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【ハズレ職】素材採取士の私。お金のために採取していたら世界最強になりました  作者: きらっち


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51話 新装備とリリスの冒険者登録しにいきます!



宿屋の裏庭。


そこには、四人の少女たちが集まっていた。


ラウラ、ダリア、ギルティ、そして新たに仲間となったリリス。


それぞれの前には、これまでの冒険で手に入れた貴重な素材が山のように積まれている。


マグマドラゴンの鱗。

竜炎核。

魔晄結晶。

アーマードスコーピオンの毒腺。

そして、九色鳥クインバードから採取した色鮮やかな羽根。


普通の冒険者なら、一つ手に入れただけでも大騒ぎするような素材ばかりだ。



「よーし! あちしは薬品を作るのだ!」


ダリアが腕まくりをした。


「あのダンジョンで採れた素材、まだまだ使えるものがいっぱいあるのだ!」


「ギルティは装備の製作ね!」


鍛冶道具を並べていたギルティが、元気よく返事をする。


「クインバードの素材と、今まで集めた激レア素材を組み合わせて、みんなの靴を新しくするよ!」


「ラウラちゃんの投てき補助装備も作るんだよね?」


「うん! マグマドラゴンの素材を使って、ラウラちゃんの投てきをもっと補助できる装備を作る!」


「す、すごいものができそうですね……」


リリスは並べられた素材を見て、目を輝かせた。


「じゃあ、あちしは回復薬、麻痺薬、毒薬。それから聖水スプレーとゴーストパウダーも追加で作るのだ!」


「聖水スプレーですか?」


「そう! いちいち瓶の蓋を開けて、ゾンビに聖水をかけるのは面倒なのだ。スプレーならシュッと一吹き! 便利なのだ!」


「それはいいですね!」


ラウラは素直に感心した。


もっとも、聖水スプレーを使う相手には、できれば一生会いたくない。


「リリスは魔法鞄と財布をみんなの分、作りますね!」


リリスも気合い十分だった。


「よし! それじゃあ、各自作業開始!」


こうして、金満腹の装備強化計画が始まった。


……ただし。


ラウラだけは、少し違うことを考えていた。


「うーん……」


自分の手のひらを見つめる。


「投げても壊れなくて、よく飛んで、できれば安いもの……」


大事なのは、ここだった。


できれば安いもの。


ラウラにとって、どんなに高性能な武器でも、投げた瞬間に失われるのなら話は別だ。


武器を投げるたびにお金が飛んでいく。


それは、あまりにも悲しい。


「……あ、そういえば」


ラウラはふと、自分のステータスを確認した。


すると――。


「えっ?」


見慣れない表示が目に入った。


《素材採取》Lv3


「レベルが、上がってる……?」


ラウラは慌てて詳細を確認した。


《素材採取》Lv3

素材の状態を把握できる。


採取対象を視認することで、以下の情報を取得できる。


・素材名

・品質

・鮮度

・魔力含有量

・希少性

・推奨用途


「えええっ!?」


ラウラは思わず声を上げた。


「こ、これ、すごく便利じゃないですか……!」


今までは、素材の品質や希少性を判断するにも、経験や知識が必要だった。


しかし、これからは採取対象を見るだけで、その状態が分かるらしい。


「これなら、価値のある素材を見逃さずに済みますね……!」


ラウラの目が輝いた。


強くなったことよりも、珍しい素材を見つけやすくなったことのほうが嬉しい。


それが素材採集士ラウラだった。


「よし……ちょっと街を見てきます!」


ラウラはそう言って、ひとりで宿屋を出た。


目的は、もちろん新しい投てき武器を探すことだった。


     




街の通りを歩きながら、ラウラはあちこちを見回した。


「投げても壊れないもの……。何かいいもの、ないでしょうか……」


道端の石は便利だ。


そこら中に落ちているし、失敗しても惜しくない。


しかし、強力な魔物を相手にするとなると、もう少し頑丈なものが欲しい。


できれば、投げやすくて、遠くまで飛んで、命中しても壊れないもの。


そして、何よりも大切なのは――。


「お安いもの……」


呟きながら歩いていると、一軒の武器屋が目に入った。


看板には、剣と槍の絵が描かれている。


「武器屋さん……!」


ラウラは期待に胸を膨らませ、店の中へ入った。


店内には、剣、槍、斧、弓など、さまざまな武器が並んでいる。


その奥に、ラウラの目を引く商品があった。


「……あれ?」


それは、投げることを前提に作られた武器だった。


手のひらに収まる金属製の投てき武器。

重さや形状が工夫されており、投げやすさと威力を両立しているらしい。


ラウラはそっと値札を確認した。


「…………」


もう一度、値札を確認した。


「…………えっ?」


さらに、桁を数えた。


「えええええっ!?」


思わず店内に響く声が出た。


高い。


とにかく、高い。


しかも投げるための武器なので、使えば手元からなくなる可能性がある。


「こ、これを何個も買うんですか……?」


想像してみる。


一個買う。

投げる。

魔物に当たる。

回収できない。


また一個買う。

投げる。

魔物に当たる。

回収できない。


「…………」


ラウラの顔から笑顔が消えた。


「む、無理です……!」


財布が持たない。


いくら素材採集で稼いできたとはいえ、こんなものを大量に使っていたら、せっかく貯めたお金があっという間になくなってしまう。


ラウラは店員に何も言わず、そっと武器屋を出た。


「やっぱり……拾ったほうがいいのかな……」


道端の石なら無料だ。


黒曜石は高価だが、普通の石ならお金はかからない。


「うう……。でも、もう少し効率よく投げられるものが欲しいです……」


悩みながら、ラウラは宿屋へ戻ることにした。


     




宿屋の裏庭では、ギルティが鍛冶道具を並べていた。


金属を加工する準備を進めているところらしい。


「ギルティさん!」


「おっ、ラウラちゃん! どうしたの?」


ラウラは少し申し訳なさそうに尋ねた。


「あの……何か、投げられる武器って作れませんか?」


「投げられる武器?」


「はい。投げても壊れにくくて、できればたくさん用意できるものが欲しいんです。武器屋さんで見たものは、すごく高くて……」


「なるほどね!」


ギルティは腕を組んで考え込んだ。


「ラウラちゃんの投てき能力なら、普通の武器よりも、投げることに特化したものを作ったほうがよさそうだね」


「本当ですか!?」


「うん! 鉄鉱石があれば、何か作れると思うよ!」


「鉄鉱石なら、たくさんあります!」


ラウラは即答した。


そして、自分の魔法袋から鉄鉱石を取り出し始めた。


ゴトッ。


ゴトゴトッ。


ゴトゴトゴトッ。


「……え?」


ギルティが固まった。


ラウラは次々と鉄鉱石を取り出し、裏庭に積み上げていく。


しかも、どれも品質が高い。


ギルティは一つ手に取ると、目を輝かせた。


「こ、これ……高品質じゃん!」


別の石を手に取る。


「こっちも! えっ、これも!?」


さらに確認する。


「うわあああっ! すごい! すごいよ、ラウラちゃん!」


ギルティのテンションが一気に上がった。


「これだけあれば、試作どころか大量生産できるよ!」


「ほ、本当ですか?」


「任せて!」


ギルティは満面の笑みを浮かべた。


「ラウラちゃん専用の投てき武器、作ってあげるからね!」


「ありがとうございます!」


ラウラは深々と頭を下げた。


これで、道端の石を探し回らなくてもよくなるかもしれない。


そして何より、武器屋で高い武器を買わずに済む。


ラウラの心は、希望で満たされた。


     



数日後。


宿屋の裏庭には、完成した装備や道具が並んでいた。


ギルティ、ダリア、リリス。


三人とも、やり遂げた職人の顔をしている。


「みんな、完成したよ!」


ギルティが、まず四足分のブーツを取り出した。


それは、見る角度によって色が変わる、不思議な靴だった。


赤、青、緑、金、紫。


光を受けるたびに、七色の輝きが浮かび上がる。


「わあ……綺麗……!」


リリスが感嘆の声を上げた。


「クインバードの素材を使って作った、特別製のブーツだよ!」


ギルティは誇らしげに胸を張る。


「その名も――七色ブーツ!」


「七色ブーツ……!」


ラウラは靴を受け取った。


美しい。


そして、見るからに高価そうだ。


「こ、これ、本当に履いていいんですか……?」


「もちろん! みんなのために作ったんだから!」


四人はさっそく七色ブーツを装備した。


その瞬間――。


「……えっ?」


ラウラがステータスを確認し、目を見開いた。


「速さが……五十も上がってます!」


「ええっ!?」


ダリアも慌てて自分のステータスを確認する。


「ちょっと待つのだ! あちしも速さが五十上がってるのだ!」


ギルティとリリスも確認した。


四人のステータスは、こうなっていた。


ラウラ  40+50

ダリア  38+50

ギルティ 35+50

リリス  33+50


「速さ八十超え……!?」


リリスが呆然と呟いた。


しかも、驚くべきことはそれだけではなかった。


スタミナも大幅に増加していたのである。



ラウラ  75+75

ダリア  68+68

ギルティ 42+42

リリス  54+54


「スタミナまで増えてるうううっ!」


ダリアが叫んだ。


「これなら、走っても走っても疲れにくいってこと!?」


「そういうことだね!」


ギルティは満足そうに頷いた。


「クインバードの素材に、ほかの希少素材も組み合わせたんだ。みんなの体に合うように調整してあるよ!」


「す、すごいです……!」


リリスは自分の足元を見つめていた。


魔導具師として、素材と装備の相性がどれほど重要なのかは理解している。


だからこそ、この靴がどれだけ高度な技術で作られたものなのか、よく分かった。


「これなら……今までより、ずっと遠くまで走れますね!」


「うん!」


ギルティは笑顔で頷いた。


「……ただし」


ラウラが小さく呟く。


「走る必要があるような魔物には、できれば会いたくないです……」


「それはそうなのだ!」


ダリアも即座に同意した。


装備が強くなっても、虫やゾンビが好きになるわけではない。


金満腹の価値観は、今日も揺るがなかった。


     


「それじゃあ、次はラウラちゃんの装備!」


ギルティが、もう一つの道具を取り出した。


それは、腕に装着するタイプの補助装備だった。


赤黒い金属の表面には、マグマドラゴンの鱗を思わせる模様が浮かび上がっている。


要所には、希少素材を加工した部品が組み込まれていた。


「マグマドラゴンの素材を中心に、ほかの激レア素材も使って作ったんだ」


ギルティは説明する。


「名前は――ドラゴンアーム!」


「ドラゴンアーム……!」


ラウラは、そっと受け取った。


見た目は少し物々しい。


けれど、腕に装着してみると、意外なほどしっくりと馴染んだ。


重さも気にならない。


「えっ……軽いです!」


「ラウラちゃんの投てきを邪魔しないように、重量と重心を調整したんだよ。腕の動きを補助して、投げる動作を安定させるための装備だね」


ラウラは試しに腕を動かしてみた。


振りかぶる。


腕を伸ばす。


手首を返す。


どの動きも、自然だった。


「すごい……! これなら、もっと遠くまで投げられそうです!」


「ふふん! 鍛冶師ギルティの力作だからね!」


ギルティは得意げに胸を張った。


ラウラはドラゴンアームを大切そうに撫でた。


「ありがとうございます、ギルティさん! 大切に使います!」


「うん! でも、ラウラちゃんの場合は、大切に使うよりも思い切り使ったほうが性能を発揮できると思うよ!」


「……投げても大丈夫ですか?」


「それは腕の装備だからね!? 投げちゃ駄目だよ!?」


「は、はい!」


危うくドラゴンアームそのものを投げるところだった。


     


小型鉄球、五百個


「それから、こっち!」


ギルティが、大きな箱を持ってきた。


蓋を開けると、中には金属製の小さな球がぎっしり詰まっていた。


一つ一つが、投げやすい大きさと形に整えられている。


「これは……?」


「ラウラちゃん専用の投てき武器!」


ギルティは元気よく答えた。


「高品質の鉄鉱石を使って、小型鉄球を作ってみたんだ。形と重さを揃えてあるから、投げるときに扱いやすいと思うよ!」


ラウラは一つ手に取った。


手のひらに収まる、ずっしりとした鉄球。


これなら、普通の石よりも安定して投げられそうだ。


しかも、素材は自分が持っていた鉄鉱石。


武器屋で高い投てき武器を買う必要もない。


「すごい……! これなら、安心して使えます!」


ラウラは感激した。


そして、ギルティは何気ない調子で言った。


「とりあえず、五百個作っといたからね!」


「……ご、五百個!?」


ラウラは箱の中を見つめた。


ぎっしり。


本当に、ぎっしり入っている。


「えっ、こんなにたくさん……!?」


「だって、ラウラちゃんは投げるでしょ?」


「投げますけど……!」


「なら、たくさん必要かなって!」


「ギルティさん……!」


ラウラは目を潤ませた。


これだけあれば、しばらく投げるものに困らない。


そして何より、投げるたびに黒曜石を失う悲しみから解放される。


「さらば……銀貨二十枚……!」


ラウラは、遠い目をして呟いた。


黒曜石への未練は、まだ消えていなかった。


     




「こっちも完成したのだ!」


ダリアが、得意げに小瓶を掲げた。


中には、どろりとした紫色の液体が入っている。


光の加減によっては、黒に近い色にも見えた。


「それは……毒薬ですか?」


「そう! アーマードスコーピオンから採れた毒腺を使って、特別な毒液を作ったのだ!」


ダリアは、メディーガンを取り出した。


そして、慎重に薬液を注入していく。


「その名も――超強力毒液MAXIM!」


「名前からして、すごく強そうですね……」


「強いのだ!」


ダリアは自信満々だった。


「普通の毒薬とは違うのだ。貴重な毒腺を使って、あちしの錬金術で濃度も調整したのだ!」


「どれくらい強いんですか?」


「……それは、実際に使ってみないと分からないのだ!」


「えっ」


「もちろん、安全な場所と相手を選んで試すのだ! 宿屋で試したりはしないのだ!」


ダリアは慌てて付け加えた。


どうやら、本人にも危険性は理解できているらしい。


さらに、ダリアはほかの薬品も並べた。


回復薬。

麻痺薬。

通常の毒薬。

聖水スプレー。

ゴーストパウダー。


「これで、だいたいの状況には対応できるはずなのだ!」


「すごいです、ダリアさん!」


「ふっふっふ! これで虫が出ても安心……」


そこまで言って、ダリアの顔が曇った。


「……いや、安心ではないのだ。虫は嫌なのだ」


「ですよね……」


ラウラも頷いた。


どれだけ薬品が揃っても、巨大な虫を見た瞬間に逃げたくなる気持ちは変わらない。


     




「皆さん、お待たせしました!」


最後に、リリスが大きな袋をいくつも持ってきた。


「魔法鞄と財布、全員分が完成しました!」


まず、魔法鞄。


外見は比較的シンプルだが、魔力を通すと表面に繊細な模様が浮かび上がる。


続いて財布。


こちらも一見すると普通の財布だが、魔導具師の技術がふんだんに盛り込まれていた。


「魔法鞄は、皆さんが持ち歩きやすいように調整しました。財布も、取り出しやすくて、中身を管理しやすいように作ってあります!」


「ありがとうございます!」


ラウラは魔法鞄を受け取った。


素材を分けて保管できれば、採集の効率も上がる。


財布も、所持金を管理するためには欠かせない。


「これなら、お金と素材を分けて持てますね……!」


ラウラは嬉しそうに頷いた。


その隣では、ダリアとギルティも完成品を確認していた。


「うん! 使いやすそうなのだ!」


「さすがリリス! 丁寧な仕事だね!」


二人から褒められ、リリスは頬を赤くした。


「そ、そんな……。皆さんのお役に立てたなら、嬉しいです……!」


その様子を見て、ラウラはダリアとギルティに目配せした。


二人も頷く。


そして三人は、リリスの前に並んだ。


「リリスさん!」


ラウラが声をかける。


「素晴らしい魔法鞄と財布を、ありがとうございます!」


「ありがとうなのだ!」


「リリスのおかげで、みんなの道具がもっと使いやすくなったよ!」


三人は揃って頭を下げた。


そして、ラウラが金貨の入った袋を取り出した。


「これは、リリスさんへの感謝です!」


ダリアとギルティも、同じように袋を差し出す。


三人合わせて――金貨五百枚。


「…………え?」


リリスは目を丸くした。


「こ、これは……?」


「感謝の気持ちです!」


ラウラが微笑んだ。


「リリスさんが作ってくれた魔法鞄と財布、とても嬉しいです。これからも、よろしくお願いします!」


「で、でも……こんなにたくさん……!」


リリスの手が震えた。


これまで、魔導具を作っても品質が悪いと責められ、仕事を失い、住む場所さえなくしてしまった。


自分の作ったものを喜んでもらえたことなど、ほとんどなかった。


それなのに。


目の前の三人は、自分の仕事を心から喜んでくれている。


しかも、これほどの報酬まで用意してくれた。


「うっ……」


リリスの目から、ぽろぽろと涙がこぼれた。


「リリスさん!?」


「ご、ごめんなさい……! 嬉しくて……! こんなに喜んでもらえたの、初めてで……!」


「リリスさん……」


ラウラは、そっとリリスの手を握った。


「これからも、一緒に頑張りましょうね」


「……はいっ!」


リリスは涙を拭きながら、何度も頷いた。


こうして、金満腹にまた一つ、大切な絆が生まれた。


そして。


「それはともかく!」


ダリアが、ぱんっと手を叩いた。


「リリスの冒険者登録を済ませるのだ!」


「えっ、今ですか!?」


「今なのだ!」


「で、でも、まだ涙が……!」


「大丈夫! 冒険者ギルドは逃げないのだ!」


「私たちは逃げますけどね……」


ラウラが小さく呟いた。


「ラウラ、そこは黙っておくのだ!」


     


冒険者ギルドでの手続きは、思いのほかあっさりと終わった。


金満腹は、すでにBランクのパーティーとして登録されている。


そして、新たに加入したリリスも、パーティーの実績と特例によって、Bランク冒険者として登録されることになった。


「……ええっ!?」


リリスは、渡された冒険者証を見つめて固まった。


「わ、私が……Bランク……?」


「そうなのだ!」


ダリアが胸を張る。


「これからは金満腹の一員として、頑張るのだ!」


「は、はい!」


リリスは、冒険者証を両手で大切に握りしめた。


少し前まで、住む場所も仕事もなかった。


自分の作る魔導具に自信を持てず、将来にも希望を見いだせなかった。


それが今では、信頼できる仲間ができた。


自分の技術を認めてもらえた。


そして、Bランク冒険者にまでなった。


「私……もっと頑張ります!」


リリスの表情には、確かな決意が浮かんでいた。


こうして、金満腹は四人組のパーティーとして、本格的に活動を再開することになった。


     




翌日。


四人は、ダンジョン攻略のためにブングルへ戻ることにした。


全員が七色ブーツを装備し、ラウラはドラゴンアームを装着。


小型鉄球も、必要な分を取り出しやすいように準備してある。


ダリアのメディーガンには、超強力毒液MAXIMをはじめとする薬液が装填されていた。


リリスも、新しく作った魔法鞄と財布を身につけている。


「準備万端なのだ!」


ダリアが元気よく言った。


「これなら、ダンジョン攻略も楽になるね!」


ギルティも頷く。


「私も、皆さんのお役に立てるよう頑張ります!」


リリスも張り切っていた。


ラウラは、みんなの装備を見回した。


「これだけ準備できたんですから、きっと大丈夫ですよね……!」


そう。


装備は整った。


薬品も揃った。


魔法鞄も財布も新しくなった。


小型鉄球は五百個。


七色ブーツによって、四人の速さとスタミナも大幅に上がっている。


今の金満腹なら、以前よりもずっと安全に移動できるはずだ。


――少なくとも、四人はそう思っていた。


「……ん?」


道の先に、何かが見えた。


大きな角。


筋骨隆々の体。


地面を踏みしめる太い脚。


そして、こちらを見つけた瞬間に、勢いよく突進してくる魔物。


「ホ、ホーンブル!?」


ラウラが叫んだ。


「うわあああああっ!? 牛なのだああああっ!」


ダリアも叫ぶ。


「ちょっと待って! なんでこっちに来るの!?」


ギルティが叫ぶ。


「えええええっ!? あれと戦うんですか!?」


リリスも叫んだ。


四人は一斉に走り出した。


いや、正確には――。


全員、全力で逃げ出した。


「逃げます! 逃げます! 逃げます!」


ラウラは小型鉄球を握りしめながら走る。


七色ブーツの効果で、以前よりも遥かに速い。


スタミナも十分。


けれど、後ろから迫ってくるホーンブルの迫力は凄まじかった。


「なんでこんなところにいるのだああああっ!」


「知らないよおおおおっ!」


「ちょっと待って、リリス! もっと速く走って!」


「これでも全力ですううううっ!」


四人の叫び声が、街道に響き渡った。


せっかく新装備を整えたというのに、最初にやることが魔物からの逃走とは。


これぞ、金満腹である。


ラウラは走りながら、ふと考えた。


(七色ブーツのおかげで、すごく速く走れます……!)


(ギルティさん、ありがとうございます……!)


(でも……!)


後ろから、ホーンブルの荒々しい足音が迫ってくる。


(できれば、走るためじゃなくて、普通に歩くために使いたかったですううううっ!)


果たして、金満腹は無事にブングルへ帰り着くことができるのか。


そして、新装備はダンジョン攻略で活躍するのか。


それとも、またしても逃走劇に使われてしまうのか。


――それは、まだ誰にも分からない。


金満腹の新たな冒険は、始まったばかりだった。

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