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【ハズレ職】素材採取士の私。お金のために採取していたら世界最強になりました  作者: きらっち


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32/53

32話 なぜか特例で冒険者ランクBになりました。

ギルドへ戻ると――。


受付嬢が、慌てた様子で駆け寄ってきた。


「ラウラさん! ダリアさん!」


「はい?」


「大丈夫ですか!?」


「え?」


受付嬢は二人の身体を確認する。


「本当に……戻ってきて良かったです。タイガーキャットはまだ西の街道付近にいるはずですから、すぐに別の冒険者を派遣しますので!」


「待つのだ!」


ダリアが大声で叫んだ。


「え?」


「ちゃんと仕留めてきたのだ!」


「…………」


「…………」


ギルド内が静まり返った。


受付嬢が目をぱちぱちさせる。


「……え?」


周囲の冒険者たちも振り返った。


「嘘だろ?」


「本当に言ってるのか?」


「Aランクだぞ?」


「二人だけで?」


「いやいや、そんなわけ……」


ざわざわと声が広がっていく。


ダリアは胸を張った。


「ふっふっふ……」


そしてラウラを見る。


「おい、ちみ! みせてあげたまえ!」


「かしこまりました!」


ラウラは魔法の袋から――。


タイガーキャットの牙を一本取り出した。


ドンッ。


受付カウンターに置く。


「…………」


「…………」


「…………」


ギルド内の全員が固まった。


巨大な牙。


見間違えるはずがない。


「……タイガーキャットの牙」


誰かが呟いた。


「マジかよ……」


「本物だ……」


「本当に倒したのか……?」


そのとき。


奥からギルドマスターが出てきた。


「お前たち……」


ギルドマスターは牙を見る。


そして二人を見る。


「本当にやったんだな……」


「はい!」


ラウラは元気よく答えた。


「どうやって倒したんだ?」


ギルドマスターが尋ねる。


すると。


ダリアがニヤリと笑った。


「ふっふっふっ……聞きたまえ!」


「……」


「……」


ギルド内の視線が集まる。


ダリアは胸を張った。


「あちしが囮になり!」


「ほう」


「ラウラが拳で一撃なのだよ!」


「……拳?」


「そう!」


ダリアは勢いよく頷く。


「そして、ひるんだところを!」


「……」


「二人でボコボコにしてやったのだ!」


「…………」


ギルドマスターは、しばらく黙っていた。


「…………」


そして、少しだけ眉間に皺を寄せた。


「……なるほど」


明らかに何か考えている。


「…………」


「…………」


ラウラは何も言わなかった。


タイガーキャットを拳で一撃。


そんなものはもちろん嘘である。


しかし。


ラウラは何も言わない。


ダリアの横で、黙って立っていた。


やがてギルドマスターが口を開く。


「よし」


「?」


「お前たち、ギルドカードを貸せ」


「はい!」


ラウラとダリアは素直にカードを渡した。


ギルドマスターは二枚のカードを持って奥へ入っていく。


そして。


しばらくすると戻ってきた。


「ほらよ!」


「?」


「新しい、お前たちのギルドカードだ」


ラウラが受け取る。


カードを見る。


そこには――。


冒険者ランク:B


と書かれていた。


「…………」


「…………」


ラウラとダリアは固まった。


「タイガーキャットを殴って討伐できるやつは、そうそういないからな!」


ギルドマスターは豪快に笑う。


「特例だ! 喜べ!」


「……」


「……」


ラウラとダリアは顔を見合わせた。


そして。


「やったー」


「わーい」


二人とも。


ものすごく低いテンションで棒読みした。


「もっと喜べ!」


ギルドマスターが叫ぶ。


「はい……」


「わーい……」


「棒読みじゃねえか!」


ギルドマスターが頭を抱える。


そして。


「まあいい。報酬だが……」


その言葉に。


ラウラとダリアの目が変わった。


二人は顔を見合わせる。


「討伐報酬、金貨30枚」


「……!」


「……!」


二人の顔が一気に明るくなった。


「素材も売るか?」


「素材は売りません!」


ラウラは即答した。


「そうか! わかった!」


ギルドマスターは頷く。


「今回はいい仕事をしてくれた。ありがとう」


「はい!」


ラウラはぺこりと頭を下げる。


するとギルドマスターが、ふと思い出したように尋ねた。


「ところで、お前たちの職業は何なんだ?」


「職業?」


「タイガーキャットを殴って倒したんだ。剣聖か? それとも拳王か?」


「私は素材採取士です」


「……」


「…………」


「……は?」


ラウラは普通に答えた。


「素材採取士です」


そしてダリアも胸を張る。


「あちしは錬金術師なのだ!」


「はーーーーー!?」


ギルド内にいた全員が叫んだ。


「素材採取士!?」


「錬金術師!?」


「じゃあ、さっきの拳は!?」


「だから拳なんて使ってないです」


ラウラが小さく呟く。


「ん?」


ギルドマスターが聞き返す。


「なんでもないです」


ラウラは笑った。


そして。


ラウラとダリアはギルドを出た。


向かった先は――。


ギルティの工房だった。


「ギルティさん!」


「お、二人とも。どうしたんだい?」


ラウラは魔法の袋を開く。


「これを見てください」


ドサッ。


タイガーキャットの素材が並ぶ。


「…………」


ギルティが固まった。


「タイガーキャット……?」


「はい!」


「これ、どうしたんだい?」


「倒しました!」


「…………」


ギルティは頭を抱えた。


「本当に君たちは……」


そして素材を一つずつ確認していく。


「タイガーキャットの魔石」


「はい」


「筋繊維」


「はい」


「上毛皮……」


「はい」


「結晶まであるじゃないか……」


ギルティはタイガーキャット結晶を手に取る。


「これだけあれば、かなり色々作れそうだね」


「速くなる防具はどうですか?」


ラウラが聞く。


ギルティは少し考える。


「うーん……」


「…………」


「速さを上げる防具なら、たぶんフェアリーラット以上のものは今は無理だろうね」


「そうですか……」


ラウラが少し残念そうにする。


「できるとしたら――」


ギルティはタイガーキャットの筋繊維を見る。


「武器……か?」


その言葉に。


ダリアが勢いよく手を上げた。


「それだ!」


「?」


「投てき術に見合う武器を作ればよかろう!」


ダリアは興奮気味に話す。


「投げる威力の上がる、サポート的なやつがあれば――」


ニヤリ。


「鬼に金棒だろぉ!」


「なるほど!」


ラウラも納得する。


「投げる力を補助してくれる武器……」


「そう!」


ダリアが頷く。


「ラウラは石を投げるのが得意なのだ。だったら、それをもっと強くすればいい!」


「いいですね!」


ギルティは二人を見る。


そして。


「じゃあ、なんとかやってみるよ」


ニッと笑った。


ラウラは素材を取り出す。


「お願いします!」


ラウラは――。


タイガーキャットの魔石。


タイガーキャットの筋繊維。


そして。


ランドル鉱石。


それらをギルティへ渡した。


「これで作ってみる」


「よろしくお願いします!」


「任せな!」


二人は工房を後にした。


「次は何を食べるのだ?」


ダリアが聞く。


「お腹すきましたね」


「うむ!」


二人は近くのレストランへ入った。


料理を注文し。


しばらくして。


「いただきます!」


二人は食事を始めた。


ラウラが料理を食べていると――。


「失礼いたします」


一人の男性が店へ入ってきた。


服装からして、貴族の使用人らしい。


「ラウラ様、ダリア様」


「?」


「カーム伯爵様からの使いでございます」


「カーム伯爵?」


ラウラとダリアが顔を上げる。


使いの男性は丁寧に頭を下げた。


「タイガーキャットを討伐されたこと。そして、非常に珍しい素材を入手されていることをお聞きになりまして」


「……」


「カーム伯爵様が、お二人に依頼したいことがあるとのことです」


「依頼……」


「はい」


使いは続ける。


「またお時間のあるときに、屋敷へお越しいただけないでしょうか」


ダリアは料理を頬張りながら頷いた。


「むぐむぐ……」


「…………」


「これを食べたら向かわせてもらうのだ」


「ダリアちゃん」


ラウラが笑う。


「口いっぱいだから何言ってるか分からないよ」


「むぐ……」


ダリアは慌てて口を押さえた。


ラウラは使いの男性を見る。


「これを食べたら向かいますね」


「ありがとうございます」


使いは一礼する。


ラウラとダリアは食事を続ける。


タイガーキャットを倒した。


Bランクになった。


ギルティには新しい武器を頼んだ。


そして今度は――。


カーム伯爵からの依頼。


「……また忙しくなりそうですね」


ラウラが呟く。


しかし。


その顔には――。


ほんの少しだけ。


楽しそうな笑みが浮かんでいた。

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