33話 発見率0.003%の素材採取を依頼されました。
ラウラとダリアは、カーム伯爵の屋敷へ来ていた。
大きな屋敷の中を案内され、二人は伯爵の部屋へ通される。
「どうぞ、座ってくれ」
「失礼します」
ラウラとダリアは、ソファに腰を下ろした。
向かいにはカーム伯爵。
伯爵は少し困ったような顔をしていた。
「君たちの噂は知っている」
「?」
ラウラは首を傾げる。
「タイガーキャットを討伐したそうじゃないか。それも、かなり珍しい素材まで手に入れたと聞いている」
「はい!」
「そこでだ」
カーム伯爵は腕を組む。
「君たちに相談したいことがあるんだ」
「相談……ですか?」
「ああ」
カーム伯爵は、深いため息をついた。
「実はもうすぐ、王の誕生式典があってな」
「王様……」
ラウラが少しだけ緊張する。
「その式典には、各地の貴族が集まる。そして当然――」
カーム伯爵は苦い顔をする。
「王へ贈り物をしなければならない」
「なるほど……」
「だがな」
カーム伯爵は頭を抱えた。
「なかなか、いいものが見つからなくてねぇ……」
「…………」
「何か良いものはないかと思って、君たちに相談したわけだ」
ラウラは考える。
「うーん……」
ラウラの頭の中に、これまで集めてきた素材が浮かぶ。
珍しい鉱石。
魔石。
モンスターの素材。
海の素材。
スライムストーン。
タイガーキャットの素材。
「なにかありましたかね……」
ラウラが考え込む。
隣ではダリアも腕を組んでいた。
「うーむ……」
そして。
「王様が欲しがるようなものは、持っていないのだよ」
「ですよね……」
カーム伯爵は、さらに落ち込んだ。
「はぁ……」
「…………」
「どうしよう」
「…………」
「胃が痛い」
カーム伯爵がソファに沈み込む。
「はぁ……」
ラウラは少し心配になった。
「カーム伯爵」
「ん?」
「他の方々は、何を持ってくるのですか?」
「そうだな……」
カーム伯爵は少し考えてから答えた。
「まあ簡単に言えば――」
「装飾品」
「工芸品」
「素材」
「この辺りが主かな」
「なるほど……」
ラウラは再び考える。
すると。
「そういえば」
ダリアが口を開いた。
「この辺りで貴重な素材は何があるのだ?」
「貴重な素材か……」
カーム伯爵は少し考える。
「あるっちゃある」
「おお!」
ダリアが身を乗り出す。
「炎王鉱石だ」
「炎王鉱石……?」
ラウラはすぐに魔法の図鑑を取り出した。
ページをめくる。
「炎王鉱石……」
説明を読む。
火山地帯でのみ採取できる。
極めて高い耐熱性。
魔力との親和性も高く、武具や装飾品などに使用される。
そして。
「……え?」
ラウラの目が止まった。
「どうした?」
カーム伯爵が聞く。
ラウラは図鑑をじっと見る。
「発見率……」
「?」
「発見率0.003%ですって!」
「…………」
ダリアが固まった。
カーム伯爵も固まった。
「0.003……?」
「はい」
「そんなに低いのか?」
「図鑑には、そう書いてあります」
ラウラはもう一度確認する。
「火山地帯でも、ほとんど見つからないみたいです」
「なるほど……」
ダリアはラウラの隣へ顔を近づける。
そして。
「ラウラ」
「はい?」
ダリアが小声で囁く。
「報酬貰えたら頑張ると言うのだぞ」
「…………」
ラウラの目が輝いた。
「報酬……」
ダリアは小さく頷く。
「うむ」
「…………」
ラウラはすっと顔を上げた。
そして。
カーム伯爵を見る。
「カーム伯爵!」
「なんだ?」
「報酬ください!」
「…………」
ダリアがニヤリと笑う。
カーム伯爵は一瞬ぽかんとした。
そして。
「ああ、もちろんだとも!」
「本当ですか!?」
「王への贈り物を用意できるのなら、報酬くらい惜しくはない!」
カーム伯爵は勢いよく立ち上がった。
「いや、むしろ――」
ニッと笑う。
「色もつけよう」
「!」
ラウラの目が輝く。
「本当ですか!」
「ああ」
「頑張ります!」
ラウラは即答した。
「現金……いや、報酬のためなら!」
「今、何と言いかけた?」
「なんでもありません!」
カーム伯爵は苦笑する。
「では、頼めるか?」
「はい!」
ダリアも頷く。
「任せるのだ!」
二人の目が合う。
炎王鉱石。
発見率0.003%。
そして――。
「火山ですか……」
ラウラは少しだけ不安そうな顔をする。
「暑そうですね」
「うむ」
「魔物もいそうです」
「うむ」
「危なそうです」
「うむ」
「…………」
ラウラは考える。
そして。
「でも報酬が出るんですよね?」
「出るぞ」
「じゃあ行きましょう!」
ダリアが笑う。
「やはり金なのだよ!」
「はい!」
二人は立ち上がった。
しかし。
すぐに出発するわけではなかった。
「……待つのだ」
ダリアが言う。
「どうしました?」
「忘れているぞ」
「?」
ダリアは指を一本立てた。
「ギルティに頼んでいる装備だ」
「あ」
ラウラは思い出した。
スライムストーンでつくる防具と
タイガーキャットの魔石。
タイガーキャットの筋繊維。
ランドル鉱石。
それらを使って作ってもらっている、新しい装備。
「そうでした」
「火山に行くなら、少しでも準備は整えておいたほうがいい」
「確かに……」
ラウラは頷く。
「それなら、完成するまで待ちましょう」
「うむ!」
こうして二人は――。
炎王鉱石を探すために火山へ向かう前に。
念のため。
ギルティに頼んだ新しい防具と武器が完成するのを待つことになった。
「どんな武器になるんでしょうね」
「投げる武器なのだ!」
「楽しみです!」
「そして炎王鉱石!」
「報酬!」
「金!」
「…………」
「…………」
二人は顔を見合わせる。
「絶対に見つけるのだ!」
「はい!」
こうして――。
金満腹の二人に、新たな採取依頼が舞い込んだ。
目的地は。
灼熱の火山地帯。
探す素材は――。
発見率0.003%。
炎王鉱石。




