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03-04-0084




 Side:アッシュ



 「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!」


 ロッドン殿が容赦なく盗賊の足を斧で切り裂く。

 派手に血を出しているが、私は特に気にもならない。

 移動馬車と親子は行ってしまったが、私達は現場に残って拷問中だ。


 「貴様らには良心というものが無いのか!!」


 「そんなもの敵に対してある訳がなかろうが。頭がおかしいのか貴様らは?

 そもそも貴様らが馬車を襲って来たのであろう、それも一般人の乗る移動馬車をじゃ。

 その結果、貴様らは負けて盗賊として死ぬのだ。唯の犯罪者としてな」


 「グッ………そこの貴様! 貴様にも良心は無いのか!!」


 「私はかつて奴隷闘士だった。

 そして命令のままに戦い100以上の者を殺してきたのだ。

 私にとっては今さら過ぎる事でしかない」


 「奴隷闘士だと!? 何という事を……」


 「お前達が言う事ではなかろう。

 一般人を襲った犯罪者である、お前達がな」


 「「「………」」」


 「ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!!??!」


 またもロッドン殿が斧を振り下ろしたらしいが、その一撃で足が切り裂かれている。

 それにしても、こいつらを運ばなくていいのだろうか?


 「ロッドン殿、この者どもを町に運ばなくてもいいのか?

 兵士や騎士に渡した方がいいと思うのだが……」


 「無駄じゃ。こういう奴らの手の者は、大抵が暗殺用の者もセットでおる。

 つまり町で預けても口封じをされてしまうのだ。裏の者を雇ってのう。

 だからここで口を割らせねば意味が無い。

 ワシもかつてアッシュの言うようにし、何も情報を得られぬままに死なせた事がある」


 「つまり、こいつらにとっては町に連れて行かれた方が都合がいいのか……」


 ロッドン殿からは嘘の臭いがしない。

 となると、本当に殺される事も込みで動かされた奴らの可能性があるのだな。

 しかし………移動馬車を襲うなど、そこまでしてさせるような事なのか?


 「お前達はおそらくどこかの兵士なのだろうが、コレがお前達のやるべき事なのか?

 忠義を持ってやる事が一般人を襲う事だとすれば、お前達は心の底から盗賊という事になるのだが……」


 「なんだと、貴様ぁ!!」


 「やめろ、口を開くな!!」


 「………」


 どうやら裏に何かあるのは確実か。

 しかし知られてはマズいという事なのだろうが、何故こいつらはローデオン商国を名乗ったんだ?

 適当に名乗るにしたって何かの考えがあるはずだ。

 まったく何も無く適当に名乗ったりはしないだろう。


 「ローデオン商国に罪を擦り付けようとしたのは何故だ?

 私はお前達が他国の者だとは思えない。同じガルセンツの者にしか見えないのだ。

 その割にはわざわざローデオンだと名乗っている。

 口裏を合わせるにしたって何かの理由があったはずだ。ローデオンに罪を着せる理由がな」


 「「「………」」」


 「おそらくだが、ローデオンとの間で進んでおる貿易の件であろうよ。

 たしかローデオンから酒の輸入をする筈じゃ。

 ワシはドワーフだからの、酒の事となると耳聡(みみざと)いのだ。

 しかしのう………酒は貴族の専権事項の一つでもある。

 つまり酒の元締めは貴族なのだよ」


 「なるほど、自領の酒が売れなくなっては困ると。

 つまりそれを潰そうと今回の事を?」


 「ローデオンに罪を着せるなら、それの可能性が一番高い。

 地元の酒造りの者も被害を受けるし、貴族の収入も減る。

 これなら忠義の為に兵士や騎士が盗賊紛いの事をするのも納得できるのだ。

 とはいえ、被害を受けた側にとっては盗賊の所業でしかないがの」


 「それは当然だし、そもそもこいつらはここで盗賊として死ぬのだろう?

 ならば違いなど無いと思うがな」


 「それに、近くにスライムがおるのが見えておる。

 アレを連れてくれば、こやつらの死体を悪用する事もできん。

 さっさとスライムに食わせれば良いだけだからな」


 「クソッ!! 誰か!! 誰か居ないかーー!!!」


 「何だ急に?」


 「大方こやつらの死体を誰かが見つけ、それを利用して王様か誰かを糾弾するつもりだったのであろうよ。

 その為の生贄でもあったという事だ。

 既に向こうの死体はスライムに食わせてある。スライム自体はどこにでもおるでな」


 「襲わせた側が味方の死体まで利用するのか………

 私からすれば、この者達とその後ろに居る者にこそ良心が無いと思うがな。

 どうしても酒の輸入が嫌ならば、王様に直談判すればよいのでは?」


 「王様には物が言えんが、こういう下らぬ事はするのであろうよ。

 となると貴族としては下っ端であり、子爵か男爵のどちらかしかない。

 伯爵や侯爵だと、まずは己らの地位を守るのが先だからの。

 悪党貴族であれば子爵か男爵にやらせる」


 「本当に悪党だな……」


 「そういう時の為に下っ端に金を貸しとるのよ。

 その金を盾にして、こういう時に代わりに動かすのだ。

 ………なるほど、お主らの主もそれか。よくある事でしかないのう」


 「クソォォォォォォォッ!!!」


 リーダー格の男が身を捩(よじ)りながら真っ赤になって怒るが、流石はロッドン殿としか思えんな。

 いや、長い経験の間に似たような事が多くあったのだろう。だから答えを導き出せるわけだ。


 「さて、では死んだので次のヤツじゃ。

 本当の事を言うなら今の内じゃぞ。そうすれば、お前達の主も名誉は守られる。

 上位者から命じられて、しかも借金をカタにされては断れんからの。

 このままでは盗賊の親玉として、名が地に落ちて家が潰えるぞ?

 本物の悪党は何の咎(とが)も受けずにのう……」


 「………我が主「止めろ、コイツの手だ!!」は……」


 「しかし隊長! このままでは本当に盗賊の親玉とされてしまいます!!」


 「…………」


 リーダー格の男は唇を噛み締めたまま黙っている。

 この男もどうしていいか分からないのだろう。

 答えは出せないままだ。


 「………アッシュ、このままココで待っておってくれ。

 ワシはスライムを連れて来る」


 「分かった」


 私はロッドン殿を見送って見張る。

 が、リーダー格を含めて誰も口を開く事なく時間だけが過ぎる。


 戻って来たロッドン殿はスライムを使って死体を処理していき、完全に死体が無くなるまで黙っていた。

 そしてこいつらの装備をきちんと持たせると、私に対していきなり言い出す。


 「アッシュ、ここはまだ王都から1つ目の町への途中じゃ。

 走って帰れば日暮れまでに間に合う。

 ワシも【身体強化】は得意でな、そなた2人持てるか?」


 「それは大丈夫ですが、王都に?」


 「ああ。ハンター協会の本部なら、簡単に暗殺者は入り込めん。

 何故ならマスターとサブマスターがおるからの。

 そしてマスターは子爵であり、当然上の方に顔が利く。

 そこまで行けば隠す事はできん」


 「なるほど。では急いで戻った方がいいですね」


 「うむ。こやつらを背負って走るぞ」


 「分かりました」


 私はリーダー格ともう一人を担ぎ上げると、ロッドン殿と共に【身体強化】をしながら走っていく。

 走っている最中ずっと使っていると枯渇するので、私は前へと跳びながら使っている。

 そうする事によって、なるべく消費を抑えているのだ。


 この移動方法はマーヤも気に入っていたもので、この時はポケットに入って飛ばされないようにしていた。

 本人は周りの景色が速く動くので楽しそうだったな。


 ロッドン殿も一瞬しか使わない【身体強化】を使っているので、やはり私の使い方は間違っていなかったらしい。


 「この使い方はなかなか難しいのだが、アッシュはやるのう。

 流石は22年も奴隷闘士をやって来ただけはある。

 伊達に22年、生き残ってきた訳ではないか」


 ロッドン殿は感心しているが、これはここ最近出来るようになったばかりだ。

 とはいえ、運んでいる連中に聞かれるのもアレなので黙っておく。


 それよりも、一気に進んで早く王都まで戻ろう。

 間に合わなかったら王都の外で一夜を過ごす事になる。


 王都のスラムは比較的安全だとしてもスラムはスラムだ。

 私は掟というかルールも知らないので、出来る限り近づきたくない。


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