悪りぃ、ちょっとトイレ行ってくるわ」
その言葉と共に速足でトイレに向かって行った。
(緊張していたのかな?)
などと思いつつ、顔と足を研究室のほうに向けていた時。
ガンッ!
クニヨシが向かった方向から聞きなれぬ音がする。
顔を向けるとクニヨシが何やら足元を気にしており、床は水に濡れて近くにはバケツが転がっていた。
清掃員のおばちゃんが現れると、クニヨシはペコペコと清掃員に向かって頭を下げはじめる。
天野は気にもとめないで、そのまま研究室に向かった。
〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜
「わりぃ、今日は帰るわ」
研究室に戻りパソコンを立ち上げている最中に、戻ってきたクニヨシの第一声がそれであった。
片膝は見事に濡れている。
「うん」
だいたいの事情を察していた天野は、表情を変える事なく普通に返事をする。
「あんのババア、わざとじゃ無いっての」
ブツクサと文句を言いながら、そのまま部屋を出ていった。
天野は立ち上がったパソコンの画面を見る。
「さて、タカミの状態はっと」
表示を見ると97%になっている。
もう間もなくである、稼働できるのは明日かな? と思っている時に扉の方向から人の気配を感じた。
久美かな? と思い、視線は画面に向けたまま、天野は口を開いた。
「久美、タカミシステムは今日中に組み上がり、明日には…… 」
「あの…… 」
久美の声じゃ無い、天野は声のする方を慌てて見た。
だが、その人物は差し込む太陽の光を背にしているのでよく見えない。
その人物はゆっくりと天野に近付き、同時に影が迫る。
その影が天野の額を捉えた時、彼はその人物を特定する事ができた。
文化祭で見かけた。
いや、それよりずっと以前に知っている人物。
伊澤美奈
その人物を前に、天野は両眼をはち切れんばかりに見開く。
ちょうどその時、ディスプレイの画面の表示は、タカミシステムの進行状態を表す数値が100%に切り替わっていた。
今回はカムスの設定を紹介します。
カムスは神産巣日神から名前を頂きました。
この神様の名前の中にある[産巣日]は[産霊]につながっており、意味は「生産・生成」を表します。
ですから神産巣日神は「神を生み出す神様」と捉える事が出来ると思います。
以前の後書きに「神様=システム」と書きましたが、カムスは「システムを生み出すシステム」と言うことを表現させて頂きました。




