03-03-0083
Side:アッシュ
10人のうち3人を殺した私は、依然として浮足立っている盗賊を攻める。
というより、冷静になる前に殺してしまわないといけない。
冷静になられれば対人戦闘の技術を磨いている兵士や騎士の方が有利だ。
私は新人ハンターであり、それ以前は奴隷闘士でしかない。
素早く盗賊に近づき喉を突き刺そうとしたが、流石に対策を取られてしまったのか相手はバックステップで離れる。
それを見た私は深追いせず、サイドステップで反対側の盗賊に切り替えた。
いきなり私が目の前に来たからだろう、慌てて剣を突き刺そうとしてきた。
が、私はそれを半回転でかわして首を切る。
いきなり慌てて動いては、兵士の剣も素人の剣と変わらない。
そして、その程度の攻撃に当たる私ではないのだ。
首から血が噴出する前に裏へと回り、左手で髪の毛を掴むと血を敵に向ける。
盗賊の顔に血が掛かるように向けたので、私に近づく事が出来なくなった。
血は脂も含んでいる為、簡単に流れ落ちるような物ではない。
特に目に入った場合は面倒な事になるのだ、塩分も含んでいるのでな。
私は血の勢いが減った盗賊を最後には放り投げ、立っている盗賊を倒す道具として使う。
こちらを殺しに来る敵の命など、丁重に扱ってやる必要は無い。
放り投げた私はすぐに次の敵へと向かい、再び首を切り裂きながら後ろに回る。
血で目が見えなくなっているので簡単な事だ。
左手で髪を掴んだ私は、顔に血を浴びていないヤツに向けて盗賊の首の血を飛ばす。
水分というのは腕で守ったところで侵入してくるという厄介なものだ。
顔の前で腕をクロスして必死に守っているが、私はそいつの首を突き刺して離れた。
前を見ていない相手など余裕で殺せる。
当たり前の事だがな。
ここまでで5人を殺している私は、更に敵に突っ込んで殺しに行く。
しかしここで盗賊が冷静さを取り戻す出来事が起きた。
「そこのデカブツを囲め!!
これを放って行ったのが運の尽きだったな。
囲んで動けなくしろ、コイツの赤鉄製のポールアックスで殺してやる!!」
リーダーの男が私のポールアックスを持って構えていたのだ。
それで今の私よりもリーチが長い事を思い出したのだろう、盗賊4人は冷静に私を囲む。
それも付かず離れずの距離で囲む為、私からは攻撃がし辛い位置だ。
強化ステップなら届くが、既に見られているしな。逃げられる可能性が高い。
「貴様らそれ以上近づくなよ。
こいつは妙なステップで一気に接近してくる。
剣を構えて確実に始末できるようにしておけ」
リーダー格がそう言うと、囲んでいる4人は腰だめに剣を構えて待つ。
どうやら私が強化ステップを使った所に、カウンターで突きを行うつもりらしい。
間違ってはいないだろう、私の強化ステップの距離では届かない位置に要るしな。
2人が私の左右、そしてもう2人が私の斜め後ろで構えている。
そして前からリーダー格がゆっくりと接近してきた。
しかしこのリーダー格は理解していないのだろうか? 1対1では私に………
「………(チラッ」
今なにか合図を出したな? 目線だけが僅かに動いたが、何かをやれという合図だろう。
この状態でやってくる事といえば………何となくの想像はつくし、それを防ぐには前に出るしかない。
リーダー格を盾にするしかな。
それ以外だと運に任せるしかなくなる。
私も短剣を右手で構えながら、敵が行動を行うタイミングを探っていく。
やって来た瞬間、一気に動かないと死にかねない。
「………」
「「「「「………」」」」」
敵も私もそのタイミングをジッと待つが、タイミングを決められる相手の方が有利だ。
私は全神経をタイミングに合わせ全力を使う事に傾ける。
そして………
「今だ!! やれい!!!」
「「「「「!!!」」」」」
私はタイミングが来た瞬間に動き出し、強化ステップでリーダー格に接近。
その瞬間、後ろの方で「ザッ」という音がした。
おそらく私の予想通りに構えたのだろう。
私はこの一瞬に掛ける為、極僅かな時間パープルオーガの強化を使う。
「「「「ふんっ!!」」」」
私の後ろに居た4人が一斉に剣を投げつけて来る。
が、その時には既に私は大きくジャンプをしていた。
リーダー格は私が居るので安全だと思ったのだろう、しかし私は既にリーダー格を飛び越えている。
つまり投げられた剣を受けるのはリーダー格だけだ。
「そ、そんなバ、ぐぁぁぁぁぁっ!?!?!」
「「「「隊長!?」」」」
ほう、隊長か。やはり兵士か騎士で正しかったな。
だが、ここはまだ王領だぞ。
ここで犯罪を犯すなど……いや、まずはこいつらを叩きのめすのが先か。
私は剣が当たったり切れたりして倒れているリーダー格に接近、膝を思いっきり踏み潰した。
ドゴンッ!!
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?!!」
これで逃げるのはまず無理なはずだ。
私は取られていたポールアックスを取り戻すと、すぐさま囲んでいた4人に接近。
右端の盗賊の足をポールアックスで切り落とした。
ズドン!!
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!!?!」
「「「!?」」」
他の3人は武器を探して後ろを向いていたのだが、慌てて悲鳴を上げた一人を見た。
その時には既に私が接近しており、右から2番目の盗賊の足を蹴り砕く。
既に【身体強化】は使いっぱなしの強化に移行している。
当然ここで一気に決める為だ。
ドガッ!!
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?!」
もう無事な盗賊は2人しか残っていない。
こうなると大した事は無く、最早こいつらに勝てる道など残ってはいない。
私は素早く接近しては足を潰し、そして全て倒すと身包みを剥いでいく。
そして脱がせた服で手足を縛るのだが、その歳に片腕を圧し折るのも忘れてはいない。
そうしていると、馬車がこちらに戻って来た。
「どうやらアッシュの方も無事に終わったようじゃの!
こっちも8名ほど出てきたが、土魔法とワシの斧で始末してやったわ。
子供や女子に怪我が無かったのは幸いじゃ。それに馬車も壊されておらんしの。
それよりこやつらが乗って来たパルデオムがまだおるのう?」
「連れていくか? それとも乗っていくか?
私が数頭の足を駄目にしてしまったが、残りは降りていたからな」
「ならワシが乗って連れて行こう。アッシュだと怯えて逃げ出すかもしれん。
パルデオムもそれなりには賢いからな」
「すまないが、そうしてもらえると助かる。
それより、こっちがリーダー格なんだが………」
「そういう言い方をするという事は、こっちもローデオンの部隊であったか?」
「「「「「!?」」」」」
「どうやらそのようだ。
まだ聞いてはいなかったのだが、この表情の変わりようは事実だろうな。
ロッドン殿の方は何故?」
「こっちには、こやつらの部隊長がおったのだ。
足や手を潰しながら聞いたら喋ったわい。
ただし本当かどうかは分からんかったのだがな。
だからこそ言ったのだ、こやつらで調べる為にの」
「そうしたら一気に表情が変わったという訳か。
となるとローデオン商国なのだろうが………あそこはその名の通り、商売と儲けにしか興味が無いはずでは?」
「そのはずだ。
これはそもそも人気の無いヴァルカネッサ地方行きの馬車。
なんだかキナ臭い、そう思わんか?」
「ええ。私達が行く所、まるでそこに行かせたくないようですね。
それもわざわざローデオン商国だと“言い張る”連中です」
「うむ。驚いたまでは良かったのだが、安堵した顔を見せてはいかんなぁ。
それでは“違う”と言っておるようなものじゃぞ?」
「「「「「………」」」」
必死になって表情を変えないようにしているが、ロッドン殿がああ言った後でコレではな。
確実にローデオン商国の者ではないだろう。
ではどこかと言われると………果たして拷問で聞き出せるだろうか?
難しい気もするが、やるだけやってみるしかないな。




