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第25話 文化祭

 学園の中は多種多様な人達が行き来し、盛り上がりを見せている。

 今日この学園では、文化祭が開催されていた。

 そんな賑わいを中を、天野とクニヨシは歩いている。


「いいのかクニヨシ。今の時間はお前が受付担当だっただろう?」


「いいって、いいって。どうせ椅子にふんぞり返っているだけだし。アシカビの一般客への対応もバッチリだったじゃねーか」


「そうかも知れないが」


「だいじょうぶだって」


〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


 二週間ほど前、高木研究室ではシステム課とAI課のメンバーが合同で集まっていた。

 そして、机の上には一枚のポスターが置かれている。


『文化祭』


 そう、近日この学園で文化祭が開催されるわけだが、研究室として出展させる出し物の、最終確認が行われていた。


「さて、今季の文化祭ですが、当ゼミの出し物としては例年通り、ガイアの一般公開ということでよろしいでしょうか?」


 システム課の臼井大地が声を上げる。


「「「異議なーし」」」


 ほぼ全員が声をそろえる中、小さく手を上げる人物がいる。


「あ…… あの…… 」


 天野である。


「なんだー天野。不満でもあるのか?」


 天野から見て斜め前に座るクニヨシが、身を乗り出すようにして言い寄ってきた。


「い、いやぁ、ガイアの一般公開はいいとして、その…… アシカビとカムスだけじゃダメなの? 」


 これはつまり、彼のAIであるタカミも文化祭でお披露目しようという話だ。


「くどい!」


 ピシャリというクニヨシ、対する天野はガックリうなだれる。


「今はまだ新しいシステムを組み込んでいるわけじゃ無いけど、いずれそうなる事だし」


「ガイアの一般公開に対して、お客さんへの対応はAIで対応するってのは賛成してたじゃない」


 周りから次々と天野に説得の声が降り注ぐ。


「はぁ〜」


 ため息と共に先日の光景が甦える。


〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


「今年も例年通りにガイアの一般公開でいいと思うけど、呼び込みはどうする?」


「いるか? 呼ばなくても勝手に来るブースになると思うぞ」


「それでも誘導とか案内は必要じゃないかな」


「アシカビを使えるよう、加賀見先生にお願いしよっか」


 そう言って数名が加賀見助教授の所へ向かって行ったのだが。


「去年と全く同じでは開発研究者地して問題だろう」


 その様なお言葉を頂いた上で、メンバーは戻ってきた。

 つまり、研究の成果を文化祭でも示せ、という事だ。

 では、どうするのか? と皆で考えた時に出たのが。


「新しいシステムの紹介って事で、タカミとカムスをお披露目しようよ」


 と言った流れになったのだ。

 ここまでは天野も特に不満も無く賛同していたのだが、いざシステム課のメンバーに、改めて二体のAIを紹介する時に[何故か]いつもと衣装が違っていたのだ。

 

 そう、初めてガイアにタカミを連れてきた時の、クニヨシの衣装で現れたのだ。


 そして多数決の結果、()()()()()()お披露目が決定したのである。

 この時、クニヨシだけで無く、久美も天野の視線を逸らしたことは記憶に新しい。


〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜

 そして、文化祭当日。


 高木研究所が発表する、ガイア体験コーナーでは例年並みの混雑をみせていた。

 だが去年と違うのは、見学者(お客さん)の対応をAI達に任せた事で、人間側の仕事はほとんど無くなっていた。


「タカミはまだシステムを組み込んでいるわけじゃないから、実質アシカビが動かしているようなものだけど」


「見た目の()()は良かったから成功だろ」


「…… まぁ」


 この頃、ガイアのブースでは老若男女、多種多様の人たちがが並んでおり、順番待ちをしている人はAI達に色々な質問を投げかけ、その答えが返ってくるたびに、小さなどよめきを起こしていた。


「しけてんなぁ、大丈夫だって」


 クニヨシがいきなり天野の背中をバンッと叩く。

 たいして力を加えてた訳ではないのだが、半分考え事をしていたので天野は背中が一瞬反り返り軽く咳き込んでしまう。


「コホッ、コホッ! お、お前なぁ」


「お?」


 そしらぬ顔で顔を一方向に向ける。

 その先には文化祭様に彩られた大きな看板が掲げられていた。


『キャラクター研究会』


「こんな所にあったのか」


 クニヨシは急に上機嫌になる。


「何のクラブだ?」


 天野は初めて聞く、まあ元々興味が無いのが原因ではあるが。


「CG課を専攻している学生が多いクラブでな」


 そう言いながらそのブースに向かう二人。


「専攻しているだけあってCG画像処理や直筆のイメージ画とかでもプロ顔負けって連中ばかりで、実際にラノベの表紙飾っている子がいるんだってよ。サイン貰おっかな〜」


(なんか、以前にも聞いたことがあるような…… )


 そのブースには、色々なキャラクターの絵やCG画像が展示され、3Dディスプレイで立体的に表示された物もいくつか展示されていた。

 キョロキョロと見渡していると、クニヨシの声が上がる。


「おお、すげぇ。これ見ろよ表紙になっているやつだぜ」


 そこには巨大なパネルに描かれた女性が飾られていた。

 柔らかな笑みを含み、白、赤、黄色をふんだんに使ったその作品は、どこか神々しさをも感じさせる。

 だが、天野が気になった事はその容姿だった。


「これ…… は…… 」


 ジッと見つめる天野の横で、クニヨシは何かに気付いたようで方向を変えそちらに向かう。


「すいませ〜ん、コレあのライトノベルの表紙の作品ですよね。サイン貰いたいんですが〜」


 鼻の下を伸ばしたような脳天気な声で、椅子に座った女子学生に声をかけるクニヨシ。


「はい。よろしいですよ」


 控え目な可愛らしい声が聞こえる中、天野は作品のタイトルを見る。


『作品名  太陽神』

『作者名  伊澤美奈』


「い…… ざわ…… みな」


 目を見開き唖然とした表情を浮かべる天野、合宿で現れた少女の影と目の前の絵が一致する。

 目を背けようと横を向いた時に、ヘラヘラと締まりのない顔のクニヨシの顔が見えた。

 その顔の向かう先には一人の女子学生が色紙にサインを書いていたが、その女子学生も、ふと顔を上げ天野の存在に気付き「あら? 」とでも言うような雰囲気で天野を見たが、目が合った瞬間、彼女は目を見開いて驚愕の表情を表す。


 その瞬間、天野は弾かれたように、そのブースから飛び出した。


「お、おい!天野!」


 ワンテンポ遅れて椅子から立ち上がると同時に、クニヨシは天野を呼んだが彼はあっという間にその姿を消した。


「なんだぁ〜、アイツ」


 呆気に取られるクニヨシの横から、か細い声が響く。


「あなたは、今…… 天野と言いましたか?」


「ん?あぁ」


「ちょっと、お聞きしたい事があるんですが」


 彼女はどこか寂しげで、それでいて真っすぐな視線でクニヨシを(うなが)す。


「う、うん?」


 その眼差しに気圧されて少し身を引きながらクニヨシは答えた。


「今の人は、天野刀那さん…… でしょうか?」


「あれ? 天野のやつと知り合いなの?」


 素朴な疑問で、いつもの口調で発したクニヨシの言葉に、彼女はやや(うつむ)きながら言った。


「…… いえ」


 そして彼女はそこから離れていった。

 ん〜今後後書きで設定プロットを紹介すると、言いながらネタバレになってしまうかと思い、どうしようかと思っている筆者です。

 話の進行状況で順次紹介していきますね、申し訳ございません。

 (まぁ、大したネタバレというわけでも無いのですが…… )

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