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【ハズレ職】素材採取士の私。お金のために採取していたら世界最強になりました  作者: きらっち


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40話 もこみちスタイルですべったので知らないふりをしました。

中級ダンジョン。


 その入口に、金満腹の三人は立っていた。


「ここが……中級ダンジョン」


 ラウラは入口を見上げる。


 ギルドから聞いた話では。


 ここは中級ダンジョンの、いわば登竜門。


 まず、このダンジョンを攻略しなければ、他の中級ダンジョンへ行く許可は出ないらしい。


「登竜門……」


 ダリアが腕を組む。


「つまり、ここを突破すれば、さらに上のダンジョンへ行けるということだね!」


「はい」


 ギルティが頷く。


「そして、もっといい素材がある」


「!」


 ラウラの目が輝いた。


「行きましょう!」


 三人は入口へ入った。


     


 中に入ると。


「…………」


「…………」


「…………」


 三人が無言になった。


 そこは。


 まるで巨大な下水道のような場所だった。


 じめじめした石造りの通路。


 壁には黒い水が流れている。


 足元にも、何かよく分からない液体が溜まっている。


 そして。


「…………うっ」


 強烈な臭い。


「うえっ……」


 ラウラが鼻を押さえる。


「うぇぇ……」


 ダリアも顔をしかめる。


「これは……」


 ギルティも鼻をつまんだ。


「ひどい臭いだね……」


「下水道みたいなのだ……」


「本当にそうですね……」


 三人は口元を押さえながら進んでいく。


 しばらくすると。


 ダリアが懐から何かを取り出した。


「そういえば!」


 シュッ。


 小さな瓶のようなもの。


「これはだね!」


 ダリアが説明する。


「聖水スプレーなのだ!」


「聖水スプレー?」


 ラウラが見る。


「このスプレーには、聖水が入っておるのだよ!」


 ダリアは得意そうに胸を張る。


「これをシュッとアンデッドにかけると、消えてゆくはずなのだ!」


「おお……」


 ラウラが感心する。


 すると。


 ギルティも気持ち悪そうに説明を付け加えた。


「逃げながらでも使えるようにしてあるよ」


「逃げながら?」


「うん」


 ギルティがスプレーの先を見せる。


「遠距離噴射もできるようにしてあるからね」


「なるほど」


 ラウラは頷いた。


「便利ですね」


 そして。


 ラウラはスプレーを受け取ると。


「ふーん」


 自分の腕に向けて。


「シュッ」


「…………」


「…………」


「…………」


 ダリアとギルティが固まった。


 ラウラは腕を見ながら。


「…………」


 そして。


 グッドサイン。


「これで噛まれてもゾンビになりませんね!」


 キラキラした目。


「…………」


 ダリアが苦笑する。


「ちみ……」


「はい?」


「そういう使い方ではないのだよ」


「え?」


 ギルティも苦笑した。


「まぁ……気持ちは分かるけど」


「便利ですね!」


「便利ではあるけどね……」


     


 しばらく進む。


 ダリアが歩きながら話し始めた。


「ちなみに、ちみたち」


「はい?」


「アンデッドからドロップされる素材は、これといって金にはならないのだ」


「そうなんですか?」


「うむ」


 ダリアは頷く。


「だが!」


 突然、声が大きくなる。


「しかしだね!」


「?」


「錬金術師にとっては!」


 ビシッと指を立てる。


「宝の宝庫なのだよ!」


「宝の……?」


「宝庫!」


 ダリアは嬉しそうだった。


「アンデッド系の魔物からしか取れない素材は、錬金術で使えるものが多いのだ!」


「なるほど」


「だから!」


 ダリアは鼻をつまみながら。


「見つけたら、できるだけ倒しておきたいと思っておる!」


「じゃあ、素材採取ですね!」


「そうなのだ!」


「お金にはならないけど?」


「研究にはなる!」


「なるほど!」


 三人は臭いに耐えながら歩いていく。


「でも、これだけ臭いと……」


 ギルティが呟く。


「鍛冶屋の煙のほうがまだマシだね」


「ダリアさんは平気なんですか?」


「平気ではない」


「ですよね」


「あちしは今すぐ帰りたい」


「……」


「でも素材は欲しい」


「そこは同じですね」


「金満腹なのだ!」


 三人は笑いながら進んでいく。


     


「うふっ」


「…………」


 三人の足が止まった。


「今……」


 ラウラが振り返る。


「何か聞こえませんでした?」


「……聞こえた」


 ギルティが小声で答える。


「うふっ……」


 また聞こえた。


「…………」


「…………」


「…………」


 三人は恐る恐る振り向く。


 そこには。


 ぼろぼろの服。


 腐った肌。


 白く濁った目。


 そして。


 ゆっくりと歩いてくる人影。


「ぞ……」


 ラウラの顔が青くなる。


「ぞ!」


 ダリアも震える。


「ぞ……」


 ギルティが後ずさる。


「ゾンビーーーー!!」


「ぎゃーーーー!!」


「うぉーーーー!!」


「ぴゃーーーー!!」


 三人は一斉に走り出した。


 全力で。


 ひたすら走る。


「来るのだぁぁぁ!」


「嫌ですぅぅぅ!」


「こっち来ないでぇぇぇ!」


 そして。


 しばらく走って。


「はぁ……」


「はぁ……」


「はぁ……」


 三人は立ち止まった。


 振り返る。


 ゾンビの姿はない。


「……あれ?」


 ラウラが首を傾げる。


「ゾンビ……」


「……」


「遅くないですか?」


 ダリアも振り返る。


「確かに」


「歩くの遅くね?」


 ギルティが真顔になる。


「めちゃくちゃ遅かったね」


 三人は顔を見合わせる。


「…………」


「…………」


「…………」


 ラウラが。


 ゆっくりゾンビのほうへ戻っていく。


「ラウラちゃん?」


「ちょっと試してみます」


 ラウラはスプレーを構える。


 ゾンビは。


「うぅ……」


 ゆっくり近づいてくる。


 ラウラは一歩。


 また一歩。


 そして。


「シュッ!」


 聖水を吹きかけた。


 すると。


 ゾンビの体が光り始める。


「…………」


 白い光。


 そして。


 サラサラと光の粒になって。


 消えた。


「…………」


 ラウラは目を丸くする。


「……あれ?」


 そして。


「ゾンビ、弱いかも!」


 にっこり笑った。


「……」


 ギルティが胸を撫で下ろす。


「よ、よかった……」


「なんだ、怖くないのだ!」


 ダリアも少し元気を取り戻す。


 すると。


「そういえば」


 ダリアがギルティを見る。


「ギルティ」


「ん?」


「ちみはゾンビは苦手なのかい?」


「無論だ」


 ギルティは即答した。


「聞くまでもない」


「やっぱりか」


 ダリアは顎に手を当てる。


「逆に……」


 ギルティを見る。


「ちみが得意なものが気になるのだよ……」


「…………」


 ギルティが目を逸らした。


「鍛冶」


「それは知ってる」


「素材加工」


「それも知ってる」


「……」


「他には?」


「ない」


「ないのかい!」


     


「ダリアさん!」


 少し先でラウラの声がした。


「これ見てください!」


「ん?」


 ラウラが何かを持って戻ってくる。


「これは……」


 白っぽい灰。


「聖者の灰」


「…………」


 ダリアの目が変わった。


「こ……」


 近づく。


「こ……」


 さらに近づく。


「ここここここ!!」


 両手を広げる。


「これは聖者の灰ではないかぁぁぁ!!」


「そんなに!?」


 ラウラがびっくりする。


「これはゴーストにも効くぅ!」


 ダリアのテンションが上がる。


「これでゴースト対策もできよう!」


「ゴースト……」


 ラウラの顔が少し青くなる。


「幽霊ですか……」


「そう!」


「触れないやつ?」


「そう!」


「嫌ですね……」


「だからこそ!」


 ダリアは聖者の灰を抱える。


「錬金するのだ!」


     


 しかし。


 場所は下水道。


 臭い。


 ものすごく臭い。


「…………」


 ダリアは顔をしかめながら作業を始めた。


「塩結晶と……」


 聖者の灰。


「これを……」


 混ぜる。


 魔力を込める。


「錬金術……」


 光が広がった。


「おお……」


 ラウラが見つめる。


 ギルティも覗き込む。


 そして。


 光が収まると。


 そこには。


 白く輝く粉があった。


「完成なのだ!」


 ダリアはそれを瓶へ入れる。


「これは?」


 ラウラが聞く。


「ゴースト退治用の粉なのだ!」


 ダリアが説明する。


「これをゴーストにまぶせば!」


 ビシッ。


「たちまち成仏するのだ!」


「なるほど……」


 ラウラは粉を見る。


「……」


「どうしたのだ?」


「お寺でもらう粗塩かな?」


「「は?」」


 ダリアとギルティが同時に声を出した。


「だって、塩ですよね?」


「違うのだ!」


「聖者の灰も入ってるよ!」


「なるほど」


 ラウラは頷く。


「じゃあ、かければいいんですね!」


「そうなのだ!」


「もこみちスタイルですね!」


「…………」


「…………」


 ダリアとギルティは。


 完全に停止した。


「もこみち……?」


 ギルティが首を傾げる。


「なんの話なのだ……?」


「…………」


 ラウラも首を傾げた。


「なんでしょう?」


「ちみが言ったのだろう!」


「そうでしたっけ?」


     


 こうして。


 金満腹の装備はさらに増えた。


 片手に。


 聖水スプレー。


 もう片手に。


 ゴースト退治用の粉。


 そして。


 ダリアの腰には。


 メディーガン。


「よし!」


 ラウラが気合を入れる。


「先へ進みましょう!」


「うむ!」


「今度は何が出るかな」


 三人は顔を見合わせる。


 臭い下水道のようなダンジョン。


 その奥には。


 まだ見たことのないアンデッドたちが待っている。


 そして。


 それらが落とす素材は。


 錬金術師にとっては宝の山。


「素材!」


「研究!」


「お金!」


「「「行くぞー!」」」


 金満腹は


 聖水スプレーと粉を片手に。


 さらにダンジョンの奥へと進んでいった。

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