39話 新しい武器と新しいスプレーで中級ダンジョン攻略します
ギルティの鍛冶屋。
三人は、作業台の前に集まっていた。
「……あの」
ラウラが、ぽつりと言った。
「ん?」
ダリアが振り向く。
「どうしたの?」
ギルティも顔を上げる。
ラウラは少しだけ考えてから。
「ラウラたち……」
三人を見た。
「家、欲しくないですか?」
「家?」
「はい」
ラウラは頷いた。
「今は宿屋ですけど……」
少し考える。
「いつまでも宿屋というのも、ちょっと不便ですよね」
「確かにな」
ギルティが頷く。
ダリアも腕を組む。
「研究する場所も欲しいのだ」
「そうなんです」
ラウラの目が輝いた。
「だから!」
立ち上がる。
「庭付きの家が欲しいです!」
「庭付き?」
「はい!」
ラウラは指を一本立てる。
「まず!」
「うん」
「ダリアさんの研究所!」
「おお!」
ダリアの目が輝く。
「そして!」
二本目。
「ギルティちゃんの鍛冶室!」
「それは欲しい!」
ギルティも乗ってくる。
「さらに!」
三本目。
「ラウラのお金保管室!」
「…………」
「…………」
ダリアとギルティが固まった。
「お金保管室?」
「はい!」
ラウラは真剣だった。
「大事ですよ?」
「いや、まぁ……」
ギルティが苦笑する。
「ラウラちゃんらしいけど」
「金満腹の家なのだな!」
ダリアが両手を広げる。
「研究所!」
「鍛冶室!」
「お金保管室!」
「そして庭!」
三人で顔を見合わせる。
「いい!」
ギルティが頷いた。
「賛成!」
ダリアも笑う。
「あちしも大賛成なのだ!」
ラウラも笑った。
「じゃあ、目標を決めましょう!」
ラウラが紙を取り出す。
「お金をもっと集めて!」
書く。
「住みやすい家を買う!」
「いいね」
「金満腹の本拠地なのだ!」
「はい!」
三人の新しい目標が決まった。
――庭付きの大きな家。
ダリアの研究所。
ギルティの鍛冶室。
そして。
ラウラのお金保管室。
「絶対に作りましょう!」
「うん!」
「なのだ!」
三人は拳を合わせた。
その日の夜。
宿屋の部屋。
「……」
ラウラ。
「……」
ダリア。
「……」
ギルティ。
三人は机を囲んでいた。
そして。
机の上には。
大量の金貨。
「…………」
「…………」
「…………」
金貨3000枚。
先ほど売却した素材の代金。
「これ……」
ダリアが呟く。
「三人で分けるのだな」
「はい」
ラウラは頷く。
「一人1000枚です」
「1000枚……」
ギルティが目を丸くする。
「すごいな……」
「ふふ」
ラウラは金貨を数える。
一枚。
二枚。
三枚。
十枚。
百枚。
そして。
「1000枚」
ラウラの前に積み上げる。
「ダリアさん」
「うむ!」
「1000枚」
「おお!」
「ギルティちゃん」
「うん」
「1000枚」
「……本当に1000枚ある」
三人は顔を見合わせた。
「…………」
「…………」
「…………」
そして。
「ふふ」
「ふふふ」
「ははは」
三人とも笑った。
こうして。
金満腹の三人は。
こっそりと。
金貨3000枚を。
1000枚ずつ分けた。
誰にも言わず。
自分たちだけの財産として。
大切に保管する。
「家……」
ラウラが呟く。
「欲しいですね」
「うん」
「欲しいのだ!」
その夜。
三人は新しい夢を見ながら眠った。
数日後。
ギルティがいた鍛冶屋。
その中で。
「完成したよ!」
ギルティが声を上げた。
「!」
ラウラとダリアが振り返る。
ギルティの前には。
新しくなった鍛冶道具が並んでいた。
「これが……」
ギルティはハンマーを持ち上げる。
「アップグレードした鍛冶道具」
「おお……」
ダリアが覗き込む。
「すごそうなのだ」
「うん」
ギルティは嬉しそうに笑った。
「マグマドラゴンの素材や炎王鉱石を使って、全部強化した」
ハンマー。
ヤットコ。
金床。
炉。
そして。
細かな加工器具。
「これなら」
ギルティはハンマーを握る。
「どんな素材でも問題なく加工できる」
「本当ですか?」
「うん」
ギルティは頷いた。
「今までなら硬すぎたり、魔力が強すぎたりして難しかった素材でも」
ハンマーを軽く振る。
「これなら大丈夫」
「すごいのだ!」
「それなら、もっとすごい装備が作れそうですね!」
「もちろん」
ギルティは笑った。
「そして」
ギルティが後ろを向く。
「この道具で最初に作った武器がある」
「!」
ラウラとダリアが身を乗り出す。
「もしかして?」
「そう」
ギルティは布をかけた台を指差した。
「これ」
布を取る。
「じゃーん!」
そこにあったのは。
小さな武器。
拳銃のような形。
丸みを帯びた可愛らしい本体。
持ち手には。
紫とオレンジの石蟻宝石。
さらに。
小さな星と花の装飾。
「その名も!」
ギルティが胸を張る。
「メディーガン!」
「かわいい!!」
「かわいいのだぁぁぁ!!」
ラウラとダリアが同時に叫んだ。
「えへへ」
ギルティも嬉しそうだ。
「見た目にもこだわってみた」
「すごく可愛いです!」
「武器なのに可愛いのだ!」
「でも、ちゃんと武器だよ」
ギルティがメディーガンを持ち上げる。
「まず、ここ」
本体の横にある小さな蓋を開ける。
「ここから液体を入れる」
「ほうほう」
ダリアが顔を近づける。
「そして」
ギルティが人差し指を小さなボタンへ置く。
「ここを人さし指で押す」
カチッ。
「すると――」
シュッ!
細い液体が飛び出した。
「おおおおお!」
「すごいのだ!」
「液体を飛ばせる」
ギルティは説明を続ける。
「ただし、ロックがかかっていると液体は出ない」
小さなレバーを見せる。
「だから使う前にロックを確認してね」
「なるほど……」
ラウラが頷く。
「安全装置ですね」
「そう」
そして。
ギルティが宝石部分を指差す。
「このオレンジの宝石」
「はい」
「こっちは麻痺用」
「!」
ダリアの目が輝いた。
「麻痺なのか!?」
「うん」
次に紫。
「こっちは毒用」
「…………」
ダリアが。
ゆっくり紫の宝石を見る。
「毒……」
「うん」
「麻痺……」
「うん」
「最高ではないか!」
「気に入ったのだ!」
ダリアはメディーガンを両手で持つ。
「これは素晴らしい!」
「両手で使ってもいいよ」
ギルティが笑う。
「右手に毒!」
「左手に麻痺!」
「そう!」
「最高なのだぁぁぁ!!」
ダリアが大喜びしている。
ラウラも笑う。
「これなら、遠くから使えますね」
「そうだね」
「逃げながらでも……」
「使える」
「……」
ラウラの目が輝いた。
「素晴らしい武器です!」
ギルティは笑った。
「ラウラちゃん用でもあるからね」
「ありがとうございます!」
そして。
金満腹は。
次の目標へ向かうことになった。
「ダンジョン!」
ダリアが叫ぶ。
「はい!」
「新しい素材!」
「お金!」
「家!」
「なのだ!」
三人は。
再びダンジョン攻略へ乗り出した。
まずは。
初級ダンジョン。
「ここからですね」
「うむ」
「行こう!」
三人は入っていく。
そして。
――数時間後。
「クリアなのだ!」
「次!」
「次です!」
別の初級ダンジョン。
「クリア!」
さらに。
「次!」
また別の初級ダンジョン。
「クリア!」
さらに。
「次なのだ!」
次々と攻略していく。
初級ダンジョン。
一つ。
二つ。
三つ。
四つ。
五つ。
六つ。
そして。
「七つ目!」
最後の初級ダンジョンも。
「クリア!」
あっさり攻略した。
「……」
ギルティが呆然とする。
「早すぎない?」
「そうですか?」
ラウラは首を傾げる。
「素材も採れましたし」
「それもそうだけど……」
採取した素材は。
レア素材を除いて。
ほとんど売却。
「金貨になったのだ!」
「はい!」
ラウラは嬉しそうに笑う。
「家に近づきましたね!」
「なのだ!」
数日後。
ギルド。
「初級ダンジョンを七つ攻略……」
受付嬢が記録を見る。
「問題ありません」
そして。
「中級ダンジョンへの許可を出します」
「!」
三人の目が輝く。
「中級!」
「さらにいい素材が出るらしいです!」
「金になるのだ!」
「ただし」
受付嬢が少し真剣な顔になる。
「注意してください」
「?」
「中級からは、出てくる魔物がかなり強くなります」
「なるほど」
「それと……」
受付嬢が続ける。
「アンデッド系の魔物も出ます」
「…………」
ダリアの笑顔が消えた。
「アンデッド?」
「はい」
「ゾンビとか?」
「そういう魔物もいます」
「…………」
ダリアがラウラを見る。
ラウラもダリアを見る。
そして。
「聖水……」
「必要なのだ」
ギルティも頷く。
「準備したほうがいいね」
その日の宿屋。
ダリアは机いっぱいに材料を並べていた。
「聖水を作るのだ!」
《薬物生成》Lv3。
光草を使う。
魔力を込める。
「これも!」
瓶に入れる。
「まだまだ!」
次々と聖水を作っていく。
一方。
ギルティは。
「聖水を飛ばすなら……」
別の作業をしていた。
「これなら使いやすい」
聖水を入れて。
シュッと噴射できる。
「聖水スプレー!」
「便利そうです!」
「アンデッド相手なら役に立つはず」
「これを両手に持てば……」
ダリアが嬉しそうに呟く。
「アンデッドがいっぱい出ても大丈夫なのだ!」
そして。
その横では。
「…………」
ラウラ。
「…………」
何かをしている。
「ラウラ?」
「はい?」
「何してるのだ?」
「お金を数えています」
「…………」
ラウラの前には。
金貨。
金貨。
金貨。
そして。
金貨。
「家を買うためのお金です」
「また数えてるのか……」
ギルティが苦笑する。
「大事なんです」
ラウラは真剣だった。
「家にはお金保管室が必要なので」
「そこは絶対に譲らないんだね」
「はい!」
そして。
三日後。
金満腹の三人は。
中級ダンジョンの入口に立っていた。
ラウラ。
ダリア。
ギルティ。
三人とも準備万端。
ラウラは採取道具。
ダリアは大量の聖水。
そして。
新武器――
メディーガン。
3人の手は聖水スプレー。
「準備はいい?」
ギルティが聞く。
「はい!」
「完璧なのだ!」
「よし」
三人は中級ダンジョンを見る。
その入口の奥は。
暗い。
そして。
どこからか。
「……うぅ……」
低い声が聞こえた。
「…………」
三人が固まる。
「今の……」
ラウラが呟く。
「アンデッド……?」
ダリアが震える。
「……」
ギルティも少し顔を引きつらせる。
けれど。
三人は顔を見合わせた。
「素材」
「お金」
「家」
そして。
「「「行こう!」」」
金満腹は。
中級ダンジョンへ足を踏み入れた。
新たな素材。
新たなお金。
そして。
大量のアンデッドが待つ場所へ――。
いざ。
中級ダンジョン攻略開始である。




