03-05-0085
Side:アッシュ
私達は走り続け、夕日が出る前に王都に帰ってくる事が出来た。
門番に不審がられたものの、ロッドン殿が銀級の証を出して説明。
移動馬車を襲って来た者だと聞くと通してくれた。
なので我々は真っ直ぐハンター協会へ。
流石に王都でまだ明るいからか、襲ってくる者は居なかったな。
私達はそのままハンター協会に入るとサブマスターに説明。
サブマスターはすぐにマスターの部屋へと連れて行くように指示したので、私達は2階のマスターの執務室へと連れて行った。
「今日出て行ったのに帰ってくるとはねえ。
……とはいえ、話を聞けば帰ってくるのは分かるよ。
流石にローデオンを騙る賊ってなると、見過ごす訳にはいかない。
アタシのところにも酒の事で話し合いが持たれてるのは入ってきてる。
そしてコレじゃあ、調べるしかない」
「それよりも、王様まで情報を上げておいた方がいいのではないか?
足元に<獅子身中の虫>がおる………のは当たり前としても、ここまでの事を起こすとなるとな」
「そうだね。とはいえ話すならデュジュだろうさ。
あそこから陛下に情報を上げた方が安全だし、何より気取られにくい。
リテュナに言ってデュジュに情報を上げてもらおう。
ちょっと行ってくるから見張りを頼むよ」
そう言って執務室を出たマスターの代わりに、私達は盗賊だった者達を見張る。
とはいえ、この者達も駄目だと思ったのだろう、最早これまでという風に観念しているようだ。
それでも私は何も無いように緊張感を持って見張り続ける。
マスターが戻ってきたが、すぐに彼らの装備を剥いだ。
当然ではあるのだが、持って帰ってきた証拠なのだがな……
「証拠として持って帰って来たのは分かるさ。
とはいえ盗賊に武器を持たせておく必要は無い以上、剝ぎ取っておくのは当り前の事でしかない。
それよりロッドンがそこに思い至ってない事が驚きだよ」
「申し訳ない、マスター。疲れておって頭が上手く働かん。
酒が切れたのかもしれんな」
「子供の頃は飲んでなくても動けるんだから、酒は関係ないよ。
今は盗賊どもが優先だ、諦めな」
「はぁ………仕方ない。終わったらさっさと酒場に急行せねばな。
閉まっとったら目も当てられん」
そこまでして飲みたいものか? としか思えないのだがなぁ。
口に出すと五月蠅そうなので口には出さないが、なぜアレに夢中になれるのかが分からない。
酔えないから仕方ないのかもしれないが、私には必要の無い飲み物だな。
そんな事を考えつつも待っていると、執務室の扉をノックもせずに開けて入って来た者が2名居た。
私は音で気づいていたので扉から離れていたが、入って来たのがデュジュ殿だったので安堵した。
「相変わらずノックもせずに入ってくるじゃないか。
それはともかくとして、マーコック卿まで一緒とは………
どうやら陛下は本気で追及する気だねえ」
「ローデオンの名前を出したからよ。
流石に他国の名を騙って狼藉を働く、それも貴族領の騎士が居たとなればね。国家間の大問題に発展しかねないわ。
その前に企んで命じたバカごと始末しなきゃいけない。そうなったってわけ」
「裏に居た阿呆どもにとっちゃ最悪の展開だろうけど、こいつらの主が慈悲を貰えるかは難しいところかい?」
「久しぶりだな、ディーコルマ卿。
陛下は命じられて仕方なかったのであれば、慈悲を与えても構わぬと仰せだ。
厳しき事になるだろうが、転落しない道は残してやると。
ただし、それはそなたらが正しくこちらに従ったらとなる。分かるな?」
「「「はっ!」」」
手足を縛られているからか情けない姿だが、床に転がされていても返事はしっかりとしていた。
私達としては微妙な気分になってくるが、騎士としては正しいようだ。
「まずは彼らを立たせてくれ、王城内の牢へと護送する。
向こうの方が安全だからな」
「申し訳ありませんが、彼らは手足を一本ずつ折っています。
なので歩く事は難しく……」
「………君は?」
「マーコック卿、ハンターに礼儀を求めるんじゃない。
いつも言っているだろう、庶民に貴族の礼儀を求めるなと。
教えてもいない事で目くじらを立てるのは阿呆のやる事だよ。
陛下だって城に庶民を呼ぶ際には、礼儀を教える期間を与えるんだ。
それも無いヤツに目くじらを立てるんじゃない」
「………ふぅ、分かった。彼は報告せねばならん事を報告した。
そうしておいてやろう」
これが貴族家の当主か、臭い女の方がマシかと思えて来るな。
まさか臭い女以上に酷いのが居るとは思わなかった。
それでも臭い女とは違って関わらないように出来るのはいい事だ。
アレらの相手は絶対にしなければいけなかったからな。
「はぁ………それはともかく、アッシュが言うように手足が折られてる。
なら運ばなきゃいけないんだけど……デュジュ、頼めるかい?」
「え? いやよ、面倒臭い」
「とはいえねえ、王城に入れるヤツが連れてくしかないだろう。
アタシとお前以外に誰が居るんだい?」
「えぇぇぇぇ、そこの2人に任せればいいじゃない。
たかが運ぶだけなんだから」
「そこの2人じゃ王城には入れないって言ってるだろう、だからアタシ達が連れて行くしかないんだよ。
貴族街までは護衛を頼むけど、そこからはアタシ達だけだ」
「はいはい、分かったわよ。
持ってきゃいいんでしょ、持ってきゃ」
デュジュ殿はそう言うと、簡単にヒョイっと肩に担いで運んでいってしまった。
どれだけの力があるんだと思ったが、あれは【身体強化】か?
おそらくはそうだと思うのだが……
「流石はデュジュ殿の【身体強化】だな。細く必要なだけの力配分で強化しておる。
だから少ない消費で長く続けられるのだが、それだけではない独自技術もあるらしい。
なので長時間続けられるんだそうじゃ」
「へー………」
独自技術か、やはりそういうのが無いと金級にまでは上がれないんだろう。
流石だなと思いつつ、私は両手が塞がっているデュジュ殿とマスターを護衛していく。
私が右側で、ロッドン殿が左側だ。
貴族はどうでもいいが、私達は左右に布陣して盗賊を守る。
貴族は流れ弾か何かで死んでも知らないが、盗賊だけは守らないとな。
特に王城に運ばなければならない証人だ、殺されでもしたら目も当てられない。
だから守らないとな、こうやって。
キキキキン!
キキカキン!
「チッ! アッシュ、無事か?」
「ええ、問題ありません。
とはいえ、これが裏の連中ですか?」
「そうだの。平民街には入って来れるからな、こういう連中はどこの組織も置いている。
普段は平民のフリして生きとるのよ」
「なるほど」
全身を黒いフード付きのローブで覆っている連中であり、さらに仮面をしているので顔も不明だ。
種族の特徴が見えないので情報が無く、どういう特徴を持っているか分からない。
嫌な相手だなと思いつつ、私は右から来た6名と相対する。
向こうはロッドン殿に任せるし、マスター達は足早に移動している。
こういう時は足を止めないで突っ切った方が良いようだ。
考えてみれば、王城にまで行くと手出し出来ないので当たり前ではある。
あるが、こいつらしつこいな。
キキキン!!
「しつこいな、いつまで投げて来る気だ」
「むしろ、アッシュだったかしら? 貴方が完全に防げている方が驚きなのよ。
そんなデカい得物を振り回して、よくも毒ナイフを弾けるわねえ」
「毒ナイフ?」
「こういうヤツは暗殺さえ出来ればいいからね。
投げナイフに毒を塗っているのが普通よ」
なるほど、だからしつこく投げてきているのか。
当たれば殺せる毒を塗ってあるから。
とはいえ私が全て防いでいるので、一本も当たっていないがな。
そろそろ貴族街の門だが………こいつらはどうするんだ?




