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 Side:アッシュ



 アースワームを倒した私達は先へと進んで行く。

 ちなみに死体を放置したのは帰りに回収すればいいからだ。アースワームで売れるのは皮だけらしい。

 なんでもアースワームなどのワーム系の皮は、基本的に水を弾くらしいので、雨具などに使用されている。


 他にも家の屋根に掛けている所もあるらしい。

 雨が多く降る地方では、雨で屋根が傷まないように掛けるのだそうだ。

 確かに家が傷むのであれば、皮の方が安上りなのかもしれない。

 家は建てるのに大きな金額が必要だ。それに比べれば……


 「そうじゃの。とはいえほとんどは雨具にされるがのう。

 っと、次はロックセンチピードの群れ…………」


 ロッドン殿が黙るのも分かる。

 ロックセンチピードは確かに居る、統率者よりも小さいのがだ。

 しかし空洞の中ではそれだけでなく、小さな虫達との総力戦のようになっていた。

 中には大きめの虫も居るのだが、そいつらがロックセンチピードを倒しているらしい。


 「アレは虫が虫を喰らっているのか?

 もちろん自然界では普通の事だが、モンスターでも似たような事は起こるのだな」


 「アッシュ、それどころではない。あの小さな黒い虫、あれは<悪食>じゃ。

 なんでも食って餌にする。

 そこから<悪食>と呼ばれておるのじゃが、あの虫は本当にマズい」


 「そうなのか?」


 「あの<悪食>は何でも食う上に繁殖速度が早いのだ。

 あまり大きくはない小さな虫であるが故にな。

 弱点は火をつける事なのだが、今ある火はランタンしかない。

 流石にこのままではマズいわ。後ろに下がるぞ」


 「分かった」


 私はロッドン殿が言うように後ろへと下がり、空洞の入り口から離れた場所で話し合いを行う事にした。


 「あの<悪食>をどうにかせんと殲滅した事にはならんぞ。

 しかしアレを殲滅するのは簡単ではない。

 空洞の中には<空気草>も沢山生えておったので、息が出来んというのも期待できん。

 あれは水さえあれば生きられるので重宝する草なんじゃ」


 「しかし今は虫達の呼吸を手助けしているわけか。

 仕方ないとはいえ、どうにもならないな。

 火をつけるには松明(たいまつ)を買ってくる必要があるが……」


 「あの<悪食>の弱点は火だ。

 やつらは異様に良く燃える虫でな、どうやら体に油を纏う事で何かしらを防いでおるらしい。

 よく分からんが、研究者がそう結論をつけたのを知っている」


 「油をな。

 それなら確かによく燃えるだろうが………アレだけ小さいと火を着けるのにも苦労するぞ。

 上手く出来るだろうか?」


 「どう考えても無理じゃろ。一旦戻って対策を考えるしかない。

 もはや鉄級の試験とか言うてはおれん。

 アレを何とかせねば国が何を言ってくるか分からんのでな。

 ハンター協会としても解決せんとマズいのだ」


 ロッドン殿の言っている事も事実だろう。

 そもそも王様から念押しをされたくらいだ。国としてもここの金鉱脈に期待しているのは確実。

 それが解決できませんでしたは、相当に立場を悪化させる。

 とはいえ昇格試験として単独で行うのは無理だろう。


 あれほどまでに虫が大量に居て争い合っているとなれば、単独での解決は難しい。

 更にはいたずらに刺激すると、私達が開通させた穴を通って出て来る可能性すらある。

 そうなったら最悪だ。


 しかも奥に見えたストーンゴーレムは動いてもいなかったので期待できない。


 「そうじゃの、まったく動いていないという事は敵視しておらんという事じゃ。

 それに虫達もストーンゴーレムには一切近づいておらんかった。なのでストーンゴーレムには期待できん。

 それよりも、まずは一旦町まで戻るぞ。あの鉄10級の女ハンターを探すんじゃ」


 「ジャネスと名乗っていた女性オーガ族か。

 確かに彼女は赤い髪だったが、【火魔法】が使えるとは限らないぞ」


 「鉄10級まで上がっとるのに魔法が使えんというのは、非常に考えにくい。

 そこまで行けば己の力量は正しく把握しておるし、使える物は何でも使うようになっとる。

 というか、そこまでせんと鉄10級には上がれんよ」


 「なるほど、加護の魔法も使えないという者は滅多に居ない。

 それが鉄10級という級位なのだな?」


 「それぐらい厳しい依頼もさせられるのが鉄級じゃ。

 銀級になれば更に厳しくもなるし、何より強制依頼をさせられるようにもなる」


 私達は帰りながら話していたのだが、ロッドン殿が再び【土魔法】の【土操作】を使っている横で話を続ける。


 「強制依頼?」


 「その地方などで、どうしても解決できぬ依頼などを強制的に受けさせられるんじゃ。

 それを嫌ってハンター協会に顔を出さぬ銀級ハンターも多い。

 とはいえ実力としては最高位とも言えるハンターだ、当然だが解決を求められる。

 どうしても駄目な場合は免除されるが、一応確認はせねばならん」


 「どうしても無理な場合というのは?」


 「例えば目的の場所にドラゴンが居座っておるとか、後は目的の物が既に無いとかの。

 そういう場合には依頼自体が無効になり免除される。

 それと既に依頼を請けておる場合じゃな。

 この場合は先に請けておる依頼が優先されるので、請ける必要は無い」


 「確かに嫌うのも分からなくはないな。

 それぐらい面倒臭そうではある」


 「とはいえ雑用依頼なら突っぱねられるので、そこまで気にするほどの事でもないのだがの。

 下らぬ雑用なので滞(とどこお)っておる依頼もあるが、そんな雑用に銀級を使う事は許されん。

 もしやれば支部長と副支部長が問答無用で解雇されるわ」


 「銀級を都合のいい駒にされても困るからか。

 そんな事になれば誰もが鉄10級で止めてしまうだろうからな」


 「それだけではない。

 ハンター証を紛失すれば木の1級から再スタートとなる。

 つまり、いつでも銀級を辞める事は出来るのじゃよ」


 「そんな事が多発したらハンター協会の信用も失墜するか。

 とはいえ銀級に上がるのにデメリットが多ければ、当然銀級を辞めるだろう。

 そこまで実力があるなら、木や銅の階級などすぐに超えられるだろうしな。

 まあ、面倒臭がって鉄級への試験すら受けない可能性もあるが……」


 「それもあるのう。

 どのみち強制依頼は面倒なものが多い。だから基本的に銀級は別の場所に移動したりはせん。

 自分のおる所なら仕方ないが、他の地域の面倒事まで引き受けたくないからの。

 アッシュが初めての銀級の巡回狩人になるかもというくらいだ」


 私達は町まで戻って来たが、ロッドン殿が驚きの事を言う。

 つまり銀級の巡回狩人は一人も居ないという事か?


 「そうじゃぞ。巡回狩人は鉄級までじゃ。

 それも確か鉄4級ぐらいの者ではなかったかと思う。

 それもあってマスターはアッシュに巡回狩人になれと命じたのかもしれんな。

 強制依頼というより、実力者の巡回狩人として」


 「なるほど、私をそう……っと、ハンター協会に着いたか」


 「とりあえず入って聞き込みじゃ。

 他の赤い髪の者がおったら募集を掛けるか」


 「強制は出来ないから、地道に頼むしかないな。

 最悪は松明(たいまつ)と油で何とかするしかないが」


 「そうじゃの。とりあえず<悪食>をどうにかせねばならん。

 アレさえ何とかすれば、後はモンスターを狩るだけで済む。

 しかし<悪食>はモンスターでさえない虫じゃからな、素材を含めて何の利益にもならん」


 「それなら金銭を支払った方がいいかもしれん。

 雇うという形なら大丈夫だろう」


 「それならしっかりと実力が分かっておる者にしておけ。

 金を払うと飛びつく阿呆がよくおるが、基本的にそういう連中は役に立たん。

 実力者は高くつくが、それでも優秀な事には変えられん。

 命が懸かっておるからのう」


 確かにそうだ。命が懸かっている以上は、誰でもいいとはならない。

 それだけ数多く雇えるお金があれば構わないだろうが、有象無象を連れて行っても死にに行くだけか。


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