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【ハズレ職】素材採取士の私。お金のために採取していたら世界最強になりました  作者: きらっち


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4話 ハイオークを解体したら、とんでもない素材が出てきました



 ハイオークの騒ぎが少し落ち着いた頃。


 私はギルドの建物から外へ出ようとしていた。


「……疲れた」


 今日は本当にいろいろあった。


 薬草をいっぱい採って。


 魔物を見て。


 怖くなって。


 ポーションを作って。


 なぜか英雄と呼ばれて。


 そして――


「薬草のお金……」


 結局、まだもらっていない。


 私は少しだけしょんぼりする。


「……あとで聞いてみよう」


 そう思いながら歩いていると。


「あ」


 ふと、町の入口に倒れているハイオークが目に入った。


「……そういえば」


 私は足を止める。


 ハイオーク。


 Bランクの魔物。


 さっきまで怖くて近寄れなかった。


 でも、今はすでに倒されている。


「……素材」


 私は素材図鑑を思い出す。


 ハイオークからは、いろいろな素材が取れる。


 牙。


 皮。


 肉。


 骨。


 魔石。


 その他にも、希少な素材が取れる場合がある。


「……」


 私はじっとハイオークを見る。


「素材採集士なんだから」


 少しくらい、見てみてもいいよね。


 そんな気持ちになった。


 私は恐る恐る、ハイオークのところへ近づいていく。


     


「よいしょ……」


 ハイオークの周囲では、数人の解体師が作業をしていた。


 大きなナイフ。


 解体用の道具。


 素材を入れるための木箱。


 手際よく皮を剥ぎ、肉を切り分けている。


「……すごい」


 私は少し離れたところから見ていた。


 魔物を倒す冒険者もすごいけど。


 こういう仕事もすごい。


 どこを切ればいいのか。


 どうすれば素材を傷つけずに取り出せるのか。


「……私もできるようになったらいいな」


 素材採集士なのだから。


 採るだけじゃなくて。


 解体もできたら、もっと便利そう。


 そんなことを考えていると。


「お?」


 大きな声がした。


「お前さん、さっきの英雄ちゃんじゃないか」


「……え?」


 振り向く。


 大きな体をした中年の男性が、こちらを見ていた。


 短く刈った茶色の髪。


 太い腕。


 腰には何本もの解体用ナイフ。


「英雄ちゃん?」


 私は首を傾げる。


「ほら、さっきの薬草の嬢ちゃんだろ?」


「あ……」


 この人も知っているらしい。


「はい。ラウラと申します」


「俺はマルゴ。解体師だ」


 マルゴさんは豪快に笑う。


「それで? 解体にも興味があるのかい?」


「はい」


 私は少しだけ頷く。


「素材採集士なので……解体もできたらいいなと思って」


「なるほどな」


 マルゴさんはニヤッと笑った。


「なら、見ていくかい?」


「いいんですか?」


「ああ。邪魔さえしなけりゃな」


「ありがとうございます」


 私は少し離れたところに立った。


 マルゴさんたちの解体作業を見学する。


 ナイフを入れる場所。


 皮の剥ぎ方。


 骨を避ける方法。


 魔石の位置。


「……勉強になる」


 私は真剣に見つめる。


 そして。


 何となく。


 自分のスキルを使ってみた。


「……《素材採取》」


 その瞬間。


「……え?」


 頭の中に、大量の情報が流れ込んできた。


 ハイオークの身体。


 皮。


 肉。


 骨。


 牙。


 魔石。


 そして――


 いくつもの場所が光っている。


「……?」


 私は目を瞬く。


 普通の素材とは違う。


 身体の中に、いくつも反応する場所がある。


「……いっぱいある」


 それぞれに名前が表示される。


《ハイオークの魔石》


《ハイオークの上質皮》


《ハイオークの牙》


《強化筋繊維》


《魔力脂》


《希少血晶》


「……」


 私は目を丸くした。


 そして。


 頭の中に、ある考えが浮かぶ。


「……これ」


 売れるかも。


 私は反射的に自分のバッグを開けた。


 中に入っているのは――


 いつも持ち歩いている小さなナイフ。



 勝手に家から持ってきた、安いナイフだ。


「えっと……」


 値段は。


 銅貨一枚。


 つまり百円。


 私はナイフを取り出す。


「……私にも、少しやらせていただけませんか?」


「ん?」


 マルゴさんが振り返る。


「解体をか?」


「はい」


「おいおい、大丈夫か?」


「たぶん……」


 私はハイオークを見る。


 さっきまで怖かった。


 でも。


 今は死んでいる。


 それに。


 素材が見える。


「少しだけ、やってみたいです」


「まあ、いいけどよ」


 マルゴさんが場所を空けてくれる。


「無理そうならすぐやめろよ」


「はい」


 私はハイオークの前にしゃがむ。


 そして。


 安いナイフを構えた。


「……」


 刃を当てる。


 《素材採取》が示した場所へ。


 すっ。


 ナイフを入れる。


「……え?」


 驚くほど簡単に刃が入った。


「お、おい、ラウラちゃん」


 マルゴさんが慌てた声を出す。


「それ、なんのナイフだい?」


「え?」


 私はナイフを見る。


「あ! これはですね」


 ニコッと笑う。


「家から持ってきた銅貨一枚のナイフですよ」


「……銅貨一枚?」


「はい」


「…………」


 マルゴさんが固まる。


「そんな安物でハイオークを切ってるのか?」


「はい」


 私は気にせず作業を続ける。


 すっ。


 切る。


 すっ。


 さらに切る。


 そして。


「……ありました」


 私は肉の奥から、小さな赤い結晶を取り出した。


「これは……?」


 マルゴさんが覗き込む。


 次の瞬間。


「……は?」


 目を見開いた。


「ちょ、ちょっと待て」


「はい?」


「それ……」


 マルゴさんが結晶を指差す。


「《希少血晶》じゃねえか?」


「そうなんですか?」


「そうなんですかじゃねえ!」


 マルゴさんが叫ぶ。


「ハイオークから取れること自体がほとんどない素材だぞ!」


「……へぇ」


 私はよく分からない。


「そうなんですね」


「そうなんですねじゃない!」


 私は次の反応へ移る。


「えっと……ここですね」


 ナイフを入れる。


 今度は黒っぽい石が出てきた。


「《魔力濃縮核》……?」


「…………」


 マルゴさんの顔が引きつる。


「おい」


「はい?」


「それもか?」


「たぶん」


「たぶんって……」


 さらに。


 上質皮。


 強化筋繊維。


 高純度魔石。


 希少な牙。


 普通なら一体のハイオークからは、そう簡単には取れない素材が。


 次々と出てくる。


「……」


 マルゴさんが完全に黙ってしまった。


「これも……」


 私はまた一つ取り出す。


「これも売れそうですね」


「ラウラちゃん」


「はい?」


「ちょっと待て」


「はい」


「待ってくれ」


「……?」


 マルゴさんが頭を抱える。


「お前さん……何をしてるんだ?」


「解体です」


「いや、そうじゃなくて!」


「?」


 私は首を傾げる。


 マルゴさんが素材を見る。


 そして、もう一度私を見る。


「それ、ハイオークの中でも極稀にしか取れない素材ばかりじゃないか?」


「……そうなんですか?」


「そうなんだよ!」


「でも……」


 私は手の中の素材を見る。


「ほら」


 私はニコッと笑う。


「たまたま採れちゃってますから!」


「たまたま!?」


 マルゴさんの声が町に響いた。


     


 結局。


 私は取り出した素材を、マルゴさんから譲ってもらうことになった。


「いいんですか?」


「ああ」


 マルゴさんは疲れたように笑う。


「俺たちじゃ見つけられなかった素材を、嬢ちゃんが見つけたんだ。持っていきな」


「ありがとうございます!」


 私は素材を袋に詰める。


 ずっしり。


「……重い」


 でも。


「これ、いくらになるのかなぁ」


 私は少しだけワクワクしていた。


 そして。


 そのままギルドへ向かった。


     


「ただいま戻りました」


「ラウラさん!?」


 受付嬢が驚く。


「どうしました?」


「いえ……」


 受付嬢は私の持っている袋を見る。


「その袋……」


「はい」


「何が入っているんですか?」


「ハイオークの素材です」


「……?」


 受付嬢の顔が固まる。


「ハイオークの?」


「はい」


「解体したんですか?」


「少しだけ」


「……少しだけ」


 受付嬢が何とも言えない顔をする。


 私は袋をカウンターへ置いた。


 どさっ。


「これを買い取っていただけますか?」


「もちろんですが……」


 受付嬢が一つずつ取り出していく。


「ハイオークの上質皮」


「はい」


「高純度魔石」


「はい」


「強化筋繊維……」


「はい」


「希少血晶……?」


「はい」


「魔力濃縮核……」


「はい」


 受付嬢の手が止まる。


「……ラウラさん」


「はい?」


「これ、どこで……」


「ハイオークからです」


「そうですよね……」


 受付嬢は深く息を吐いた。


 そして。


「少々お待ちください」


 奥へ走っていった。


 しばらくして。


 何人もの職員が集まってきた。


「これが本物なら……」


「鑑定をお願いします!」


「はい!」


 鑑定が始まる。


 一つ。


 また一つ。


 確認されるたびに、職員たちの顔が変わっていく。


「全部、本物です」


「……」


「しかも品質が高い」


「……」


「この血晶なんて、何年ぶりに見たんだ?」


 私は黙って待っていた。


「……あの」


「はい?」


「お金になりますか?」


 受付嬢が私を見る。


 そして。


 少し震える声で答えた。


「はい」


「……!」


「かなりの金額になります」


 私は嬉しくなった。


「本当ですか?」


「ええ」


 職員が計算を始める。


 銀貨。


 銀貨。


 さらに銀貨。


 そして――


「……合計」


 受付嬢が金額を読み上げる。


「金貨――」


 私はごくりと唾を飲み込んだ。


「二十七枚です」


「…………」


 私は固まった。


 金貨一枚が十万円くらい。


 ということは。


「……二百七十万円?」


「はい」


「…………」


 私の頭の中で。


 昨日、お父さんが言っていた言葉が蘇る。


 ――この家なら、金貨十枚くらいじゃないか?


「……」


 私はゆっくり顔を上げた。


「家、買えますね」


「買えますね……」


 受付嬢も苦笑する。


「というか、二軒買えるくらいです」


「……」


 私は袋を見る。


 さっきまで、ただの魔物の素材だった。


 それが。


 金貨二十七枚。


「……えへへ」


 頬が緩む。


「素材採集士……」


 私は小さく呟いた。


「すごく、お金になるかもしれません」


 こうして。


 ラウラは人生で初めて――


 まとまった大金を手に入れた。


 ただし。


 本人はまだ気づいていなかった。


 今回の金貨二十七枚が。


 素材採集士として見れば――


 まだ序の口だったことに。

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