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ただ帰りたいはずだったのに、私は壊す者になった  作者: 川浪 オクタ
第2章 『束の間の平穏』

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第2章 第22話『神の告白、三つの選択』

 真っ白な空間の中央に、ぽつんと置かれたソファとテーブル。


 テーブルの上には色とりどりのフルーツ、可愛らしい色のマカロン、大きないちごが乗ったショートケーキ、そして落ち着く香りの紅茶。


 晴歌と白い神は、互いに目を見つめ合っていた。


「……今なんて言ったの?この世界がどうなるの?」


『私を消せば、この世界も消える。この世界を創ったのは私だからな』


 晴歌の手が、無意識に震えた。


「もし、あなたを消したとして、私はどうなるの?」


『……おそらく、他の神々の判断に任せることになる』


 白い神が視線を逸らす。


『お前は私が、他の神の世界から無理やり連れてきた。それでいて、神にも匹敵する力を持っている。元の世界に戻れるかは……私にはわからない』


「リュゼルは……?ティオやフィアナたちはどうなるの?」


 沈黙。


 白い神は俯いたまま、小さな声で呟いた。


『……聡いお前ならわかるだろう』


 胸が、きゅっと締め付けられる。


(この世界も、消える)


 二人は互いに俯く。


 真っ白な空間が、さらに大きく広がって無機質に感じた。


 ◇ ◇ ◇


「……私はもう、消したくないのだ」


 泣きそうな声だった。絞り出すような、震える声。


『お前は……自分でもどうにもできないことはあるか?』


 晴歌は黙って聞いていた。


『頭ではわかっている。教えられた通りに世界を創り、調整してきた』


『けれど必ずうまくいかない。修正しようとしても、戻せない。正せない』


『そして世界が消滅する。使命として世界を創っても、結果壊れてしまう』


 白い神の声が、どんどん小さくなっていく。


『他の神からも幾度となく助けられた』


『なのに、できない』


『情けなさと、無念さと、申し訳なさに……もう』


『苦しいんだ……』


 晴歌は何も言えず、ただ、聞くことしかできなかった。


 この世界に呼ばれて、生きる術も教えられずに、放っておかれた。


 不老不死のおかげか、死ぬ目に遭っても生きていられたが、知り合いも誰もいないひとりぼっちで、どれほど孤独だったか。逃げたくても、逃げられない。


 そんな状況を創ったあんたがーー


 怒りが込み上げてきた。


 けれど、彼がそうしてしまった理由がある。


 でも、簡単には許したくない。


「……やっぱり上に文句言った方が良いかな」


『上……?』


「創造神」


『そんな簡単に会いに行ける方ではない。私も一度も会ったことがない……』


「えっ!? どうやって世界とか創るの?」


『それは……体に組み込まれているような、無意識に近くて……』


「そんなのおかしいって!! 上の人がそうだから、あなたも困ってるんでしょ?困っていても助けもしてくれないのって、無責任ってやつじゃない?」


『でも他の神はちゃんとできている。あいつだって……』


 ◇ ◇ ◇


「私は医者になりたいのは、今でも変わらないよ」


『……』


「おじいちゃんの影響もあるし、いつかは病院を継ぎたい」


「——だけど」


 晴歌は拳を握りしめる。


(帰る……)


 陽翔(はると)の最期が、頭をよぎる。


(……もう、遅い)


「嫌な目にも遭ったし、一発殴りたい気持ちもある」


「でも、私は……あなたを助けたい」


『晴歌……』


 白い神が顔を上げた。その瞳には、驚きと、わずかな希望の光が宿っている。


 その瞬間、晴歌の周囲にシャボン玉のようにきらきらとふわふわと宙に浮く光が現れた。


「これって……?」


『晴歌! 願え!』


 何を願うかは、もう決めている。


 ——この光が意味するものは——


 ◇ ◇ ◇


「巨大ダンジョンが消滅しました!」


 対策室に緊張が走る。


「ただし、内部の魔物が拡散。各地で被害が発生しています!」


「それと、魔物が突然消失したとの報告も上がっています」


「……何だと?」


 ルディアンの表情がわずかに変わる。


「発生地点はばらばらです。光のような現象を見たという証言が複数——」


「……続けろ。避難と殲滅を優先しろ」


 ルディアンは即座に指示を出した。

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