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03-18-0098




 Side:アッシュ



 私達は支部長室の先にある梯子を下りて地下を進む。

 そしてその先にあった扉のカギを支部長が開けると、その中には<混沌の種>が多く入れられていた。

 もちろん王都に比べれば格段に少ないが、王都が多すぎただけなのかもしれない。


 「驚かんところを見るに、王都はもっと多かったようだな?」


 「王都では3つの部屋に分かれていましたよ。

 それぞれの部屋が半分以上は埋まっていました。

 それに比べれば少ないですね」


 「王都だから特に広いだろうし、それの3部屋が半分以上埋まっていたのか。

 それは姐御も手放しに誉めるはずだ。どこの支部でも<混沌の種>は頭の痛い問題だからな。

 それが片付くなら泣いて喜ぶヤツは多いだろう。

 他の支部へも顔を出していってくれ」


 「分かりました」


 私は会話をしながら次々と吸収していき、それを見て驚くロッドン殿。

 別に全てを伝える必要は無いので消している事にすればいい。

 私としては溜め込んでおきたいのだ、強いモンスター用の保険としてな。

 パープルオーガの強化はブルーよりも遥かに大きい。


 少し違うな。

 正しくはレッドからブルーへの強化よりも、ブルーからパープルの強化の方が大きいのだ。

 素の状態からレッドが2倍だとすると、ブルーはそこから1.5倍ぐらいになる。

 しかしパープルはブルーの倍ぐらいまで強化されるので、色々な意味で桁が違う。


 つまり通常の状態から2倍、1.5倍、2倍とされる訳だ。

 パープルが如何(いか)に桁違いかよく分かる。

 代わりに消費するのは澱(おり)のような魔力であり、普通の魔力は使用できない。

 なのでいつでも使える訳ではないし、消費量がかなり多い。


 できるだけ溜め込んでおかねば困るのだ。

 それに澱(おり)のような魔力が減れば、その分だけ通常の魔力が入る隙間が増える。

 つまり、澱(おり)のような魔力を吸収した段階で最大魔力量は増えているというわけだ。


 澱(おり)の魔力は澱(おり)の魔力であり、普通の魔力とは違うからか混ざる事は無い。

 なので2つを混ぜて使う事はどうやっても出来なかった。

 もしかしたら出来るようになる方法はあるのかもしれないが、今のところは見つかっていない。


 私が黙々と吸収していき、それを黙って見守る2人。

 訳の分からない構図だが、私は全て吸収すると部屋を後にする。

 これでこの町の<混沌の種>も終わりだ。

 後は空洞の中にどれだけ統率者が居るかだが………


 「あっ、そう言えば支部長に報告しておいた方がいいのでは? あの男の」


 「おお、そういえばそうじゃのう。すっかり忘れておったわい。

 <混沌の種>が消えていくという驚きの光景を見たからの。

 あんなヤツの事など頭から抜け落ちてしまったわ」


 「あの男?」


 私達は支部長室まで戻り、そこで話をする事に。

 すぐ近くまで戻ってきていたので支部長室に入り、支部長が扉に鍵を掛けるまで待った。

 その後、ロッドン殿が主体になって話していく。


 「昨夜到着したワシらは宿をとって酒場へと行ったのじゃが、そこで女ハンターに酒飲み勝負を挑んどるヤツがおった」


 「ああ、あの愚か者か。で、それがどうした?」


 「その男は<ヤッツガの実>とかいうのを魔銅のナイフで剥いて笑われとった。

 が、それが気に入らんかったのか、4番坑道の奥を勝手に掘って中に入っておったのだ」


 「なんだと!? あそこはモンスターが出て来ぬように封印しておいたのだぞ。

 にも関わらず勝手な事を……!」


 「ワシらが駆け付けた時には既に右腕に噛み付かれておった。

 その後は戦って倒したのだが、相手は説明したがロックセンチピードの統率者じゃ。

 それにやられたからか、混乱して喚いた後は呆けておったな」


 「私が治療院の医者に見せた時には、何やら「ブツブツ」と言っていましたよ」


 「ショックからの混乱を起こしたか。

 マヌケが愚かな事をやった結果だ、完全に己が悪いのだから放っておけ。

 そもそもハンターは自己責任であり、危険を確認して遠ざかるぐらいでちょうどいい。

 死ぬよりはマシだからな」


 「じゃの。名や金に逸(はや)って死ぬ者がどれだけおるか。

 長くハンターをしている者は皆、名や金ではなく命をとった者でしかない。

 下らぬ欲を掻く者から死んでいく、それがハンターよ」


 「うむ。それはともかくとして、坑道の中はどうだった?」


 「残念ながら分からん。あの男に邪魔されてロックセンチピードの統率者を倒しただけじゃ。

 ああ、勘違いしておるかもしれんので言っておくが、ロックセンチピードの統率者はアッシュが単独で倒しておる」


 「それは分かっている。

 流石に蛮族将軍の棍棒を持っているのだ、実力を疑う事は無い」


 それを聞いた途端、ロッドン殿は呆れた顔を私に向けて来た。


 「異空鞄も持っておるし、おかしいとは思っとったんじゃ。

 まさか蛮族将軍の棍棒と異空鞄とはのう。王様もとんでもない物を下賜したものじゃ。

 とはいえ蛮族将軍の遺言を考えれば分からんでもないか」


 「<扱える者が現れたら、くれてやってくれ>。そう初代の王は頼まれたと言われている。

 それから1000年を超える時が流れたが、やっと扱える者が現れた。

 それも蛮族将軍と違い、完全に暴走しない者の手にだ」


 「そこまで知っているのですか……」


 「わしにも現役の頃に多少の関りがあった貴族は居る。

 そして向こうが役に立ちそうな情報をこっちに送って来るのに合わせ、わしは金を支払う。

 向こうからすれば小遣い稼ぎであり、わしとしては最新の情報が得られる。

 お互いに損の無い取引だな」


 「ま、中央の貴族の小遣い稼ぎとしては真っ当な部類に入るものだ。

 ギリギリ罪にはならんだけで、危ない橋を渡っとるのも多くおるからな。

 それらに比べればマシであろう」


 「話を戻しますが、私達は助ける事を優先したので空洞の事は分かりません。

 そもそもロックセンチピードの統率者も出てきていただけです。

 崩落場所は空洞よりも手前のはずですから、まだそこまで行けてないんですよ」


 「確かに崩落地点では手前か。重ね重ね邪魔しかせんヤツだ。

 そいつは確か鉄2級だったはず。

 銅級まで落とすのには明確な罪がないと無理だが、今回は勝手に崩落現場を掘り返している。

 しかも向こうにモンスターが居ると知っていてだからな」


 「明確な罪として、銅級に下げても何ら問題あるまい。

 まあ、それ以前に腕を切り落とす羽目になるであろうから引退だがの。

 片腕では何も出来んよ」


 「ならば引退前に銅級に下げておくか。

 鉄級で引退したとか言われると面倒だからな。銅級に降格してからの引退としてくれるわ。

 そうすれば誇る事も出来まい」


 降格処分で引退など恥でしかないからな。

 確かに知らない者ならば鉄級で怪我をしたから引退だと誤魔化せるかもしれんが、銅級に降格して引退したではバレたら恥では済まない事になる。

 それでも、あの男ならしそうではあるが……


 「もし鉄級だったと喚いても、出来るのは村ぐらいであろうの。それも小規模な村だけじゃ。

 規模が大きくなるとハンター協会がある、調べられたら終わりじゃからの」


 「それでも愚か者ならやるだろうが、派手な恥を掻きたいなら掻けばいい。

 どうせ己で己の首を絞めるだけだ」


 話がまた変な方向に行ったので、私は強引に終わらせる事にした。

 ここで会話をしていても、空洞のモンスターが減るわけでもないのだ。

 さっさと行くに限る。


 「私は再び4番坑道に潜りますが、何かありますか?

 調べておかなければいけない事などですが」


 「いや、無いな。4番坑道のモンスターを早くなんとかしてほしいくらいだ。

 国からせっつかれているからな、それ以外には特に無い」


 「分かりました。それでは私達はこれで」


 私は一礼して支部長の執務室を辞した。


 これでやっと再び潜れるな。

 話し合いより戦っていた方が楽なのは、私が長く奴隷闘士をしてきたからかもしれない。


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