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【ハズレ職】素材採取士の私。お金のために採取していたら世界最強になりました  作者: きらっち


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5話 ゴブリンに出会いました



 金貨二十七枚。


 それは、私が今まで見たこともない大金だった。


「……二百七十万円」


 家も買える。


 おいしいものも食べられる。


 暖かいお風呂にも入れる。


 柔らかいベッドだって買える。


「……えへへ」


 考えるだけで幸せになる。


 でも。


「もっとお金を増やしたい」


 せっかく素材採集士になったんだから。


 もっと採取して。


 もっと稼いで。


 いつか、働かなくてもいいくらいのお金を貯めたい。


 そのためには――


「採取の道具が必要です」


 私は町の鍛冶屋へ向かった。


     


「いらっしゃい」


 店の奥から、がっしりした男性が顔を出す。


 壁には剣や斧、農具などが並んでいる。


 私は店内を見回した。


「採取に使う道具を探しているんですが……」


「採取?」


「はい。素材採集士です」


「ああ」


 鍛冶屋の主人は私を見る。


「じゃあ、こっちだな」


 案内された先には、採掘用の道具が並んでいた。


 大きなハンマー。


 大きなピッケル。


 そして。


「……これ、かわいい」


 私は小さなハンマーを手に取った。


 もう一つ。


 小さなピッケル。


「これにします」


「お嬢ちゃん、それでいいのか?」


「はい」


「その大きさじゃ、鉄鉱石くらいしかまともに取れんぞ」


「鉄鉱石……」


 私は少し考える。


 鉄鉱石。


 素材図鑑にも載っていた。


「それでも大丈夫です」


 今の私には、まだ十分だ。


「採取できるなら、買います」


「そうかい」


 主人が苦笑する。


「まあ、素材採集士なら使いやすい道具のほうがいいか」


「ありがとうございます」


 私は小さなハンマーとピッケルを購入した。


「合わせて銀貨三枚だ」


「はい」


 私は袋から銀貨を取り出す。


「……お金を使うの、ちょっと怖いなぁ」


 でも。


 これは必要な出費。


 もっとお金を稼ぐための投資なのだ。


「よし」


 私は道具をバッグに入れた。


     


 次に向かったのは、本屋だった。


「素材図鑑……」


 私は棚を探す。


 植物編。


 魔物素材編。


 そして――


「ありました」


 『素材図鑑 鉱石編』


「これください」


 お金を払って本を受け取る。


 これで鉱石について勉強できる。


「鉄鉱石は……」


 私は本を開きながら歩く。


「採取しやすい場所は……」


 鉱山。


 岩場。


 山。


「なるほど……」


 知らない素材を知るのは楽しい。


 もっと珍しい鉱石も見つけてみたい。


 そう思いながら歩いていると――


「……あれ?」


 私は立ち止まった。


「重い……」


 バッグが重い。


 昨日まではそこまで気にならなかった。


 でも今日は。


 小さなハンマー。


 小さなピッケル。


 素材図鑑。


 採取用の道具。


 さらに薬草を入れる袋。


「……持てるけど」


 ずっしり。


「重いです……」


 このまま採取に行ったら、もっと素材が増える。


 そうなったら。


「持って帰れない……」


 私は困った。


 そこで。


 以前、店先で見かけた道具を思い出した。


「魔法袋……」


 たしか。


 中にたくさん物を入れられる魔法道具。


「見に行ってみよう」


 私は魔法道具屋へ向かった。


     


「いらっしゃいませ」


 店内には不思議な道具がたくさん並んでいる。


 光る石。


 魔力で動く時計。


 温度を保つ箱。


 そして。


「あ……」


 壁に掛けられていた袋。


 札には。


《魔法袋》


金貨十枚


「…………」


 私は固まった。


「金貨十枚……」


 今の私の財産は、金貨二十七枚。


 つまり。


 これ一つで三分の一以上なくなる。


「高い……」


 私は袋を見る。


 そして自分の重たいバッグを見る。


「でも……」


 これがあれば。


 採取した素材をたくさん入れられる。


 荷物も軽くなる。


「……」


 悩む。


 すごく悩む。


「十枚……」


 でも。


 私はふと思った。


 お金を入れる袋と。


 道具や素材を入れる袋。


「……二つあったほうがいいかも」


 お金と素材を一緒にするのは、なんとなく怖い。


「……二つください」


「二つですか?」


 店員さんが目を丸くする。


「はい」


 私は金貨を十枚ずつ取り出した。


「ありがとうございます」


 こうして私は――


 魔法袋を二つ買った。


 一つはお金保存用。


 もう一つは道具と素材用。


「……金貨が七枚になっちゃった」


 ちょっと不安になる。


 でも。


「また採ればいいよね」


 私は新しい魔法袋を抱える。


 今度は。


「軽い……!」


 さっきまで重かったバッグが、嘘みたいに軽い。


「すごい……」


 私は嬉しくなった。


「これならいっぱい採れます!」


     


 私はそのまま冒険者ギルドへ向かった。


「こんにちは」


「ラウラさん?」


 受付嬢がこちらを見る。


「今日はどうしました?」


「鉱石の採取依頼を受けたいです」


「鉱石ですか?」


「はい」


 私は買ったばかりのピッケルを見せる。


「鉄鉱石を採ってみたいんです」


「なるほど」


 受付嬢が依頼書を探す。


「ちょうど初心者向けのものがありますよ」


 依頼内容は――


鉄鉱石を十個採取。


 報酬は銀貨数枚。


「これにします」


「分かりました」


 私は依頼書を受け取る。


「頑張ってくださいね」


「はい!」


 新しい道具。


 新しい図鑑。


 新しい魔法袋。


 準備は万端。


「行ってきます!」


 私は意気揚々と町を出た。


     


 目的地は町から少し離れた岩場。


 鉱石が採れる場所らしい。


「鉄鉱石……」


 私は図鑑を開きながら歩く。


「見つけられるかなぁ」


 《素材採取》があれば大丈夫。


 きっと。


 たぶん。


 ……そう思っていた。


 そのとき。


「……?」


 前方から。


 何かが出てきた。


 緑色の肌。


 小さな体。


 手には粗末な武器。


「……」


 私は固まった。


「…………」


 相手も私を見る。


 そして。


「ギャッ!」


「ひゃあああああっ!?」


 ゴブリン。


 魔物。


 私は一瞬で理解した。


「む、無理です!」


 私は踵を返した。


「採取どころじゃないです!」


 全力で走る。


「怖い怖い怖い!」


 後ろからゴブリンの声が聞こえる。


「来ないでくださいぃぃぃ!」


 走る。


 走る。


 走る。


 町まで全力。


 息が苦しい。


 足が痛い。


 それでも走る。


 やがてゴブリンの気配が遠ざかる。


「……はぁ……」


 私は立ち止まった。


「……はぁ……はぁ……」


 膝に手をつく。


「怖かった……」


 しばらく息を整える。


 そして。


 私は目的地の方向を見る。


「……」


 鉄鉱石。


 まだ採っていない。


「……ちゃんと鉱石、採れるかな?」


 私は小さなピッケルを握りしめる。


 ゴブリンから逃げただけなのに。


 もう、くたくただった。


 果たして私は――


 無事に鉄鉱石を採ることができるのだろうか。

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