第2章 第23話 『光のあとに残るもの』
「騎士団長、少し状況を整理したい。聞いてくれるか?」
「ルディアン殿下」
王城の対策室では、騎士の配置や先発隊からの報告が通信用魔道具で次々と届き、混乱が広がっていた。
「国を横断する巨大ダンジョンが出現し、そこから魔物が出現。ダンジョンはすべて繋がっているわけではなく、穴があればそこから外へ出てくる」
「ええ。穴に近い村が襲われ、死傷者も出ています。ただ、王都に近い地域であればすぐに救援を送れますが、遠方の場合は監視塔への転移を経由する必要があります」
「冒険者や巡回の騎士がいれば助かる可能性はあるが……」
ルディアンは唇をかみ、拳に力を込める。
「私が謁見室で報告を受けたのは、発生から三刻後だったか」
騎士団長は報告書を見直す。
「……ええ、その通りです。その後、西側は竜騎士へ。王都寄りの中央はギルドの冒険者へ。東側は……後手に回りましたが、近場の実力者に任せています。現在は一部騎士団を監視塔経由で転移させています」
三刻から、さらに八刻。
ダンジョンは消えた。
東も、中央も、西も。
だが、内部にいた魔物は檻から解き放たれたように、人や物を襲い始めた。
被害は、さらに広がっているはずだ。
そして——
謎の光が差し、魔物が消滅していく。
だが、光が届いていない地域もある。
書記官が地図に印をつけていく。
「……このようなことを言うべきか迷いますが」
騎士団長はルディアンの顔をうかがう。
「彼女の……力によるものではないかと」
「……ああ。私もそう思う」
「彼女の力を知っている者であれば、同じ結論に至るでしょう」
「だが、知らない者にはダンジョンの影響に見えるだろうな」
ルディアンは静かに続ける。
「私は実際にダンジョンを見ていない。消えた瞬間も、光も……」
「現地を見に行くとかは勘弁してくださいよ」
「……何も言っていないが?」
「これは、失礼いたしました」
(だが、これ以上被害が広がるなら——)
⸻
◇ ◇ ◇
『晴歌。目を開けてもいいぞ』
白い空間は、先ほどまでの無機質さを失い、小さな光が漂う幻想的な空間へと変わっていた。
『見てみろ』
白い神が手を振ると、ヴィルティア王国全体を見下ろす映像が浮かび上がる。
国を横断していた巨大ダンジョンは消えている。
だが、地形が変わっている場所も見える。
『丸い光が当たっている場所は、魔物が消えているようだな』
安堵の息が漏れる。
(良かった……)
だが——
映像がズームされ、別の場所へと移る。
『やはり……私は今回も失敗したな』
冒険者、母子、武器を握ったまま倒れている男。
都市、村、街道。
至るところで、人が倒れている。
その傍で泣いている者もいる。
——見ていられない。
私は顔を背けた。
映像が消える。
白い神は、再び問いかける。
『観てわかっただろう。私は、自分の世界の住人までも消してしまう。だから私を——』
「違う」
「私が力をコントロールできないせいだよ」
「ティオとフィアナと友達になって、リュゼルと出会って……ここにいてもいいと思ってた」
「でも、元の世界のことなんて、忘れてて……」
「陽翔や、お父さんのことも……全然、考えてなかった……」
『晴歌……』
「医者になりたいって言ってたのに」
「私のせいで、こんなに……」
「結局、人殺しになっちゃった……」
白い神は何も言えず、ただ晴歌の背を見つめていた。
⸻
◇ ◇ ◇
王都近郊——巨大ダンジョンがあった場所。
双子のエルフと冒険者たちは、生存者を探して瓦礫をかき分けていた。
探索魔法を使い、反応を探る。
ダンジョンに近いほど、生存者は少ない。
建物も壊滅的だった。
倒れている者の中には、もう動かない者も混じっている。
遠くから声が聞こえる。
「ティオ、何か聞こえない?」
「……聞こえる。でも、それより——」
ティオは探索魔法に集中する。




