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03-06-0086




 Side:アッシュ



 貴族街の門まで来たが、門番は只事(ただごと)じゃないと思ったのか剣を抜いてこちらに構えて来た。


 「私はヘイドルン・マーコック子爵である!

 現在賊に追われているが、王城への護送中だ!

 至急、門を開けよ!!」


 「「「「は、ははっ!!」」」」」


 門番は慌てて貴族街への門を開けようとするが、慌てているだけに剣を仕舞うのにも苦労している。

 こちらとしては剣など放り投げて門を開けてほしいが、それを思いつかない程に慌てているらしい。

 それよりも……!


 キキキン!!


 「本当にしつこいなと思うと同時に、いったいどれだけ投げナイフを持ってるんだ。

 いい加減にそろそろ無くなれ」


 「流石にそろそろ終わりだと思うわよ。

 向こうも想定外でしょう、盾ならともかく長物に全て防がれるなんてね!」


 「「「「「「!!!」」」」」」


 右から襲ってきている6名から、若干焦りなのか汗の臭いが感じられる。

 デュジュ殿の言う通り、私が長物で防いでいるのは想定外のようだ。

 とはいえ投げて来るナイフに合わせてポールアックスを移動させるだけでしかない。

 私はそこまで難しい事をしていないぞ?


 「ルザワンズを見てみなさいよ、必死になって毒ナイフを避けてるでしょうに。

 それからすれば私は気楽なものよ、アッシュが防いでくれるからね。

 ……っと、投げナイフが無くなったら突っ込んで来るわよ!」


 「了解!」


 私がデュジュ殿の前に出ると、賊の6名は一斉に短剣を抜いて襲って来た。

 おそらく投げナイフを沢山持つ為に、武器は小さな物しか持てなかったのだろう。

 6名全員が同じような鉄の短剣しか持っていない。


 私は自分から前に出ると、当たるに任せて【身体強化】で水平に振り抜く。

 右から左へと振り抜いたが、それでまず一人。


 ドッ!!


 「ぐ!!」


 その一撃で胴体が輪切りにされた賊は、上半身が地面に落ちる。

 この時点で残りの5名は動きが止まったが、止まったら攻撃を受けるとは考え無かったらしい。

 私は左に振り抜いたまま前にステップ、今度は強引に左から右へと振り抜く。


 ドゴッ!!


 「ぐあっ!!」


 今度は斧刃が当たらなかったものの、二の腕辺りに直撃を受けた者は地面に倒れて呻(うめ)く。

 慌てて武器を構えて態勢を整えるが、私は敵に近づきつつ持ち手を短く持ち替える。

 そして首に向かって細かく振り抜く。もちろん【身体強化】をしてだ。


 ドシュッ!


 「ガッ!?!」


 これで3人を倒したが、流石に相手も慌て終えたのか構えてにじり寄ってくる。

 おそらく3名で一気に襲ってくる気だろう。こちらを舐めるような気配は感じられない。

 私は右半身を後ろに持って行く半身になって構え、ポールアックスをしっかりと持つ。


 敵3名もジリジリと近寄ってきて、そして……


 「「「!!!」」」


 「ふっ!」


 私は3名が始動した瞬間、ポールアックスを【身体強化】をしながら横回転で投げた。

 相手はそれを想定できていなかったのだろう、いきなりの事に慌てながら直撃を受ける。

 そして私は素早く接近しつつ右手で短剣を抜き。倒れた右端の賊の喉を突く。


 素早く離れると真ん中の賊の喉を突くも、左端の当たっていなかった者は私から距離をとる。


 「ぐぼっ! がぁっ! げぇっ!」


 「がひゅ! かっ! ぁひゅっ!」


 「………」


 既に2人は助からないと理解したのだろう、残った一人は短剣を構えながらジリジリと後ろへ後退していく。

 逃げる気なのか、それとも私を殺す誘いなのか………


 そう思っていると、賊は突然私に向かって走り出した。

 そして右手に持った短剣を私に投げて来ると、隠していた左手を出す。

 そこには投げナイフが握られており、それを握った男は鬼気迫るような気迫で攻撃してくる。


 「しぃぃねぇぇぇぇぇぇっ!!!」


 私は飛んできた短剣を右手の短剣で弾いたが、その時には男が既に間合いの中に居た。

 そして身を捻って避けたものの、私は浅く太ももを切られてしまう。

 そのすぐ後に左手で敵の首を持って地面に叩きつけたものの、毒付きのナイフで切られてしまっていた。


 「はははははは、これは<コッカトリスの毒>だ! お前に助かる道は無い!!

 仲間の仇だ、毒で死ね!! ……ぐっ!!」


 賊は言うだけ言うと、自分の腕を切りつけた。

 元々捕まると困る連中だ、あの残った投げナイフは自決用だったのだろう。


 それよりも毒を受けてしまったのはマズい。近くにマーヤが居てくれれば治せるかもしれないが……


 「大丈夫、アッシュ?!」


 「近衛騎士デュジュ、さっさと行くぞ! 貴族街への門が開いた!」


 「ちょっと、<コッカトリスの毒>を受けたのよ!?」


 「<コッカトリスの毒>を受けた以上はまず助からん。

 我らがやるべき事は、この者達を王城に連れて行く事だ!

 庶民の命など、どうでもいい! 捨て置け!!」


 「なっ!?」


 「ロッドン! アッシュを神殿に連れて行くんだ、頼んだよ!!」


 「分かっておる!

 まさか相打ち覚悟で命を捨てて来るとはのう、予想外であったわ。

 こやつらどこの者か知らぬが、随分と気合が入った者どもじゃ。

 ……アッシュ死ぬなよ、すぐに神殿に連れて行く」


 「」


 私は既に意識が朦朧(もうろう)としており、ロッドン殿に碌に返事も出来ぬ有様であった。

 このままではマズいと思うのだが、私の体は私の言う事を聞かず………



 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 Side:???



 「ぬ………?」


 「ん………」


 ここは………私は確か<コッカトリスの毒>で意識を失ったのではなかったか?

 それで………いや、違う。


 私の体が動かせん、いったい何があったのだ!?

 まるで私の体が私の物ではないように感じられるぞ。


 そんな動けない私は、何故か勝手に顔を右に動かす。

 すると、そこには青白く輝く髪を持つ女性が裸で寝ていた。


 どうやら寝台で寝ているようだが………なんだここは?

 石造りのように見えるが、妙に荘厳な場所だ。


 動かない私は勝手に周りを見渡すが、どうやら花畑か何かの中央に居るらしい。

 そこに石造りの小さな神殿っぽいのがあり、そこに寝台が置かれている。

 つまり花畑の中央で寝ているらしかった。

 王侯貴族か何かか?


 そんな事を思っていると、隣の美女が起きたようだ。


 「………あら? 私より先に起きられていましたか。残念」


 「そなたは我の寝顔を見るのを本当に好むな。

 とはいえ、たまには我が先に起きて見ても構うまい?」


 「私の顔など見ても楽しくありませんよ」


 「何を申すのだ。我が愛するのは唯一そなただけ。

 我と番(つがい)になれるのもまた、そなただけなのだ。

 分かっておろうに」


 「そうは申されましても、私は……」


 「体も心も許しておいて、それでも番(つがい)になるのは躊躇(ためら)うのか?」


 「はい。

 私は浄化を司る存在(もの)、そして貴方は邪気を一心に受け止める存在(もの)。

 貴方が集め、私が浄化する。それが自然の摂理。

 ですが、そんな事を続ければやがて……」


 「そんな事はない。

 我は神、壊れる事も滅ぶ事も無い。何より我はその為に生まれし存在(もの)。

 己の為すべき事を放棄する事など許されぬ」


 「分かっております。分かっておりますが………」


 私が見ているのは神の視点らしい。

 が、私が入っている方が邪気を集める神という事は、この方が邪神という事か?

 となると、邪神は邪(よこしま)や邪悪な神ではなく、邪気という物を集める神だったのだな。


 そして目の前の女性はおそらく女神だろう。

 浄化を司るという事は浄化の女神なのだろうが………邪神が邪気を集め、浄化の女神が浄化する。

 これが自然の摂理だと言っていた。


 なら神々に滅ぼされたという邪神が居ない現在、自然の摂理はどうなっているのだ?


 ………ちょっと待て、今見ている光景は邪神が滅ぼされる前の光景か?

 いや、そもそも何故私がこんな光景を見ている? 夢にしたって明らかにおかし


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