28話 荒稼ぎしたので最速の魔物を狩りに行きます。
冒険者ギルドの受付カウンター。
そこには――
黄金の指輪。その他
四階層と五階層で手に入れた素材が、ずらりと並んでいた。
「では、査定しますね」
受付嬢が一つずつ確認していく。
「黄金の指輪……」
「星の砂……」
「塩結晶……」
「海珠……」
そして――
「査定が終わりました」
ラウラとダリアが身を乗り出す。
「いくらですか?」
「合計で――」
受付嬢が金額を告げる。
「金貨224枚です」
「…………」
「…………」
ラウラとダリア。
二人とも固まった。
「……224枚?」
「224枚だな」
「金貨……224枚……」
「うむ」
二人は顔を見合わせる。
そして――
ニヤァ。
ニヤニヤ。
ニヤニヤニヤ。
「……すごいです」
「すごいな」
「こんなに……」
「あるな」
「金貨224枚……」
「224枚……」
二人とも笑顔が止まらない。
受付嬢が苦笑する。
「お二人とも、本当に嬉しそうですね」
「はい!」
ラウラは即答した。
「お金ですから!」
「金だからな!」
ダリアも大きく頷く。
そして二人は、金貨を分けることにした。
「半分ずつですね」
「うむ!」
金貨112枚ずつ。
「これで――」
ラウラは自分の金貨を見る。
「金貨112枚……」
「こっちも112枚だ!」
「すごいです……」
「金満腹だな!」
二人はまたニヤニヤする。
「何を買いましょうか……」
「素材を買うのもいいな」
「新しい道具も欲しいです」
「装備も欲しいな」
「でも――」
ラウラは少し考える。
「まずはギルティさんのところに行きましょう」
「うむ!」
二人は冒険者ギルドを出た。
そのまま向かった先は――
鍛冶屋。
「こんにちはー!」
「お邪魔するぞ!」
すると。
「おや?」
店の奥から声がした。
振り返ったのは――
ギルティだった。
「ラウラ!」
「ギルティさん!」
「久しぶりだね!」
ギルティは嬉しそうに笑う。
「ダンジョンに行ってたんだって?」
「はい!」
「無事でよかったよ」
「ありがとうございます」
三人は少し話をする。
「それにしても、二人とも元気そうだね」
「はい!」
「素材もいっぱい手に入れたぞ!」
「それはよかった」
ギルティが笑う。
そして――
「あ」
何かを思い出したように、手を叩いた。
「そういえば!」
「?」
「ストーンアントの――」
ギルティが店の奥へ向かう。
そして。
ドンッ!
机の上に大量の宝石を置いた。
「うんこ磨き、終わったよ!」
「…………」
「…………」
ラウラとダリアが目を丸くする。
机の上には――
キラキラ。
キラキラ。
キラキラ。
色とりどりの宝石。
五十個ほど。
「…………」
ラウラの目が輝く。
「金……」
「金だ……」
二人の顔が同時にニヤニヤし始める。
「すごい……」
「全部ピカピカだな!」
「これ、本当にストーンアントの……」
「うんこだよ」
「…………」
「…………」
二人は宝石を見る。
「……金です」
「金だな」
「うんこなのに……」
「金になるな」
ギルティは苦笑する。
「まあ、素材としてはちゃんとした宝石だからね」
「ありがとうございます!」
ラウラは嬉しそうに宝石を見る。
すると――
「そうだ」
ラウラは魔法の鞄から、水色の宝石を一つ取り出した。
「これ、ギルティさんに」
「え?」
ギルティが驚く。
「いいの?」
「はい!」
ラウラは水色の宝石を差し出す。
「いつもお世話になってますから」
「いやいや!」
ギルティが慌てて手を振る。
「こんなの受け取れないよ!」
「いいんです!」
ラウラは笑顔で言う。
「賄賂ですから!」
「賄賂!?」
ギルティが固まる。
「いや、堂々と言ったね!?」
「はい!」
「賄賂って言われると余計受け取りにくいんだけど!?」
「でも、受け取ってください」
ラウラが差し出したまま動かない。
「…………」
ギルティは困った顔をする。
そして――
「……じゃあ」
水色の宝石を受け取る。
「ありがたく使わせてもらうよ」
「はい!」
ラウラは満足そうに頷いた。
その時。
「ところで」
ダリアが口を開いた。
「ギルティ」
「ん?」
「スライムストーンで作れる装備はあるかね?」
「スライムストーン?」
ギルティの目が変わる。
「速さ特化の装備が欲しいのだ」
「あるにはあるけど……」
ギルティは少し考える。
「素材がなかなか集まらないんだよね」
「ほう」
「そもそもスライムストーンなんて……」
「これですか?」
ラウラが魔法の鞄を開く。
コトン。
机の上に置かれたのは――
スライムストーン。
「…………」
ギルティが固まる。
ラウラはもう一つ取り出す。
コトン。
さらに――
コトン。
コトン。
コトン。
「…………」
五つ。
スライムストーンが並んだ。
「まだまだあります!」
「…………」
ギルティの口が開く。
「え?」
「まだあります」
「ちょっと待って」
ギルティがスライムストーンを見る。
「五つ……?」
「はい」
「これ……一個でもかなり珍しいんだけど?」
「そうなんですか?」
「そうだよ!」
ギルティは頭を抱える。
「なんでこんなに持ってるの……?」
ダリアが胸を張る。
「ダンジョンでいっぱい倒したのだ!」
「いっぱい……」
ギルティはスライムストーンを見る。
そして――
ふっと笑った。
「……いいね」
「?」
「やっぱり、素材って面白いよ」
ギルティはスライムストーンを手に取る。
「私の夢はね」
「はい」
「激レア素材を、バンバン使って――」
ギルティの目が輝く。
「武器や防具を作ることなんだよ」
「…………」
ラウラも少し興味を持つ。
「じゃあ――」
ラウラはスライムストーンを指差す。
「このスライムストーンと素材で、速さを上げる装備を作ってほしいです!」
「いいね!」
ギルティはすぐに紙を取り出す。
「じゃあ必要な素材を書き出すよ」
サラサラ。
紙に素材名が書かれていく。
「まず――」
「スライムストーン」
「魔結晶」
「サファリ鉱石」
「パル鉱石」
そして――
「フェアリーラットの魔石」
「フェアリーラット……?」
ラウラは首を傾げる。
「聞いたことないです」
「まあ、普通はあまり知らないかもね」
ギルティが説明する。
「北の森にいる魔物だよ」
ラウラは図鑑を取り出す。
「えーっと……」
ページをめくる。
「フェアリーラット……」
小さなネズミのような魔物の絵が載っている。
「かわいい……」
ラウラが呟く。
「だがな」
ダリアが口を挟む。
「あやつは、すんごく足が速いのだ!」
「速いんですか?」
「ものすごく速い!」
ダリアは両手を広げる。
「逃げる速度なら――」
「魔物の中でも一番速いかもしれぬ!」
「一番……」
ラウラが図鑑を見る。
小さなネズミ。
そんなに速いのだろうか。
「ちみや、あちしよりも全然速い!」
「ダリアさんより……」
「もちろん!」
ダリアは自信満々に頷く。
「たぶんラウラよりも速いぞ!」
「えっ」
ラウラが固まる。
「私より?」
「うむ!」
「…………」
ラウラは自分の速度を思い出す。
速度40。
それでも今まで、かなり速くなったと思っていた。
「そんなに速いんですか……」
「とにかく!」
ダリアが指を立てる。
「戦ってみるのが一番なのだよ!」
「戦う……」
ラウラの顔が少し曇る。
「怖くないですか?」
「無理なら逃げればいいのだ!」
「それなら……」
ラウラは少し安心した。
「なんとかなりそうです」
ギルティが地図を広げる。
「フェアリーラットは、ブングルの北にある森に生息してるよ」
「北の森ですね」
「うん」
「行きましょう!」
ダリアが立ち上がる。
「よし!」
ラウラも荷物を確認する。
石。
毒石。
小型ハンマー。
魔法の鞄。
必要な道具は揃っている。
「それじゃあ――」
ラウラはギルティを見る。
「フェアリーラットの魔石、探してきます!」
「気をつけてね」
「はい!」
こうして――
ラウラとダリアは、鍛冶屋を後にした。
向かう先は――
ブングルの北。
フェアリーラットが生息する――
北の森。
「どんな魔物なんでしょうね」
「ものすごく速い魔物だ!」
「……逃げ切れますかね?」
「ちみなら大丈夫だ!」
「そうだといいんですが……」
二人は森へ向かって歩き始めた。
その先に待っているのは――
ラウラたちがまだ知らない。
とんでもない速さを持つ、小さな魔物だった。




