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【ハズレ職】素材採取士の私。お金のために採取していたら世界最強になりました  作者: きらっち


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35/53

35話 剣を抜いてそっと鞘にしまいました。

ラウラ、ダリア、ギルティの三人は、魔道具屋へ立ち寄った。


 目的は一つ。


「ギルティちゃん用の魔法鞄なのだ!」


「うん。これがあれば、素材をもっと持ち運べる」


「いっぱい入るやつにしましょう!」


 三人は店員に相談し、ギルティ用の魔法鞄を購入した。


 これで準備は整った。


 目的地は――火山。


 炎王鉱石を探すためだ。


「それじゃあ、出発なのだ!」


「はい!」


「うん!」


 三人はブングルの街を出て、火山へ向かった。


 そして数時間。


「……暑い」


 ダリアが呟いた。


「暑いのだ」


「暑いです……」


 三人とも汗をかきながら、火山の斜面を登っていた。


 周囲には赤茶色の岩。


 ところどころから煙が上がり、遠くには赤く燃える溶岩が見える。


 普通なら、こんな場所には近づきたくない。


 しかし。


「……あ」


 ラウラが立ち止まった。


「どうしたのだ?」


「素材があります」


「なに!?」


 ダリアの顔が一瞬で変わった。


 ギルティも振り返る。


「どんな素材?」


「少し待ってください」


 ラウラは《素材感知》を使った。


 すると、周囲の地面が次々と反応する。


「炎石です」


 ラウラは岩の隙間から赤い石を掘り出した。


「炎石……」


 ギルティの目が輝く。


「加工したら、火属性の魔道具に使えそう」


「まだあります」


 ラウラは別の場所へ移動した。


「こっちは紅蓮結晶」


「紅蓮結晶!?」


 ギルティが駆け寄る。


「珍しい素材じゃないか!」


「さらに赤色鉱石」


「それも使える!」


「黒曜石もあります」


「それも!」


 ギルティのテンションがどんどん上がっていく。


「ラウラちゃん! この辺り、全部採っていいの!?」


「もちろんです!」


「やった!」


 ギルティが嬉しそうに鉱石を拾い始めた。


 一方。


「……暑い」


 ダリアは地面に座り込んでいた。


「暑いのだ……」


「ダリアちゃん、素材ありますよ?」


「金になる?」


「なります」


「採るのだ!」


 ダリアは即座に立ち上がった。


 そして三人は素材採取を始めた。


 ラウラは、


「これも売れそうです」


 金になる。


 ダリアは、


「これも薬にできそうだが……売れば金になるのだ!」


 金になる。


 ギルティは、


「これで何を作ろう……! 炎石なら武器にも防具にも使える。紅蓮結晶なら魔力を通したら……!」


 レア素材で何かを作りたい。


 三人とも、素材を見つけた瞬間だけ異様に元気になる。


 そんな三人だった。


 そのとき。


 ガサッ。


「……?」


 ラウラが顔を上げた。


 岩陰から、何かが出てきた。


 赤い鱗。


 大きな口。


 鋭い爪。


 そして、背中から立ち上る熱気。


「魔物です!」


 ラウラはすぐに魔道具図鑑を開いた。


レッドレプティ


 火山に生息する、トカゲの魔物。


 火を吹く。


 危険度――Bランク。


「Bランク……!」


 ラウラとダリアは、ほぼ同時に身構えた。


 そして。


 逃げる準備をした。


「ちみ!」


「はい!」


「逃げるのだ!」


「はい!」


 しかし、そのとき。


 ダリアがギルティを見る。


「……あ」


「どうしたのだ?」


「一番強いのは、ちみだよ! ギルティ!」


「え?」


「やっつけてはくれんか!」


「……」


 ギルティはレッドレプティを見る。


 そして一歩前へ出た。


「おっ?」


「やるのか?」


 ラウラとダリアは期待の目でギルティを見る。


 ギルティは腰の剣に手をかけた。


 そして。


 シュッ。


 剣を抜いた。


「おお……!」


 ラウラが目を輝かせる。


「さすがギルティなのだ!」


 ギルティは剣を構え――


 なぜか。


 鞘に戻した。


「……?」


「ギルティちゃん?」


「…………」


 次の瞬間。


「ぴゃーーーーーーーー!!!!!」


 ギルティが走り出した。


「ええええええ!?」


「逃げるのだぁぁぁ!!」


 ラウラとダリアも慌てて走り出す。


「なぜ逃げるのだ!?」


「私はトカゲが大の苦手なんだ!」


「ええ!?」


「ギルティちゃん、強いのに!?」


「無理なものは無理なんだ!」


 レッドレプティが追ってくる。


 ドドドドドドッ!


「速い!」


「ちみ! もっと速く走るのだ!」


「走ってます!」


 そのまましばらく走ったところで、ラウラが尋ねた。


「ギルティちゃん。他に苦手なものは?」


「自慢じゃないが!」


 ギルティは走りながら叫んだ。


「虫もダメ!」


「うん」


「トカゲもダメ!」


「今見てるのだ」


「蜘蛛もダメ!」


「……」


「ムカデもダメだ!」


 ラウラとダリアは顔を見合わせた。


「……ほぼ虫じゃん」


「ほぼ虫なのだ」


「聞こえてるぞ!」


 そのとき。


 ラウラが何かに気づいた。


「あ!」


「どうしたのだ!?」


「今こそ、装備を使うときではありませんか!?」


「……!」


 ダリアが目を見開く。


「そうだ!」


 そして叫んだ。


「石を投げるのだ!」


「はい!」


 ラウラは急停止した。


「!?」


 地面に転がっていた石を拾う。


 そして振り返った。


 レッドレプティがすぐそこまで迫っている。


「近いです……!」


 ラウラは虎猫腕力補助に手を添える。


 そして――


「えいっ!」


 至近距離から石を投げた。


 ドンッ!!


 石はレッドレプティの口へ入った。


 次の瞬間。


 ズドォォォン!!


 石が体内を突き抜けた。


「……え?」


 レッドレプティの身体が大きく揺れる。


 そのまま足元を踏み外し――


 ドボォン!


 近くのマグマへ落下した。


 ジュウウウウウ……。


 赤い身体が、あっという間に溶けていく。


「…………」


「…………」


 ラウラとダリアは、ポカーンとした。


 ギルティも息を切らしながら立ち止まる。


「……」


「……」


「……」


 しばらく沈黙。


 そしてギルティが言った。


「Aランクの魔物の素材で作った、強力な武器だからな……」


「石を投げただけなのだ……」


「そうですね……」


 ラウラは自分の手を見た。


 ただの石だった。


 いや。


 今はただの石ではない。


 虎猫腕力補助によって、恐ろしい威力になっていた。


「……すごいです」


「ちみの投げ方も大概なのだ」


「ラウラちゃん、今度その装備を私にも……」


「ギルティちゃんは鍛冶師ですよね?」


「自分用も作りたい」


「なるほど……」


 三人は気を取り直した。


 目的は炎王鉱石。


 そのために、さらに火山を登る。


 やがて。


 大きな洞窟が見えてきた。


「ここでしょうか?」


「炎王鉱石がある場所かもしれないのだ」


「入ってみよう」


 三人は洞窟へ入った。


 中は暗い。


 しかし、壁のあちこちが赤く輝いている。


「……」


 ラウラが《素材感知》を使った。


 そして。


「…………」


 ラウラが固まった。


「どうしたのだ?」


「ラウラ?」


 ダリアとギルティが振り返る。


 ラウラは洞窟の奥を見つめていた。


「なにこれ……」


「?」


「どうした?」


 ラウラは震える声で言った。


「ここは……」


 目の前に浮かぶ無数の素材反応。


 炎石。


 紅蓮結晶。


 赤色鉱石。


 黒曜石。


 火晶石。


 溶岩鉄。


 火竜草。


 そして。


 炎王鉱石。


「炎王鉱石もあります」


「なに!?」


 ギルティが飛び上がった。


「他にもレア素材が沢山……」


 ラウラの目が輝く。


「ここは……」


 ダリアも《素材感知》の結果を聞いて、ニヤリと笑った。


「金になるのだな?」


「はい」


「ならば――」


 ギルティも笑った。


「レア素材で、いっぱい作れる……!」


 ラウラも。


「いっぱいお金になります……!」


 三人の目が同時に変わった。


「「「…………」」」


 そして。


「採るぞぉぉぉぉ!!」


 三人は一斉に駆け出した。


 ラウラは素材を掘る。


 ダリアは拾う。


 ギルティは珍しい素材を見つけるたびに叫ぶ。


「これは何に使える!?」


「金になります!」


「じゃあ採るのだ!」


「これもレアだ!」


「採ります!」


「これも!」


「採ります!」


「これも作れそう!」


「採ります!」


「炎王鉱石あったぞぉぉぉ!!」


「採ります!!」


 火山の洞窟に、三人の声が響き渡る。


 そこは――


 金満腹にとって。


 まさに。


素材の楽園だった。

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