13話 ぎょぶりん 来ないでください。
森の中。
ラウラは今日も薬草を採っていた。
「薬草、薬草……」
《素材採取》を使いながら、見つけた薬草を一つずつ丁寧に採取していく。
青葉草。
毒草。
麻痺草。
どれもきちんと採取して、魔法バッグへ入れていく。
「いっぱい採れたなぁ……」
そんなことを考えていた、そのとき。
――ピコン。
突然、頭の中に音が響いた。
「……?」
目の前に文字が浮かぶ。
《スキル《素材採取》のレベルが2に上がりました》
「えっ」
ラウラは目を丸くした。
「レベル、上がった……?」
さらに文字が続く。
《新しいスキルを取得しました》
《素材感知》
「素材感知?」
聞いたことのない名前だ。
ラウラは首を傾げる。
すると、頭の中にスキルの説明が浮かんだ。
《素材感知》
周囲に存在する素材を感知できる。
ただし、正確な場所や個数までは判別できない。
「……!」
ラウラは立ち上がった。
「周囲にある素材が分かるんですか?」
もう一度、スキルを使ってみる。
すると。
なんとなく。
森のあちこちに、いろいろな「何か」があるのが分かる。
薬草。
毒草。
木の実。
鉱物。
石。
「すごい……」
今までは、歩き回って探さないといけなかった。
それが。
「これなら……」
ラウラは周囲を見回す。
「素材がありそうな方向だけ分かれば、探す手間がかなり省ける!」
これは採取士にとって、とんでもなく便利なスキルだ。
「やったぁ……!」
ラウラは嬉しくなった。
これで。
もっと効率よく採取できる。
もっとたくさん集められる。
そして。
もっとお金になる。
「えへへ……」
ラウラは満足そうに笑った。
その後。
ラウラは木の根元に座り込んだ。
「…………」
そして。
さっき採った毒草を取り出す。
「これ……」
ラウラは毒草を見る。
昨日考えた。
石を投げる。
でも。
普通の石を投げるだけでは、たいしたダメージにならないかもしれない。
だったら。
「石に毒をつけたら……?」
ラウラは近くにあった平たい石を拾った。
その上に毒草を広げる。
「……こうして」
そして。
別の石を使って、毒草をすり潰していく。
ごりごり。
ごりごり。
「…………」
ごりごり。
しばらく続ける。
毒草が細かくなっていく。
汁が出てくる。
「……これを」
ラウラは平たい石の上に置いた石へ、毒草を塗りつける。
ぺたぺた。
「…………」
私はじっと見る。
ただの石。
でも。
表面には毒草の成分がしっかりと付いている。
「…………」
そして。
「できた……!」
ラウラは目を輝かせた。
「毒の石!」
思わず叫んでしまう。
「毒の石です!」
ラウラは完成した石を持ち上げた。
「これなら……!」
魔物が現れたら。
毒の石を投げる。
そして。
逃げる。
「もしモンスターが現れたら、これを投げて逃げればいい」
ラウラは想像する。
毒の石を投げる。
魔物に当たる。
毒が効く。
その間に逃げる。
「逃げてる間に倒せたらいいのに……」
うん。
それが一番いい。
ラウラは満足して、毒の石を魔法袋にしまった。
「もっと作ろう」
石が必要だ。
ラウラは立ち上がる。
「石、石……」
素材感知を使う。
すると。
あちこちに石がある。
「便利……!」
ラウラはさっそく石を拾い始めた。
一個。
二個。
三個。
「これも使えそう」
四個。
五個。
「これも」
六個。
魔法袋へどんどん入れていく。
そのとき。
「…………?」
茂みが揺れた。
ガサッ。
「…………」
ラウラは固まった。
ガサッ。
何かが出てくる。
緑色。
尖った耳。
小さな体。
手には粗末な武器。
「…………」
私は目を見開いた。
「……あ」
ゴブリン。
「ぎょぶりん!!!」
ラウラは叫んだ。
ゴブリンも驚いたようにこちらを見る。
「ギャッ!?」
「来ないでくださいぃぃぃ!」
ラウラは後ずさる。
でも。
今日は違う。
ラウラは魔法袋に手を入れる。
「……これ!」
取り出したのは。
さっき作った毒の石。
「えいっ!」
ひゅるるるる――。
「…………」
思ったより。
遅い。
ものすごく遅い。
毒の石は、ひょろひょろと空中を飛んでいき。
「…………」
ぽすっ。
ゴブリンの胸に当たった。
「…………」
ゴブリンが石を見る。
私も見る。
「…………」
「…………」
ラウラは思った。
――これ、効くのかな?
次の瞬間。
「ギャアアアアアッ!」
ゴブリンが叫んだ。
「ひぃっ!」
ラウラは反射的に逃げ出した。
「怖いですぅぅぅぅ!!」
全力疾走。
後ろを見る。
ゴブリンが追ってくる。
「来ないでくださいぃぃぃ!」
走る。
走る。
走る。
「はぁっ、はぁっ……!」
それでも追ってくる。
「まだ元気なんですか!?」
ラウラは森の中をひたすら逃げ続けた。
三十分後。
「はぁ……はぁ……」
ラウラは木の陰からこっそり後ろを見る。
ゴブリンはまだ追ってくる。
「…………」
逃げる。
さらに三十分後。
「はぁ……」
ラウラはまた振り返る。
今度は。
ゴブリンの姿がない。
「…………?」
ラウラは恐る恐る周囲を確認する。
「……いない?」
少しだけ戻ってみる。
すると。
「…………」
地面に。
ゴブリンが倒れていた。
「…………」
ラウラは目を丸くした。
「……倒れてる」
近づく。
ぴくりとも動かない。
「…………」
ラウラは恐る恐る指先で確認する。
「……本当に倒れてる」
そして。
「やったー!!!」
ラウラは両手を上げて喜んだ。
「倒せた!」
毒の石。
すごい。
「すごいです!」
ラウラは自分で作った毒の石を見つめる。
「投げて、逃げるだけで……!」
その瞬間。
――ピコン。
「?」
また頭の中に音が響いた。
《スキル《投てき術》を取得しました》
「…………」
ラウラは表示を見つめる。
「投てき?」
説明を読む。
《投てき術》
物体を投げる際の精度・速度・威力を補正する。
「…………」
ラウラは足元の石を拾う。
「じゃあ……」
少し離れた木を見る。
「えいっ」
ひゅっ!
――ドンッ!
石が木の幹に命中した。
「…………」
私は目を丸くする。
さっきとは全然違う。
「…………すごい」
ラウラはもう一度、石を見る。
「これなら……」
魔物に近づかなくてもいい。
石を投げる。
毒の石を投げる。
そして。
「逃げる!」
それだけでいい。
ラウラは嬉しくなった。
「私、武器を手に入れました!」
ただの石。
でも。
ラウラにとっては立派な武器だ。
そして。
投げるためのスキルも手に入った。
「これなら……」
ラウラは胸を張る。
「魔物が出ても、ちょっとだけ安心です!」
……もちろん。
魔物を見たら逃げることに変わりはない。
むしろ。
「投げてから逃げればいいんですね!」
新しい戦い方を覚えたラウラは。
今日も元気に。
魔物から逃げるのであった。




