8話 よくわからないものを大量に拾ってきてしまいました。
朝。
私は森の中にいた。
「今日は……薬草をいっぱい採ろう」
昨日、ガルグさんから依頼されたエルドアン鉱石を大量に採った。
そのおかげで、少しだけ自信がついた。
……いや。
正確には、お金がいっぱい増えたことに自信がついた。
「薬草もいっぱい採れたら、もっとお金になるよね……」
私はさっそく森の中を歩き始めた。
すると。
「……あ」
草むらに薬草が生えている。
《素材採取》を発動。
すぐに最適な採取方法が頭に浮かんだ。
「これなら傷つけずに採れる……」
一本。
二本。
三本。
気がつけば、薬草の群生地があっという間に丸裸になっていた。
「いっぱい採れた……」
私は嬉しくなって、さらに奥へ進んだ。
すると、また薬草。
「わぁ……」
さらに薬草。
「あっちにもある」
その向こうにも。
「こっちにも……」
気がつけば、私は夢中になっていた。
薬草。
薬草。
薬草。
薬草。
袋の中がどんどん膨らんでいく。
「えへへ……今日は大収穫だぁ」
さらに森の奥へ。
そこで私は、少し変わった草を見つけた。
「……これも薬草かな?」
《素材採取》が反応する。
表示された名前は――
毒草。
「……毒?」
私は少しだけ首を傾げた。
でも。
「素材なら……採っておこう」
一本。
二本。
三本。
毒草もどんどん採っていく。
さらに進むと、今度は別の草。
麻痺草。
「これも……素材だよね」
採る。
その隣には、眠り草。
その近くには、強い刺激性を持つ植物。
普通なら、そんなものを見つけたら近づかない。
でも私は違った。
「使い道があるかもしれないし……」
片っ端から採っていく。
薬草も。
毒草も。
麻痺草も。
使い道が分からない草も。
「いっぱい採れたなぁ……」
私は満足して袋を覗き込んだ。
そのときだった。
――ピコン。
「……ん?」
《素材採取》が突然発動した。
目の前の地面に、文字が浮かぶ。
《赤土》
「赤土……?」
私はしゃがみ込んだ。
地面を少し掘ってみる。
赤茶色の土が出てきた。
「土かぁ……」
私はしばらく眺める。
そして、ふと思った。
「……これも使えるのかな?」
私は赤土を少し手に取った。
すると、《素材採取》から情報が流れ込んでくる。
レンガ。
道。
建築資材。
その他、さまざまな用途。
「……使えるんだ」
私は目を輝かせた。
「じゃあ、採ろう」
スコップを取り出す。
ザクッ。
ザクッ。
ザクッ。
「これも売れるかな?」
ザクッ。
「町で使ってるなら、買ってくれる人いるかも」
ザクッ。
ザクッ。
「いっぱい採れば……」
ザクッ。
ザクッ。
「お金になる……!」
ザクッ。
ザクッ。
私は夢中になって赤土を掘り続けた。
薬草。
毒草。
麻痺草。
そして赤土。
気がつけば、持ってきた魔法袋の中は素材でいっぱいになっていた。
「……そろそろ帰ろうかな」
私は立ち上がった。
そして周囲を見る。
「……あれ?」
森。
木。
草。
木。
草。
「…………」
私は固まった。
「……どっちから来たんだっけ?」
私は周囲を見回す。
右。
左。
後ろ。
前。
全部同じに見える。
「…………」
嫌な汗が流れる。
「……帰り道、わかんない」
どうしよう。
森の中で迷子になった。
私はしばらくその場で悩んだ。
「……たぶん、こっち」
なんとなく右を指差す。
「うん。たぶんこっち」
根拠はない。
ただの勘だった。
私は歩き始めた。
しばらく歩いて。
また歩いて。
さらに歩いて。
「……町、まだかな」
不安になってきた頃だった。
道の端に、小さなものが落ちているのが見えた。
「……ん?」
私は足を止める。
そこにあったのは――
あの石だった。
前拾ったものと、同じようなもの。
「……また?」
私はしゃがみ込んだ。
《素材採取》を発動する。
しかし。
《???》
相変わらず、名前は分からない。
「なんなんだろう、これ……」
私は石を拾った。
魔法袋に入れる。
そして少し進む。
すると――
「あ」
また落ちていた。
「……またある」
拾う。
さらに進む。
またある。
「……」
拾う。
またある。
「…………」
拾う。
「なんなんだろ……」
私は首を傾げながら、どんどん拾っていった。
気がつけば、魔法袋の中には同じ《???》が大量に入っていた。
「いっぱいあるなぁ……」
でも、名前は分からない。
使い道も分からない。
価値も分からない。
「……まあ、いつか分かるかな」
私は深く考えるのをやめた。
そして、また歩き始めた。
夕方。
ようやく町の門が見えた。
「……あったぁ……」
私はその場にへたり込みそうになった。
長かった。
本当に長かった。
「もう迷子にならないようにしないと……」
……たぶん無理だと思う。
私は町へ入り、そのまま冒険者ギルドへ向かった。
受付で今日採った素材を取り出す。
薬草。
毒草。
麻痺草。
赤土。
そして――
《???》の石。
「今日は、いっぱい採れました」
受付のお姉さんが目を丸くする。
「……これはまた、ずいぶんな量ですね」
「はい。いっぱいありました」
私は笑った。
その後、赤土などの査定をしてもらい、今日の収穫を整理していると。
ふと思い出した。
「そういえば……この石」
私は魔法袋から《???》を取り出した。
「これ、なんなのか分からなくて……」
受付のお姉さんに聞いても分からなかった。
そこで。
「ガルグさんなら分かるかもしれません」
私は鍛冶屋へ向かった。
「おう、ラウラじゃねぇか」
ガルグさんはいつものように大きな声で迎えてくれた。
「こんにちは、ガルグさん」
「今日は何を持ってきた?」
「これなんですけど……」
私は《???》を差し出した。
ガルグさんはそれを受け取る。
「…………」
一瞬。
表情が変わった。
「……おい」
「はい?」
「これ、どこで手に入れた?」
「森です」
「森のどこだ?」
「えっと……道に迷ったので、よく分からなくて……」
「…………」
ガルグさんは石をじっと見つめる。
そして、鑑定道具を取り出した。
しばらく確認したあと。
「……間違いねぇ」
「?」
ガルグさんが、石の正体を口にした。
「これは――」
私はその名前を聞いた瞬間。
顔が真っ青になった。
「…………え?」
額から汗が流れる。
背中にも冷たい汗が伝う。
「……そ、そんな……」
私は震える手で、袋の中を見る。
そこには。
同じものが、まだ大量に入っていた。
「…………」
私は言葉を失った。
一体、私は。
何を。
拾ってきたのだろう。
――続く。




