↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ハズレ職】素材採取士の私。お金のために採取していたら世界最強になりました  作者: きらっち


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/53

15話 ぎぇぇぇ!効いてないじゃん!

森の中。


けたたましい叫び声が響いている。


「ぎぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 ラウラは走った。


 とにかく走った。


 全速力で。


「無理無理無理無理! 大きすぎますってぇぇぇ!!」


 背後から、巨大な翼が羽ばたく音が聞こえる。


 バサッ!


 バサッ!


 バサァッ!!


「ひぃぃぃぃ!」


 振り返ると、ホワイトバードがものすごい勢いで追いかけてきていた。


「なんで!? なんでこんなに速いんですか!?」


 ラウラは必死に走る。


 けれど――。


 すぐに追いつかれた。


「うそぉ!?」


 ホワイトバードが頭上から迫ってくる。


 ラウラは慌てて魔法袋に手を入れた。


「こうなったら……!」


 取り出したのは、いつもの石。


 毒草を塗りつけて作った――毒石だ。


「これでどうですかぁぁぁ!!」


 思いきり振りかぶって――。


「えいっ!!」


 ブンッ!


 毒石が飛んでいく。


 そして――。


 ゴンッ!


 ホワイトバードの体に直撃した。


「……」


「……」


 ホワイトバードは、何事もなかったかのように飛んでいる。


「…………」


 ラウラは走りながら叫んだ。


「ぎぇぇぇぇえ!!」


「効いてないじゃん!!」


 私はさらに速度を上げた。


「どうしようどうしようどうしよう!」


 でも、立ち止まるわけにはいかない。


 だったら――。


「もう一個!」


 魔法袋から毒石を取り出す。


「えいっ!」


 ブンッ!


 ゴンッ!


「もう一個!」


 ブンッ!


 ゴンッ!


「もう一個ぉ!」


 ブンッ!


 ゴンッ!


「全然効いてないぃぃぃ!!」


 ラウラは逃げながら、次々と毒石を投げた。


 一個。


 二個。


 三個。


 四個。


 五個。


 投げているうちに、ホワイトバードが少しずつ高度を下げてきた。


「はぁ……はぁ……!」


 ラウラは必死に走る。


 すると――。


 投げた毒石の一つが、大きく開いたホワイトバードの口へ飛び込んだ。


「……あ」


 ごくん。


「入った……?」


 でも、ホワイトバードはまだ飛んでいる。


「……やっぱり駄目なんじゃ……」


 ラウラはそれでも走り続けた。


 しばらくすると――。


「……?」


 背後から聞こえていた羽ばたきの音が変わった。


 バサッ。


 バサッ。


 そして――。


「ギ……ギェ……」


「え?」


 ホワイトバードが苦しそうな声を上げた。


「ギェェ……!」


 翼が大きく揺れる。


 飛ぶ高度がどんどん下がっていく。


「え?」


 ラウラは走りながら振り返る。


 ホワイトバードは苦しそうにもがいていた。


「もしかして……毒が効いた?」


 その直後。


 ドサァッ!!


 ホワイトバードが地面に落ちた。


「ひっ!」


 ラウラは慌てて距離を取る。


 そして、そのまましばらく動けなかった。


「はぁ……はぁ……」


 息を整える。


 ホワイトバードを見る。


 ……動かない。


「…………」


 しばらく待つ。


 ……動かない。


「…………」


 さらに待つ。


 ……やっぱり動かない。


「え?」


 ラウラは恐る恐る近づいた。


「やっつけた……?」


 その瞬間。


《スキル『投てき術』がレベル2に上がりました》


「え?」


 続けて――。


《ステータスが上昇しました》


 目の前に文字が浮かぶ。


 体力 45+15

 スタミナ 40+20

 魔力 2

 力 4

 防御 6

 速度 13+7


「…………」


 ラウラはしばらく画面を見つめた。


「……やったぁ!」


 思わず両手を上げる。


「やりました!」


 ……いや。


 やったのは私というより、毒石なのでは?


 でも、そんな細かいことはどうでもいい。


「私、ホワイトバードを倒しました!」


 初めて自分一人で魔物を倒した。


 しかも、ちゃんとスキルまで上がった。


「えへへ……」


 嬉しい。


 これなら……。


「逃げながらでも、魔物を倒せるんだ……!」


 ラウラは少しだけ自信を持った。


 ただし。


「……できれば、もう二度とあんな大きい鳥とは戦いたくないです」


 


 ホワイトバードの死体を見る。


「そういえば……素材」


 今回の目的は討伐ではない。


 素材だ。


 ラウラはすぐに気持ちを切り替えた。


「《素材採取》!」


 スキルを発動する。


 すると――。


 ホワイトバードの体のあちこちに反応が現れた。


「おお……」


 小さなナイフを取り出した。


「どこから採ろうかな」


 まずは分かりやすいところから。


 爪。


 くちばし。


 羽。


 受付嬢さんが教えてくれた素材が、次々と取れていく。


「これも素材なんだ……」


 丁寧に採取していく。


 そして――。


「……あれ?」


 一か所だけ。


 他よりも強く反応している場所があった。


「ここ……すごい」


 慎重にナイフを入れる。


 すると――。


 コロン。


「……?」


 小さな石が出てきた。


 魔石だった。


「魔石……中?」


 魔石の中でも、少し大きめのものらしい。


「これも売れるのかな」


 魔法袋にしまう。


 そして、もう一つ。


「……ん?」


 さらに強い反応がある。


 そこを丁寧に採取した。


「これは……?」


 出てきたのは、丸く硬い珠だった。


 淡い光を帯びている。


《鳥珠》


「鳥珠……?」


 素材図鑑を開く。


 そこには――。


『鳥系魔物から稀に採取される希少素材』


 と書かれていた。


「レア……」


 思わず笑ってしまう。


「レア……」


 もう一度見る。


「これ、いくらになるんだろう……」


 ニヤァ。


 口元が自然に緩んだ。


「金貨……何枚かなぁ」


 ホワイトバードの素材を魔法バッグにしまった。


 そして――。


「帰ろう!」


 来たときとは違う意味で、私は全速力で町へ向かった。


 もちろん。


 魔物から逃げるためではない。


 早く素材を売りたいからだ。


   


「こんにちは!」


 ギルドに戻ると、受付嬢さんが顔を上げた。


「あ、ラウラさん。お帰りなさい。ホワイトバードは……」


「倒しました!」


「…………」


 受付嬢さんが固まった。


 周囲にいた冒険者たちも振り返る。


「……え?」


「ホワイトバードを?」


「ラウラちゃんが?」


 ラウラは胸を張る。


「はい!」


 ……本当は逃げ回って毒石を投げただけだけど。


「一人で……?」


「はい!」


「どうやって……?」


「毒石を投げました!」


「…………」


 ギルド内が静まり返る。


 そして――。


「毒石……?」


 誰かが呟いた。


「毒石って……毒の石?」


「はい……」


「ホワイトバードに?」


「はい!」


 ラウラは元気よく答える。


 みんなの視線が集まる。


 なんだろう。


 ちょっと恥ずかしい。


「と、とりあえず……素材を見ていただけますか?」


「は、はい!」


 受付嬢さんが慌てて鑑定用の道具を用意する。


 魔法バッグから素材を取り出していく。


 爪。


 くちばし。


 羽。


 皮。


 魔石。


 そして――。


「これが……鳥珠です」


「…………」


 受付嬢さんの目が大きく開く。


「鳥珠……?」


「はい。レア素材みたいです」


「…………」


 受付嬢さんは鳥珠を何度も確認する。


 そして、周囲の冒険者たちも集まってきた。


「ホワイトバードの鳥珠だ……」


「本物なのか?」


「しかも状態がいい……」


 ラウラはよく分からないまま首を傾げる。


「そんなに珍しいんですか?」


「珍しいですよ!」


 受付嬢さんが即答した。


「……そうなんだ」


 ラウラは再び鳥珠を見る。


「いくらになるんだろう……」


 すると受付嬢さんが査定額を告げた。


「すべて合わせまして――」


 少し間を置いて。


「金貨六枚です」


「…………」


 ラウラは固まった。


「……六枚?」


「はい」


「金貨……六枚?」


「はい」


「…………」


 ラウラの顔が、ゆっくりと緩んでいく。


「……えへへ」


 金貨六枚。


 つまり――。


「六十万円……」


 ラウラは両手を握りしめた。


「やったぁ!」


 ホワイトバード。


 怖かったけど。


 逃げたけど。


 追いかけられたけど。


 最後には――。


「お金になったぁ……!」


 ラウラは満面の笑みになった。


 そして、ふと思う。


「……そういえば」


 ラウラはこれまで稼いだお金のことを考えた。


 最初の薬草。


 ハイオークの素材。


 鉄鉱石。


 エルドアン鉱石。


 赤土。


 ストーンアントの素材。


 そして今回のホワイトバード。


「今、私のお金って……」


 ラウラは魔法袋の中身を確認する。


「…………」


 数字を確認して。


「…………」


 もう一度確認して。


「…………」


 ニヤァ……。


「ふふっ」


 口元がどんどん緩んでいく。


「ふふふふ……」


 ラウラは一人で小さく笑った。


「これだけあれば……」


 大きなお家。


 美味しいご飯。


 ふかふかのベッド。


 あったかいお風呂。


 そして――。


「働かなくても……のんびり暮らせる日が、近づいてきたかも……」


 ラウラは夢を見るような目で、金貨を眺める。


「えへへ……」


 素材採集士。


 みんなからはハズレ職と言われた。


 でも。


 ラウラにとっては――。


「最高のお仕事かもしれません……!」


 こうしてラウラは、また一つ。


 お金持ちへの道を進んだのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。