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第21話 クニヨシの構想

 夏季休暇も終わり、学園内は学生達で賑わいを見せている。


「焼けたね〜」「海のバイトなんかするんじゃなかったよ〜」


「ノートにコピーさせてくれー」「知るか!ボケ!」


「別荘行って来たんだ家族で…… 彼氏連れて」「きゃ〜」


 天野はそんな会話が飛び交う中、研究室に向けて足を運んでいた。

 しばらく歩くと、久美とシステム課の…… 確か神谷という名の友人と、名前はわからないもう一人の女学生と一緒に楽しそうに話している姿が見えた。

 気が重い。

 彼女の姿を見て、合宿のことを思い出す。


(ちゃんと彼女に謝っておけよ)


 クニヨシの言葉が響く。


「(…… だよな)」


 天野は謝ることを心に決め、彼女に近づいて行く。

 とは言え、人前でそのような行為は[後ろめたさ]と[気恥ずかしさ]で出来そうもない。

 だから、天野は研究室で謝ることを決め、彼女に近づいて行った。

 その気配にまず久美の友人が気付き、そして久美もほぼ同時に気付いた。

 心なしか彼女の表情が暗く沈む。


「久美、今日研究室には…… 」


「ちょっと、ええか?」


 話しかけた途中で、神谷郁美が天野に割って口を挟んできた。


「久美はな、今日はウチらと付き合う予定になってんねん」


 トゲのある口調の関西弁で天野に食ってかかる。


「いや、来るかどうかを聞きたかっただけで」


「ほな、ええんやな!」


 もう一人の久美の友人が、天野に聞こえるように陰口を飛ばす。


「下の名を呼ぶなと怒鳴る奴が、相手には平気でいう奴って最っ低よね〜」


 久美が少し慌てたように口を開く。


「いや、これは最初に私が天野君に下の名前で呼んでねって…… 」


「あなたは、黙ってなさい」


 友人の叱責に口を閉ざす久美。


「ああ、わかった」


 天野はそれだけを言い、(きびす)をかえすと、研究室に足を向かわせた。

 彼女らの言動に多少イラつきはしたが、顔には出さない。

 人付き合いが苦手である彼にとって、人に嫌われることなど、さして問題はない。

 少なくとも彼はそう思っていた。

 (しばら)くすると、気持ちも落ち着き、(風当たりが強かったな)程度にしか思わなくなってきていた。


「ん?」


 研究室のある建物の中で作業服を着た複数の人たちが、なにやらカメラらしき機材をあちこちに取り付けている。


(防犯カメラかな?)


 そんな事を思いつつ横を通り抜け、研究室内に入っていった。


「よっと」


 棚にカバンを置くと、パソコンの前に座る。

 VR・ARメガネを装着すると、パソコンに向かって口を開いた。


「タカミシステム、ON。表示してくれ」


 すると天野の前に澄ました表情のタカミが現れた。


「モジュールはどんな様子だ?」


 アシカビに頼んでいた、人の感情と特質を通してモジュール達に変化があったのかを聞いてみる。


「個性化がうかがえます。またそれにより、力の上下関係が見られるようになりました。人口が増え、住居の増加が見られますが、文化レベルの向上はなく。住居の間取りの変更などの改善は今のところ見られません」


「住居を増やす事だけで対応して、部屋を広くするとかの発想がない…… 居住に関しての空間認識…… か、これも個別にシステムを組まないといけないなぁ…… はぁ」


「これからどうしますか?」


「食文化について聞いてみたい、食生活における学習状況は?」


「はい、危険予知アルゴリズムとの併用により、フグや毒キノコなど危険なものを口にすることはありません、飢饉が発生したとしてもそれらを食べることは無いです」


「それは全員か?」


「はい、すべてのモジュールに言えます」


(うーん、全く食べないってのも問題かな。現実では今でも食べて食中毒になったり、亡くなったりする人がいるくらいだから)


 出来れば[曖昧(あいまい)]に[認識]させつつ[学習]してもらいたい。

 それにしても、次から次にシステムの追加が発生しそうな事に頭をかかえる。


「加賀見先生に相談するか…… それとクニヨシにもまた手伝ってもらわなきゃな」


 そう呟くと天野は席を立ち、部屋から出て行く。

 廊下を出ると先程出会った作業員が、脚立を立ち上げ作業を行なっている。

 それをチラッと見たが、そのまま気にする事なく、天野は加賀見助教授の元に向かった。


〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜・〜〜〜


コンコン♪


「ちょっと待て、来客だ」


 ドア越しに加賀見助教授の声が聞こえる、他に誰かいるようだ。


ガチャ


 扉が開き加賀見助教授が現れる。

 天野を見て(おや? )とした表情をしながら問いかけた。


「天野か、どうした?」


「相談があって来ました…… あれ?」


 加賀見助教授の肩越しに見知った人物がいる。


「お?」


 クニヨシだった。


「先客がいましたか」


「いや、かまわん。ちょうどよかった、天野も同席してくれ」


(ちょうどよかった?)


 そう思いながらも部屋に入り、クニシの隣に座った。

 机の上には簡易型の3Dディスプレイが置かれてあり、二つの似たようなシステムルーティンが表示されている。

 発表会でクニヨシがちょっとだけ見せたやつだ。


「先生これは?」


「左がアシカビ、右がカムスのものだ」


「ほとんど同様の形状をしていますね。カムスにも外部情報を取り込ませるシステムを?」


 この天野の質問に答えたのはクニヨシだった。


「あぁ、だが外部情報の取り込み先とその処理内容が違う」


 そこに口を挟むようにして加賀見助教授は天野に言う。


「まあ待て、天野はどんな相談が?」


「はい、合宿前に人間の特質と感情を組み込んでみたんですが、個性と呼べなくも無いものが出来てはいます。しかし、単純すぎる感じなんです。それと経験を通して学習したものは、全くと言っていいほど[忘れない]、認識した事に対して[絶対]の行動を取るのです…… それで」


「[曖昧(あいまい)システム]の進行状況か…… 聞く話では、それだけでは無いようだな」


「はい、必要なシステムが次から次へと…… 」


 そんな天野を見て、加賀見助教授は小さくニヤリと笑う。


「いいぞ立木、天野にお前のシステムを説明してやれ」


「は、はい」


 急に話を振られて一瞬戸惑いを見せたが、クニヨシは天野に向かって目の前にあるシステムの説明を始めた。


「さっき言ったが、外部情報の取り込み先が違う」


「取り込み先?」


「パソコンとかの開発に関わる技術施設や研究施設がほとんどだ、そしてシステムの開発を行う」


「システムの開発? 外部の技術をカムスを通してシステム課に送ろうとしているのか?」


「天野、立木が言っているのはシステムを作り出すAIの事だよ。以前AIがAIを作り出したニュースを知っているだろう? まさにそれだ。ガイアで必要なシステムをカムスが判断し、自ら作成・システム化し構築・組み込みを行う。カムスはガイアに特化した開発型思考AIになる」


 それは天野が頭を抱えているシステムの追加や構築を、カムスがやってくれる事になる。


「クニヨシ…… お前、いつの間に…… 」


「いやなに、システム課というかパソコン扱う連中の願望だからな」


 クニヨシは大した事はしていないといった態度で天井を見る、照れくさいのだろう。


「近いものはアシカビも持っているぞ、お前のAIをガイアに組み込んだときがそうだ。まあ、あれは互換・変換処理を行った。と言うのが正確だが」


 加賀見助教授の話した内容で把握した。

 クニヨシはアシカビをベースに新しく組み替えたのだ。


「それで、いつ完成するのですか?」


 その質問に対して加賀見助教授とクニヨシは、同じように天野を正面にとらえ、同じタイミングで声を出した。


「「もう出来ている」」


 呆気(あっけ)にとられる天野。


「…… へ?」


「実際俺じゃねぇよ。すでに加賀見先生がシステムの概要を持っていたのさ」


 やや拗ねた感じでクニヨシが言う。


「まあそう言うな。このシステムが形になったのは、お前達がこの研究室に来て間もない頃だった。しかし驚いたぞ、立木があっという間に組み上げてしまうんだからな」


 加賀見助教授は微笑みながらそう答える。

 それに対してクニヨシは頭の上で腕を組み、素知らぬ顔で何も(しゃべ)らない…… 照れているのだろう。


「ちょっと見てみるか?」


 照れ隠しなのか、クニヨシはタブレットを操作しだす。

 すると、部屋が薄暗くなり、テーブルの横に半透明のカムスの姿が現れる。

 ホログラムだ。


「これは?」


「いま、学園内の各所で取り付けられているだろう? あれさ」


そう言うと加賀見助教授は天井方向に顔を向ける、そこには先程見た、作業服を着た人が取り付けていたのと同じ、カメラのような機材が取り付けられている。

 そこからカムスに向かって光が発せられている。


「お久しぶりです。天野さま」


 カムスが天野に声をかける。

 

「あれ? 声が」


 カムスの声が女性の声になっている。

 容姿も少し変化して、より女性らしくなっていた。


「ああ、声を変えたんだよ。オカマ言葉じゃあ気が散ってな。ちったぁ()()になったろ? 」


 どうやらクニヨシが手を加えたらしい。


「前をよく知っているだけに、今の方が違和感があるな」


「言わんでくれ、身体は女性で、精神的には男性のホモみたいに思ってんだ」


「あら、失礼しちゃうわね」


 三人のやりとりに、肩を揺らし声を殺して笑う加賀見助教授。

 

「それでだが、カムスには[曖昧(あいまい)]の意味をすでに学習させている。今は私の友人と量子力学の二重性を[曖昧(あいまい)システム]の根元として組み込み・検証を行っているところだ」


「それじゃあ、カムスがいれば…… 」


 天野の顔が期待に膨らむ。


「甘い! カムスがガイアに導入されると同時に、デバグ作業に追われると思え」


 その言葉に顔をげんなりさせる二人。


「しばらくカムスには、並行して[全ての言葉の意味]を学習させる。全てを[認識]させるためにな」


 そして加賀見助教授は姿勢を正し、真っ直ぐ二人に向かって言った。


「フル稼働で行うので中間発表には間に合うだろう。勝負はこれからだ」


「「はい!」」


 加賀見助教授の(げき)に、真剣な眼差しでそれに答える二人。

 そんな二人を見て、彼女はほそかに笑みを浮かべた。

伊邪那岐神イザナギノカミ伊邪那美神イザナミノカミ


はい、ここで有名な神様の登場です。

この世界を造り、人を創造させた神様です。

日本神話における世界の創造主といえる存在でしょう。

ですが、最高神とはされていないんですよね、最高神は天照大御神アマテラスオオミノカミです。

イザナはいざないに通じ、男女間の関わり(恋愛など)をつかさどる神様です。

神世七代の最後に登場する神様にして、初めて言葉が出てくる神様でもあります。


物語としては伊邪那岐神を天野刀那、伊邪那美神を加賀見玉緒にしています。

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