7話 採りやすい鉱石を採ったら、報酬が増えました
鉄鉱石の依頼を終えた翌日。
私はギルドの掲示板を眺めていた。
「次は何を採ろうかなぁ……」
薬草。
鉱石。
魔物の素材。
いろいろな依頼が貼られている。
「お金になる依頼がいいなぁ」
そんなことを考えていると。
「お嬢ちゃん」
「……?」
後ろから声をかけられた。
振り向く。
そこにいたのは、小柄な老人だった。
白い髭。
太い腕。
年季の入った作業着。
「お前さん、昨日の鉄鉱石を採ってきた嬢ちゃんだろ?」
「はい。ラウラと申します」
「わしはガルグ。ドワーフの鍛冶屋をやっとる」
「鍛冶屋さん……」
「ああ」
ガルグさんは私を見る。
「昨日、ギルドで話を聞いてな。えらく品質のいい鉄鉱石を採ってきたそうじゃないか」
「そうなんですか?」
「自分で採ったんじゃろうが」
「はい」
私は頷く。
するとガルグさんは、少し困ったような顔をした。
「実は頼みたいことがある」
「依頼ですか?」
「ああ」
私はすぐに反応した。
「お金になりますか?」
「……」
ガルグさんが苦笑する。
「なるとも」
「やります」
「早いな!?」
ガルグさんが目を丸くする。
「どんな依頼ですか?」
「エルドアン鉱石を採ってきてほしい」
「エルドアン鉱石?」
「ああ」
ガルグさんは説明してくれた。
エルドアン鉱石は、鉄鉱石と同じくらい採れやすい鉱石らしい。
けれど。
「鉄鉱石より加工しやすくてな」
「加工しやすい?」
「ああ。武器や農具、工具なんかにも使いやすい」
そのため、鍛冶屋では鉄鉱石よりもエルドアン鉱石を使うことが多い。
「だから、最近は需要が高くてな。町の近くで採れるはずなんだが、在庫が足りん」
「なるほど……」
「そこで、お前さんに頼みたい」
ガルグさんが報酬を提示する。
「銀貨五枚でどうじゃ?」
「……!」
銀貨五枚。
普通の依頼より高い。
「やります!」
「また即答か!」
「すぐ採ってきます!」
私は魔法袋を背負う。
「どこにありますか?」
「町の近くの山じゃ。鉄鉱石が採れる場所から、少し奥へ行けば見つかるはずじゃ」
「分かりました!」
私は元気よくギルドを出た。
町の近くの山。
「ここかなぁ」
私は岩場を歩く。
周囲を見回す。
「エルドアン鉱石……」
図鑑を開く。
色。
形。
特徴。
「この辺りにあるはず……」
さらに歩く。
そして。
「……あ」
足を止めた。
《素材採取》が反応する。
「……!」
頭の中に情報が浮かんだ。
《エルドアン鉱石》
品質:最高
採取推奨部位:鉱脈全体
推奨採取方法:表面を削り、亀裂に沿って採掘
「……あった」
私は岩壁を見る。
そして。
「……いっぱいある」
少し離れた岩壁。
その奥。
さらに奥。
どこを見ても。
エルドアン鉱石。
「…………」
私はしばらく固まった。
「これ……」
全部採っていいのかな。
依頼はエルドアン鉱石。
だったら。
「採っていいよね」
私は小さなピッケルを取り出した。
「よし」
コンッ。
カンッ。
ガンッ。
採取開始。
「ここを削って……」
図鑑を確認する。
「亀裂に沿って……」
ガンッ!
鉱石が落ちる。
「採れた!」
また。
ガンッ!
さらに。
ガンッ!
ガンッ!
ガンッ!
「……ふふ」
楽しくなってきた。
ガンッ!
ガンッ!
ガンッ!
「うへへへ……」
鉱石がどんどん魔法袋へ入っていく。
「こんなに採れる……」
嬉しい。
とにかく嬉しい。
「うへへへへ……」
私は夢中になって採り続けた。
「……これくらいでいいかな」
気づけば。
魔法袋はエルドアン鉱石でいっぱいになっていた。
「いっぱい採れた」
私は満足して山を下りる。
そして。
ガルグさんの鍛冶屋へ向かった。
「ガルグさん!」
「おお、戻ったか!」
「採ってきました」
「そうかそうか」
ガルグさんが笑う。
「どれくらい採れた?」
「いっぱいです」
「いっぱい?」
「はい」
私は魔法袋を開いた。
「こちらです」
どさっ。
どさどさっ。
どさどさどさっ。
鍛冶屋の床に、大量のエルドアン鉱石が積み上がっていく。
「…………」
ガルグさんが固まる。
「……お嬢ちゃん」
「はい?」
「これは……?」
「エルドアン鉱石です」
「それは見れば分かる!」
ガルグさんが鉱石の山を見る。
一つ手に取る。
鑑定する。
「……最高品質」
「はい」
「こっちも……」
また一つ。
「最高品質……」
さらに一つ。
「これもか……」
ガルグさんが頭を抱えた。
「お前さん……」
「はい?」
「いったい、どれだけ採ったんじゃ?」
「たくさんです」
「……」
ガルグさんはしばらく黙り込む。
そして。
「……依頼料は銀貨五枚と言ったが」
「はい」
「これだけあれば、銀貨五十枚は払わんと割に合わん」
「……え?」
「銀貨五十枚だ」
「五十枚!?」
私は目を丸くした。
「いいんですか?」
「むしろ、こちらが助かっとる」
ガルグさんは豪快に笑った。
「これだけ高品質な鉱石があれば、しばらく鍛冶仕事に困らん!」
「ありがとうございます!」
私は銀貨五十枚を受け取った。
「……いっぱい」
銀貨の重みを感じる。
「えへへ……」
またお金が増えた。
採取って。
「すごくいい仕事かもしれません」
その日の夜。
私は宿の部屋でベッドに座っていた。
今日一日のことを思い返す。
鉄鉱石。
エルドアン鉱石。
どちらもたくさん採れた。
「……楽しかったなぁ」
でも。
ふと、最初に採った薬草のことを思い出した。
青葉草。
回復薬。
極上品質。
「そういえば……」
私は素材図鑑を開く。
「薬草って、他にもいっぱいあるんだよね」
薬草。
毒消し草。
魔力草。
睡眠草。
いろいろな種類が載っている。
「……全部、採ってみたい」
どんな薬草があるんだろう。
どんな場所に生えているんだろう。
どれくらいお金になるんだろう。
「……」
私は少し考える。
「明日は、薬草を探してみようかな」
そして。
また一つ。
ラウラの採取したいものが増えた。
「いっぱい集めたら……」
私はベッドに倒れ込む。
「いっぱいお金になるかも……」
そんなことを考えながら。
ラウラは幸せそうに眠りについた。




