03-19-0099
Side:アッシュ
私とロッドン殿はハンター協会を出たが、私は武具屋に行く事を伝えて歩いて行く。
町中の人に聞けば場所は分かったので移動し、そこで私は目的の物を探す。
「腕防具が壊れたからの。それを探しておるのか?」
「それもいいのだが、それよりも腕盾が無いかと探している。
あちらの方が守れるのではないかと思ってな。
それに敵を押し付けるにも、そちらの方が都合が良さそうなので」
「ああ、腕盾か。確かにワシのように持つ盾はランタンがあると難しいな。
そうなると腕に装着する腕盾でないといかんのう。
とはいえ、ああいう盾は小さいのが普通じゃ。あまり防御には期待できんぞ?」
「それでも腕防具で受け止めるよりはマシだと思う。
上手く牙が食い込むのは防いでくれたが、流石に焦る程度には力が強かった。
この通りにひしゃげてしまっているからな」
「流石は統率者じゃの。簡単に鉄の腕防具を壊してきよる。
アッシュの腕だから耐えられておるが、これが細っこい体の種族なら腕まで潰されておったであろうよ。
そう考えると盾を持ちたがるのは分かるわい」
ロッドン殿と会話をしながら探し、私は直径で25センチの鉄の腕盾を購入。左腕に装着した。
形は普通の円盾であり、内側に反っていない物だ。
奴隷仲間の一人が、上手く使えないなら内側に反っている盾は使うなと言っていた。
敵の武器が逸れて、逆に傷つきかねないと。
実際にそういう危険性はあるらしく、それなら端が一段盛り上がっている盾を買えと言っていたのだ。
そこで敵の刃先が止まったりするので、内側に反っている危ない盾よりは使い勝手が良く危険が少ない。
ああいう盾は技術をしっかり持ち、流す方向を操作できる者でないと危険すぎる。
そう教えられたのを思い出す。
「それは正しいの。基本的にああいう盾を使う者は多くない。
なぜなら内側に反っている盾は基本的に決闘用なのじゃよ。
闘技場での戦いとかの。そういう場でなければ然して使えん」
「そうなのか?」
「うむ。例えばだが、戦場では沢山の攻撃が来る。
一つの攻撃に合わせておると、他の攻撃を胴体や足に流してしまう恐れがあるのだ。
それにモンスターの攻撃は苛烈じゃからな。予期せぬ方へ流れる事もある。
アレらは常に半身で受ける事を基本にせねば自分に当たるであろう?」
「確かにそうだな。
普通に真っ直ぐ構えていては、外方向に流さぬ限り胴体の方に流れて来る」
「そうじゃ。
それ故にあの盾を使う際には半身になり、どちらに流しても傷を受けぬように構えねばならん。
しかし先程も言うた通り、戦場では一度の攻撃しか来んなどという保証は無い。
矢も飛んでくるんじゃから、アレ系の盾では無理じゃ」
「モンスターも複数が相手の事は多いし、特殊な攻撃もある」
「うむ。
鞭のようにしならせて攻撃してくる者もおるし、あのロックセンチピードのように巻き付いてくる者もおる。
半身を前に出していては攻撃が遅れる事もあるし、なによりモンスターとて全て頭が悪い訳ではない。
こちらの意図に気づく者もいるし、裏を掻いてもくる」
「あのロックセンチピードもそうだったな」
「アレは統率者だったからの、尚のこと愚かではない。
そうなってくると、無理にあの内側に反った盾を使う必要は無いのだ。
役に立たぬとまでは言わぬが、素人は扱わん方がいいし用途が限られる。
しっかり守れる盾を使うのが一番じゃ」
私とロッドン殿は会話をしつつも歩き、そして坑道の前までやってきた。
再び火を点けて来たランタンを左手に持ち、そのまま坑道に入って進んで行く。
前回来て分かっているので、崩落している所までは武器を出さない。
それにモンスターが居ても短剣で対処できるだろう。
酒場ではあえて出さなかったが、そもそも私の短剣もナイフも鉄製ではない。
全て赤鉄製なのだ。
だからこそ、わざわざ硬い果物の皮むきなどで使いたくはなかった。
高い買い物だったからな、しっかりした場面で使いたい。
前を照らしながら歩き、崩落場所に来たのでスコップで掘っていく。
ロッドン殿は魔法で開けようと言ってくれたが、流石に鉄級への昇格試験だ。
ここは自分の手でやるべきだろう。
私は【身体強化】で土砂に刺しこみ、持ち上げて取り除く。
これは持ち上げる際に【身体強化】をした方がいいだろうか?
どちらも試しつつ掘っていると、向こう側へと道が開く。
結論としては持ち上げる時の方が良かったが、そこまで苦労はしなかったな。
「ワシが薄いものの硬い壁にしておいたからな。
それに天井なども固めておいた。
だからこそ戻るのに時間が掛かったのじゃよ」
「そうだったのか、通りで治療院を出てからのはずだ」
私は話をしつつも<邪獄樹の棍棒>を取り出し、右手に持って進んで行く。
少なくともロックセンチピードの統率者を倒せているので、そこまでロックセンチピードに苦労をする事は無いと思う。
そんな予想をしながら坑道の奥へと進んで行く。
すると、早速とばかりにモンスターが現れたが、しかしその相手は微妙に厄介なものであった。
「まさかアースワームまでおるとはのう。
そやつには打撃武器が碌に効かん。短剣で戦え」
「分かった」
私は<邪獄樹の棍棒>を仕舞うと、右腰から短剣を抜く。
そして構えて待つが、アースワームとやらはうねうね動いているだけだ。
ミミズの茶色版と考えれば分かりやすいが、大きさが全く違う。
直径で15センチはあるし、長さは6~7メートルもある。
思っている以上に大きいが、そもそもコイツは土の下から現れた。
つまり坑道の奥に居た訳ではないという事だ。
こんなヤツがどんどんと出て来ると厄介極まりないな。
私は盾を構えてゆっくりと接近する。
するとアースワームは先端を8つに開き、そのまま私に突撃して来た。
口の中らしき場所に小さな牙が大量に並んでいるのが見える。
開いた部分は1つ5センチ程度の大きさだ。
しかし直径15センチから開いているので、予想以上に大きく見える。
私はそんな攻撃をしてきたアースワームに対して盾を出す。
円盾とぶつかったアースワームはギザギザの歯で腕を包もうとしてくる。
しかしそれより速く【身体強化】で短剣を口の根元の右側に突き刺した私は、そのまま下へと切り裂いた。
「!?!?!!」
発声器官が無いので声は出ないが、明らかに大きな傷なのだろう。
いきなり暴れ始めた。
いや、のたうち回っているのかもしれない。
それは分からないものの、チャンスだと思った私は一気に攻める。
のたうち回っているアースワームのタイミングを見極め、口の部分辺りを切り裂く。
上手く開く部分の一部を切り裂けたからか、口が開いたままのような形になり、そこから液が漏れてきた。
危険な物の可能性もあるので迂闊に近寄る事はしない。
胴体を切り裂けば勝てるだろうが、そもそもコイツで売れる場所はどこなのだろう?
そんな疑問が湧いてくるが、今は倒す事に集中しよう。
私は胴体の真ん中部分に近づくと、暴れる隙を見つけて切り裂いた。
すると体液がドバッと出て来たものの、その時には離れていたので掛かる事は無かった。
落ちても音はしないので消化液系統ではないのだろう。
酷い魔物になると「ジュージュー」音がする消化液が出てきたりするので危険だ。
なので離れて確認しているのだが、暴れる力が無くなっていき、そしてピクリともしなくなった。
「どうやら死んだようじゃが、やはり短剣だと暴れるのが厄介じゃのう。
剣であれば難しくはないのじゃが、こやつらブヨブヨしておって打撃武器が効き辛いんじゃよなぁ。
その所為でワシは嫌いなモンスターとなる」
「打撃武器が効きにくいというのは厳しいな。
中にはこういうモンスターも居ると覚えておこう」




