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【ハズレ職】素材採取士の私。お金のために採取していたら世界最強になりました。10000pv突破  作者: 異世界文庫 きらっち


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42話 人命よりも金貨のため走れメロスです!

中級ダンジョンから地上へ戻った。


 金満腹の三人は、ギルドへ向かって歩いていた。


「…………」


「…………」


「…………」


 しばらく。


 三人とも無言だった。


 やがて。


 ダリアが口を開く。


「ねぇねぇ」


「はい?」


「リッチロードのこと」


「…………」


「ギルドに報告するのか?」


「…………」


 ラウラとギルティが顔を見合わせる。


 リッチロード。


 普通なら。


 絶対に報告するべき魔物だ。


 あんな化物が中級ダンジョンにいた。


 しかも。


 隠し通路の先に。


「……報告したら」


 ラウラが考える。


「どうなるんでしょう?」


「調査隊が入るんじゃない?」


 ギルティが答える。


「そして、しばらくダンジョンが封鎖されるかもしれないのだ」


「…………」


 ラウラは考えた。


 せっかく中級ダンジョンに入れるようになった。


 素材もこれから探したい。


 それに。


「……面倒ですね」


「うむ」


「面倒だね」


 三人の意見が一致した。


「じゃあ」


 ラウラが頷く。


「リッチロードのことは……」


「言わないのだ」


「黙っておこう」


「はい!」


 こうして。


 金満腹は、リッチロードの存在をギルドに報告しないことにした。


 なお。


 リッチロードの魔法布だけは、しっかり持ってきている。


 素材は別腹である。


     


「おかえりなさい!」


 ギルドへ入ると、受付嬢が声をかけてきた。


「中級ダンジョンの攻略はどうでしたか?」


「無事に終わりました!」


 ラウラが答える。


「最終階層まで確認して、転移魔法陣で戻ってきました」


「それはお疲れ様でした!」


 受付嬢が手続きを進める。


「では、攻略完了として記録しておきますね」


「お願いします」


「次からは、別の中級ダンジョンにも挑戦できますよ」


「別のダンジョン?」


 ラウラが首を傾げる。


「はい」


 受付嬢が説明する。


「中級ダンジョンは、場所によって特色が違うんです」


「特色?」


「はい。魔物素材に特化したダンジョン」


「おお……」


「鉱石に特化したダンジョン」


「おおお……!」


「薬草や植物素材に特化したダンジョン」


「おおおお……!」


「その他、珍しい素材が多く採れるダンジョンなどもあります」


「…………」


 ラウラの目が輝いていた。


「全部行きたいです」


「即答なのだ」


 ダリアが笑う。


「ラウラちゃんらしいね」


 ギルティも苦笑する。


「どれから行く?」


「うーん……」


 ラウラが腕を組む。


 魔物素材。


 鉱石。


 薬草。


 その他素材。


「…………」


 どれも魅力的だ。


「悩みますね」


 ラウラが唸る。


 その時だった。


「あ」


「どうしたのだ?」


「そうだ」


 ラウラが突然、青ざめる。


「カーム伯爵との約束、忘れてました」


「…………」


「…………」


「…………」


 ダリアとギルティも。


 同時に。


「…………あ」


「…………あ」


 二人の顔が固まった。


 炎王鉱石。


 マグマドラゴンの結晶。


 そして。


 金貨六百枚。


「まずい」


 ギルティが呟く。


「まずいのだ」


 ダリアも頷く。


「すっごくまずいです!」


 ラウラが叫ぶ。


「まずはカーム伯爵様のところへ行きましょう!」


「そうするのだ!」


「急ごう!」


 三人は。


 次のダンジョンを決める前に。


 急いでカーム伯爵の屋敷へ向かった。


     


 屋敷へ到着。


 しかし。


「申し訳ありません」


 門番が頭を下げた。


「カーム伯爵様は、現在こちらにはおりません」


「えっ?」


 ラウラが固まる。


「どこへ行ったんですか?」


「隣街のアントンです」


「アントン?」


「はい」


 門番が説明する。


「カーム伯爵様のご友人が住んでいる街なのですが……」


「ですが?」


「魔物が出たそうです」


「…………」


 三人の顔から笑顔が消えた。


「かなり強い魔物らしく」


 門番が続ける。


「伯爵様も救援に向かわれました」


「無事なんですか?」


 ラウラが尋ねる。


「それが……」


 門番が困ったように眉を下げる。


「まだ連絡がありません」


「…………」


「無事に戻ってこられるかどうかも、分からない状況です」


「…………」


 ラウラの顔が。


 どんどん青くなる。


「…………」


「ラウラ?」


 ギルティが声をかける。


「…………」


 ラウラは。


 震えていた。


「どうしたのだ?」


「……金貨」


「?」


「金貨六百枚」


「…………」


「もらってません」


「…………」


 ダリアがハッとする。


「そうなのだ!」


「金貨六百枚!」


「はい!」


 ラウラが両手を握る。


「まだもらってません!」


「これは大変なのだ!」


「そうなんです!」


 ラウラは焦った。


 ものすごく焦った。


 これまで。


 金貨数枚なら諦めることもあった。


 だが。


 六百枚。


 六百。


 金貨。


「六百枚ですよ!?」


「六百枚なのだ!」


「分かったから落ち着いて!」


「落ち着けません!」


 ラウラの頭の中に。


 金貨六百枚が浮かぶ。


 積み上げられた金貨。


 キラキラ輝く金貨。


 まだ受け取っていない金貨。


「カーム伯爵様が無事じゃなかったら……」


 ラウラの顔がさらに青くなる。


「六百枚の損失です……!」


「大変なのだ!」


 ダリアが拳を握る。


「助けに行くのだ!」


「はい!」


「金がもらえないのだ!」


「はい!」


 ギルティが頭を抱えた。


「二人とも……」


「何ですか?」


「金貨のことを『カネ』って言わないでよ……」


「「はい!」」


 金満腹は。


 全力でアントンへ向かうことになった。


     


「アントンまでは馬車で三日ほどです」


 門番から道を聞く。


「三日……」


 ラウラが呟く。


 そして。


 自分の足を見る。


 精霊兎靴。


 現在の速さ。


 60。


 ダリアは58。


 ギルティは55。


「…………」


 ラウラがニヤリとした。


「馬車で三日ですよね?」


「はい」


「でも」


 ラウラは二人を見る。


「私たちが走れば」


「……?」


「今日中に着きますよね?」


「…………」


 ダリアが固まる。


「走るのだ?」


「はい!」


 ギルティも目を丸くする。


「いやいや」


「走ろう」


「ちょっと待って!」


 ギルティが慌てる。


「アントンまで三日だよ!?」


「だから走れば今日中です!」


「距離の問題じゃないでしょ!」


「大丈夫です!」


 ラウラは拳を握る。


「走りましょう!」


「…………」


 そして。


 ラウラは前世の記憶を思い出した。


 走る。


 友のため。


 約束のため。


 命をかけて。


「そうだ……」


 ラウラが呟く。


「前世で培った……」


 拳を握る。


「メロスのように!」


「…………」


「…………」


 ダリアとギルティが。


 無言でラウラを見る。


 そしてラウラは。


「いきますよ! ダリアさん! ギルティさん!」


 ビシッ!


「走れメロスです!」


「は?」


「走るの?」


 二人の声が重なる。


「はい!」


「…………」


「…………」


「…………」


 誰も。


 メロスには触れなかった。


 それよりも。


 隣街まで走って行くというラウラの発想の方が。


 二人には信じられなかった。


「ラウラ」


 ギルティが慎重に尋ねる。


「本当に走るの?」


「はい!」


「三日分の距離だよ?」


「今日中に着きます!」


「休憩は?」


「必要ありません!」


「食事は?」


「走りながら食べます!」


「水は?」


「飲みながら走ります!」


「…………」


 ギルティがダリアを見る。


 ダリアも。


「…………」


 ラウラを見る。


 そして。


 ラウラが真剣な顔で言った。


「みなさん!」


「?」


「いいですか!」


 三人が向き合う。


「カーム伯爵様がお亡くなりになれば!」


「…………」


「金貨六百枚の損失です!」


「…………」


「これは私たちにとって!」


 ラウラは拳を握る。


「ものすっーーーごく大事なことです!」


「…………」


 ダリアが少し考える。


 腕を組む。


 そして。


「……その通りなのだ!」


 バッ!


 親指を立てた。


「行くのだ!」


「ダリアちゃん!?」


「金貨六百枚を守るためなのだ!」


「そうです!」


「ラウラちゃん、そこまで金貨が大事なの?」


「大事です!」


 ラウラは即答した。


 ギルティは。


「…………」


 しばらく空を見上げた。


「……分かった」


「ギルティさん!」


「ただし」


 ギルティが指を立てる。


「無茶しすぎないこと」


「はい!」


「魔物が出たら?」


「逃げます!」


「即答だね……」


「それがラウラです!」


 ギルティはため息をついた。


「……仕方ないか」


 こうして。


 金満腹は。


 中級ダンジョン攻略を一旦中断。


 次の目的地を。


 アントンへと変更した。


 目的は一つ。


「カーム伯爵様を助ける!」


 ダリアが叫ぶ。


「金貨六百枚を受け取る!」


 ラウラも叫ぶ。


「……そこは『助ける』だけじゃないの?」


 ギルティが呆れる。


「もちろん助けます!」


 ラウラは笑顔で答えた。


「助けた上で、金貨六百枚をもらいます!」


「…………」


 ギルティは。


 もう何も言わなかった。


「よーし!」


 ラウラが前を向く。


「行きましょう!」


「行くのだ!」


「……本当に走るんだよね?」


「はい!」


 三人は。


 アントンへ向かって。


 一斉に走り出した。


 馬車なら三日。


 しかし。


 金満腹なら。


「今日中に着きます!」


 金貨六百枚を求めて。


 三人の超高速移動が始まった。

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