34話 三人のパーティーになりました
それから数日後。
ラウラとダリアは、ギルティの工房へ向かっていた。
「できたかな?」
「できているといいですね」
「炎王鉱石を探しに行く前に、装備は整えておきたいのだ!」
「そうですね!」
工房の扉を開ける。
「ギルティさん!」
「ああ、来たね」
ギルティは笑って二人を迎えた。
「ダリアが言っていた通り――」
ダリアが身を乗り出す。
「装備ができたんだって!?」
「ああ。できているよ」
ギルティは奥から何かを持ってくる。
「これさ」
「…………」
「…………」
そこにあったのは――。
可愛らしい靴だった。
「かわいい!」
「かわいいのだ!」
二人が同時に声を上げる。
靴には小さな兎の耳のような飾りがついている。
「これは、かなりいい出来だよ」
ギルティが自信満々に言う。
「名前は――」
「精霊兎靴」
「精霊兎靴……!」
ギルティは説明を続ける。
「装備すると、速さがだいたい30ほど上がる」
「30!?」
「それと、スタミナが1.5倍になる」
「すごい……」
ラウラが目を丸くする。
「つまり――」
ダリアはすでに靴を手に取っていた。
「こういうことだな!」
「え?」
シュッ。
「装備したのだ!」
「早いですね……」
ダリアは精霊兎靴を履いて、ぴょんぴょん跳ねる。
「これはいいではないか!」
くるり。
「かわいいではないか!」
さらにくるり。
「すごくかわいいのだ!」
「ダリアちゃん、気に入ったんですね」
ラウラも精霊兎靴をじっと見つめる。
「かわいい……」
そしてダリアがステータスを確認する。
「おお!」
ダリア 錬金術師
- 体力:50
- スタミナ:68+34
- 魔力:22
- 力:2
- 防御:18
- 速度:38+20
「すごく上がってるのだ!」
ダリアは大喜びだった。
「スタミナが倍近くになったのだ!」
「すごいです」
ラウラも精霊兎靴を受け取る。
「じゃあ、ラウラも履いてみな」
「はい!」
ラウラも装備する。
すると――。
ラウラ 素材採取士
- 体力:77
- スタミナ:75+37
- 魔力:2
- 力:4
- 防御:6
- 速度:40+20
「…………」
ラウラはステータスを見つめる。
「すごい……」
「だろ?」
ギルティが笑う。
「これなら、今まで以上に走れるはずだよ」
「これ以上……」
ラウラは少し遠い目をする。
「まだ速くなるんですね……」
「逃げるためなのだ!」
ダリアが胸を張る。
「そうですね……」
ラウラも頷いた。
そしてギルティは、もう一つの装備を取り出した。
「そして、これだ」
「?」
ラウラ専用の装備だった。
腕に装着するタイプの装備。
「これは――」
ギルティが笑う。
「名付けて」
「虎猫腕力補助【タイガーキャットアームフォロー】」
「名前が強そうです……」
「タイガーキャットの素材を使っているからね」
ギルティは装備を手に取る。
「これは、投てきするときだけ効果を発揮する装備だよ」
「投てき……!」
ラウラが反応する。
「命中率と飛距離を伸ばす」
「!」
「近場の敵なら、石ころでもかなりのダメージを与えられるはずだよ」
「石ころ……」
ラウラは自分のいつもの石を思い浮かべる。
「それが、もっと強くなる……?」
「そういうこと」
ラウラはすぐに装備した。
「…………」
ステータスを見る。
「数値は変わってませんね」
「これはステータスに直接反映されるタイプじゃないからね」
「なるほど……」
実感はまだ分からない。
それでも。
「嬉しいです!」
ラウラは笑った。
そして。
ギルティの表情が少し変わった。
先ほどまでの明るい笑顔ではない。
少し真剣な顔だった。
「それで、だ」
「?」
ラウラとダリアが顔を上げる。
「少し相談がある」
「相談?」
ギルティは二人を見る。
そして。
「私も、パーティーに入れてくれないかい?」
「え?」
「なんで!?」
二人が同時に驚いた。
ギルティは少し照れたように笑う。
「私の夢は、レア素材でバンバン装備を作ることだろ?」
「はい」
「君たちといれば、それができそうな気がするんだ」
「…………」
「ダメかな?」
ラウラはすぐに首を横に振った。
「ダメではないです!」
ギルティの顔が明るくなる。
「そうか!」
そして。
「あ、そうだ」
ギルティは工房の奥へ行く。
「素材が良くてね……」
「?」
戻ってきたギルティの手には――。
もう一足。
精霊兎靴があった。
「これ」
「え?」
「私の分も作ってたんだ」
「…………」
「君たちは戦うより、逃げる戦闘でしょ?」
「はい……」
「だったら、もしパーティーに入れたら私だけ置いていかれるから」
ギルティは少し照れながら笑う。
「作っておいたんだ」
「ギルティさん……」
ダリアが感動したように腕を組む。
「大歓迎だけれども! も! も!」
「?」
「ちみのお店は大丈夫なのかい?」
「ああ、それなら大丈夫」
ギルティはあっさり答えた。
「兄貴が六人いるからな」
「六人!?」
「私はいてもいなくても、大して変わらない」
「そんなことあるのですか……」
ラウラが驚く。
「あるんだよ」
ギルティは笑った。
「じゃあ!」
ラウラとダリアは顔を見合わせる。
二人の目が輝く。
「よろしくお願いします!」
「よろしくなのだ!」
「こちらこそ!」
こうして――。
ギルティが金満腹の仲間になった。
三人はギルドへ向かって歩き始める。
すると。
「そういえば」
ギルティが尋ねた。
「パーティー名は何だい?」
ダリアが即座に指を立てる。
「金満腹なのだ!!!!」
「…………」
ギルティは一瞬固まる。
「あは……」
「あはは……」
苦笑する。
「すごい名前だね……」
「最高の名前なのだ!」
「そうです!」
「……そうか」
ギルティは少し遠い目をした。
そしてギルドへ到着。
受付でパーティー登録を行う。
新たな仲間――。
ギルティ。
職業は。
鍛冶師。
そしてステータスが表示される。
ギルティ 鍛冶師
- 体力:72
- スタミナ:42
- 魔力:88
- 力:53
- 防御:20
- 速度:55
「…………」
ラウラはステータスを見る。
「私たちより……」
ごくり。
「全然強い……」
ダリアも目を見開く。
「なんだね! ちみ!」
「?」
「ものすごく強いではないか!」
ギルティは苦笑する。
「まあ、父親はドワーフで、母親は人間の剣士だったからね」
「なるほど……」
「ちょっと遺伝してるのかもね」
ギルティは笑った。
「鍛冶師なのに、戦えそうですね……」
ラウラが呟く。
「まあ、素材を取りに行くなら多少は戦えたほうが便利だからね」
「確かに!」
ダリアが頷く。
こうして。
金満腹は――。
素材採取士。
錬金術師。
鍛冶師。
三人のパーティーになった。
そして。
準備は整った。
目的地は――。
火山。
探すものは――。
発見率0.003%の激レア鉱石。
炎王鉱石。
「よし!」
ギルティが拳を握る。
「レア素材を探しに行こう!」
「はい!」
「金になるのだ!」
三人は火山へ向かって歩き出した。




