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【ハズレ職】素材採取士の私。お金のために採取していたら世界最強になりました  作者: きらっち


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29/53

29話 フェアリーラットの素材を手に入れました。

ブングルの北。


ギルティに教えてもらった場所を目指して、ラウラとダリアは歩いていた。


やがて――


木々が増えてくる。


「ここが北の森ですね」


「うむ!」


森の中は、かなり静かだった。


風が木々を揺らし、葉が擦れる音が聞こえる。


鳥の鳴き声。


遠くから聞こえる動物の声。


そして――


「おお」


ラウラは足を止めた。


《素材感知》が反応したのだ。


「どうしたのだ?」


「素材があります」


「お金になるか?」


「たぶん!」


ラウラは周囲を見回す。


「薬草があります」


「ほう!」


「木の実もあります」


「おお!」


「食べられるキノコも……」


「素晴らしい!」


ラウラとダリアの目が輝く。


「これもお金になりますね」


「なるな!」


二人はすぐに採取を始めた。


薬草。


木の実。


食用キノコ。


毒草。


麻痺草。


森の中には、街の近くでは見つけにくい素材までたくさん生えている。


「北の森、すごいですね」


「素材の宝庫だな!」


「来てよかったです」


ラウラは次々と素材を採取していく。


そして――


その時だった。


シュッ!


何かが、ラウラの視界の端を横切った。


「……?」


ラウラが顔を上げる。


しかし――


何もいない。


木。


草。


地面。


ただ、それだけ。


「……今、何かいました?」


ダリアも周囲を見る。


「いたな」


「やっぱり?」


「ああ」


「でも……」


ラウラは首を傾げる。


「見えませんね」


「うむ」


二人は警戒する。


しばらく待つ。


何も起きない。


「……気のせいでしょうか?」


「いや」


ダリアが真顔で答えた。


「何かいたぞ」


「ですよね……」


ラウラは少し怖くなった。


《素材感知》を使う。


すると――


少し離れた場所に、小さな反応があった。


「いました!」


「どこだ?」


「そこです!」


ラウラが指差す。


木の根元。


そこに――


小さなネズミがいた。


「……あ」


ラウラの緊張が解ける。


「かわいい……」


本当に小さい。


丸い耳。


ふわふわの毛。


小さな手足。


「これがフェアリーラットですか?」


「そうみたいだな」


ダリアも見る。


「思ったより小さいな」


「かわいいですね」


ラウラが少し近づく。


フェアリーラットがラウラを見る。


そして――


シュンッ!


「え?」


消えた。


「…………」


ラウラが固まる。


「どこ行った?」


ダリアも目を丸くする。


「速いな」


「……消えました」


「消えたように見えただけだ」


ダリアが周囲を見る。


「高速で移動したのだろう」


「そんな……」


ラウラは《素材感知》を使う。


反応を探す。


「いました!」


右。


いや――


左。


違う。


後ろ。


「えっ」


フェアリーラットが森の中を走り回っている。


その姿を目で追うことすら難しい。


「速すぎませんか!?」


「だから言っただろう!」


ダリアが叫ぶ。


「ものすごく速いのだ!」


ラウラはフェアリーラットを見つめる。


そして――


石を一つ拾った。


「……」


フェアリーラットを見る。


「ラウラ?」


「一回、投げてみます」


ラウラは石を握る。


狙いを定める。


フェアリーラットが木の根元を走った。


「そこ!」


ビュッ!


石が飛ぶ。


しかし――


シュッ。


フェアリーラットが避ける。


「…………」


ラウラは固まった。


もう一個。


ビュッ!


シュッ。


避けられる。


さらに一個。


ビュッ!


シュッ。


また避けられる。


「…………」


ラウラの顔が青くなる。


「石が……」


ダリアを見る。


「石が……当たりません……!」


「うむ」


ダリアも真剣な顔で頷く。


「まったく当たらんな」


「どうしましょう……」


「追いかけるか?」


「無理です!」


ラウラは即答した。


「たぶん無理です!」


その瞬間。


フェアリーラットがラウラの足元を横切った。


「ひゃっ!」


ラウラが飛び退く。


そして――


フェアリーラットが少し離れた場所で止まる。


まるで、


「追いついてみろ」


と言っているようだった。


「…………」


ラウラは思う。


速度40。


今まで、かなり速くなったと思っていた。


なのに――


目の前の小さなネズミには、まったく届かない。


「……速すぎます」


その瞬間。


フェアリーラットが走り出した。


「え?」


ラウラの横を通り過ぎる。


そして――


今度はラウラの後ろに回る。


「え?」


また前。


「えっ?」


右。


左。


後ろ。


「ひゃっ!」


フェアリーラットがラウラの周囲を走り回る。


「ちょ、ちょっと待ってください!」


ラウラが後ろを見る。


誰もいない。


「どこですか!?」


ダリアが叫ぶ。


「ラウラ! 走れ!」


「え!?」


「追いかけてきているぞ!」


「追いかけてきてるんですか!?」


ラウラが振り返る。


いた。


フェアリーラットが、ラウラを追っている。


「なんでですかぁぁぁ!」


ラウラは全力で走った。


「逃げます!」


「うむ!」


ダリアも走る。


二人の速度は――


ラウラ40。


ダリア38。


森の中を全力で駆け抜ける。


「速い!」


ラウラは必死に走る。


しかし――


後ろから足音が近づいてくる。


「え?」


タタタタタッ!


「近づいてきてます!」


「うむ!」


「追いつかれます!」


「そうだな!」


「そうだなじゃないです!」


ラウラは必死だった。


木を避ける。


草を飛び越える。


石を踏まない。


それでも――


後ろの足音が近い。


「速いです!」


ラウラの速度が、少しだけ上がる。


「ラウラ! 速くなってるぞ!」


「そんなこと言ってる場合じゃないです!」


タタタタタッ!


フェアリーラットが迫る。


「死にたくないです!」


ラウラは全力で走る。


「もっと速く!」


ラウラは走る。


フェアリーラットも追う。


「まだですか!?」


「まだだ!」


「追いつかれます!」


「走れ!」


「走ってます!」


ラウラ自身も驚いていた。


こんなに速く走れるなんて知らなかった。


でも――


そんなことを考えている余裕はない。


「死にたくないですぅぅぅ!」


さらに走る。


それでもフェアリーラットは離れない。


「なんなんですか、このネズミ!」


ダリアが叫ぶ。


「あちしより速いぞ!」


「私よりも速いです!」


「知ってる!」


二人は森の中を逃げ続ける。


その時。


ラウラの頭に、一つの考えが浮かんだ。


――普通に投げても当たらない。


なら。


「……」


ラウラは走りながら、地面を見る。


木。


岩。


草。


そして――


フェアリーラット。


「……直接狙わなければいいんですよね」


「何?」


ラウラは石を拾った。


そして――


投げる。


ビュッ!


フェアリーラットではない。


地面へ。


ガッ!


石が地面に当たって跳ねる。


フェアリーラットが避ける。


「まだです!」


ラウラは二個目。


今度は木へ。


ビュッ!


ガンッ!


跳ね返った石が、別の方向へ飛んでいく。


フェアリーラットが避ける。


「……なるほど」


ラウラは少し考える。


フェアリーラットは、石を避ける。


なら――


逃げる方向を限定すればいい。


《素材感知》を使う。


前方。


木。


岩。


地面。


そして――


フェアリーラット。


「こっちです!」


ラウラは方向を変えた。


「ラウラ!?」


「こっちに追い込みます!」


「何をする気だ!?」


「わかりません!」


「わからないのか!?」


ラウラは走る。


フェアリーラットも追ってくる。


ラウラは石を投げた。


一個。


二個。


三個。


時間差で投げる。


フェアリーラットが避ける。


右。


左。


上。


しかし――


少しずつ逃げる方向が限定されていく。


「……ここです」


ラウラが立ち止まった。


目の前には大きな木。


その向こうには岩。


フェアリーラットの進める方向は――


一つ。


「ダリアさん!」


「なんだ!?」


「そこに石を!」


「わかった!」


ダリアが石を拾う。


ラウラも拾う。


「せーの!」


二人が同時に投げる。


ビュッ!


ビュッ!


フェアリーラットが避ける。


しかし――


避けた先に、木がある。


「そこ!」


ラウラが三個目の石を投げた。


直接ではない。


木に向かって。


ガンッ!


石が跳ね返る。


「え?」


フェアリーラットが逃げる。


その先には――


ラウラが投げた、もう一つの石。


「え?」


ドンッ!


小さな音がした。


フェアリーラットが地面に転がる。


「…………」


ラウラが止まる。


「…………」


ダリアも止まる。


二人で倒れたフェアリーラットを見る。


「……」


「……」


ラウラが恐る恐る近づく。


「え?」


フェアリーラットは動かない。


「当たった?」


ダリアが叫ぶ。


「当たったぞ!」


「本当に?」


「本当だ!」


ラウラは自分の手を見る。


そして――


倒れているフェアリーラットを見る。


「……当たった?」


「だから当たったと言っている!」


ラウラは、まだ信じられなかった。


「普通に投げても全然当たらなかったのに……」


「跳ね返したからな」


「偶然ですけど……」


「それでも当たったのだ!」


ダリアが笑う。


「投てき術Lv3、すごいではないか!」


「……そうなんでしょうか?」


ラウラは首を傾げた。


「たまたま当たっただけの気がします」


「その『たまたま』で倒したのだぞ!」


「そうですか……」


ラウラはフェアリーラットの前にしゃがみ込む。


「では……」


ナイフを取り出す。


「素材を採取します」


ラウラが《素材採取》を使う。


フェアリーラットの身体が淡く光る。


そして――


「……!」


手の中に、小さな魔石が現れた。


「これが……」


ラウラが魔石を見る。


「フェアリーラットの魔石です!」


「おお!」


ダリアが覗き込む。


「どうだ?」


ラウラが《素材感知》で確認する。


「……」


「どうなのだ?」


「極上品質です」


「なんだと!?」


ダリアが飛び上がる。


「極上品質だと!?」


「はい」


さらに採取を続ける。


「フェアリーラットの毛」


「おお!」


「妖精鼠の爪」


「それも売れるか?」


「たぶん……」


「金になるな!」


「はい!」


二人の目が輝く。


「ギルティさんが欲しがっていた魔石も手に入りました」


「これで速さ特化の装備が作れるぞ!」


「楽しみですね」


ラウラは魔石を大切に魔法の鞄へしまった。


そして――


ふと気づく。


「……あれ?」


身体が軽い。


「なんでしょう……」


ラウラは立ち上がる。


さっきまで全力で走っていたのに。


疲れているはずなのに。


妙に身体が軽い。


「ステータスを見てみます」


ラウラが確認する。


「…………」


「どうした?」


ラウラは目を丸くした。


「速度が……」


「速度が?」


「変わってないです」


「あえ?」


「……40です」


「勘違いなのだ!」


ダリアが叫ぶ。



「はい……」


ラウラは自分の足を見る。


「でもなんか……」


ダリアがニヤリと笑う。


「ちみ、お腹すいたのかね」


「え……?」


ラウラは試しに走ってみる。


タッ。


一歩。


タタッ。


二歩。



ラウラは少し考える。


そして――


「フェアリーラットの魔石を使った装備が完成したら、もっと速くなるんですよね?」


「もちろんだ!」


ダリアが胸を張る。


「ギルティが作ってくれるのだ!」


「……」


ラウラは自分の速度60を見る。


そして――


「これ以上速くなったら……」


少し考える。


「逃げる必要、なくなるんじゃないですか?」


ダリアが真顔で答える。


「いや」


「?」


「逃げるために速くなるのだ!」


「……」


ラウラは少し考えた。


「なるほど……!」


納得した。


ラウラにとって――


速さとは。


戦うための力ではない。


逃げるための力。


そして――


素材を集めて、お金を稼ぐための力なのだ。


「じゃあ、もう一匹やっつけましょう!」


「うむ!」


ラウラとダリアは、走り出した。


「……」


ラウラは走りながら思う。


「……速いです」


風が頬を撫でる。


木々が後ろへ流れていく。


ズンッ


「あっ」


ラウラは――フェアリーラット二匹目を


ねている所踏みつけて倒すのであった。

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