03-02-0082
Side:アッシュ
ロッドン殿は今も寝ているが、馬車は順調に移動を続けている。
特に何の問題も無いし、後ろから見えている景色に異常は無い。
そもそも開けた場所だし、見通しは非常に良い。
それを考えると、ここで襲ってくる可能性は高くないだろう。
盗賊が襲ってきやすいのは見通しの悪い場所だと聞く。
森や林の中を通っていく道など、そういった所に丸太を置いたりして通行を止めるらしい。
もしくはいきなり矢を射かけてくる事もあるそうだが、どのみち開けた場所で襲われる事は滅多に無いと聞いた事がある。
臭い女だったと思うが、だからこそ開けた場所を作って盗賊が居着かないようにするのだそうだ。
そういう事も領地経営には必要な事らしく、そういった事の費用がバカにならないと愚痴を言っていた。
とはいえ盗賊の出やすい領地などと噂になれば、どれだけ領のマイナスになるか分からない。
なので無理矢理にでも捻出して、どうにかしなければいけないそうだ。
とはいえそれの元手は結局税であり、負担するのは庶民ではないかと思ったがな。
なので開けた場所で襲われる事は滅多に無いはずなのだが………その滅多に無い事が起きている。
正しくは10騎ほどで追いかけてきているのだが、馬車は圧倒的に遅いので何れ追いつかれてしまう。
困ったな………どうしようか?
ゴトゴトゴトゴトトゴト………
「ぬ? ……なんでか妙にガタガタ揺れておるのう。
何かあったか?」
「実は後ろから盗賊らしき連中が追いかけてきている。
それでどうするかと迷っていたところだ」
「………なるほど、アレは盗賊じゃな。
とはいえ開けた場所で襲ってくるとは何を考えておるのやら?
アッシュ、お主ならあの後ろの連中を始末出来るか? ワシは前に出ねばならん」
「了解だ。10騎ぐらいならば私一人で十分だろう。
とりあえず相手の言う事など聞かずに一気に殲滅する」
「それで構わん。
そもそも移動馬車を馬で追いかけて来ておる時点で、確実に盗賊しかない。
それ以外にはあり得んのだからして、敵の言う事など聞かずに一気に倒してしまえ」
ロッドン殿から問題ないという言質が貰えたので、私はポールアックスを持って馬車の後ろから飛び出す。
馬車を牽いているのはパルデオムで、盗賊が乗っているのもパルデオム。
なので厳密には馬車や馬ではないのだがな。
飛び降りた私はすぐにポールアックスを構えるが、盗賊は私に対して槍を突き出してきた。
どうやら馬車よりも私に狙いを変えたようだ。
となると前にも盗賊が居るのかもしれない。
追いかけて罠の所にまで誘導する、という可能性もある。
ロッドン殿の方は大丈夫かと思いながら、私はポールアックスで相手の槍を弾く。
すると、別の騎馬が素早く槍を突き出してきた。
妙に手馴れているなと思いつつ、私は返す攻撃でそれらも弾いた。
当然だが【身体強化】を使っている。
ガン、ガン!!
「ちぃ!! こいつやるぞ! 囲め、3番で殺す!!」
「「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」」
どう考えても返事が盗賊じゃないぞ?
こいつら訓練された兵士、もしくは騎士じゃないのか?
10騎のうち半分の5騎が私を囲み、そしてもう半分は外側で私を囲んでいる。
そいつらは互い違いに回転しながら私の隙を探しているようだ。
内側が右回りで外側が左回り。
おそらくは私を逃がさずに確実に殺す為の布陣なのだろう。
とはいえなぁ、私は敵の好きにさせるほど愚かではない。
相手が私の周りを回っている間に一気に接近し、まずはパルデオムの足に攻撃する。
とはいえ手打ちであり速さ優先だ。
当然のように攻撃を受けたパルデオムは転倒、上の盗賊は投げ出された。
そしてそれを隙と見た残りの4騎が攻撃してくるが、私は【身体強化】で囲みの外側へとステップ。
そして外側の一人のパルデオムにも攻撃し転倒させた。
そして他のヤツが回ってくる前に、【身体強化】のステップで一気に離脱。
囲みの外へと脱出する。
ここまでに掛かった時間はおそらく30秒ほどか。
こういうのは時間を掛けずに一気にやった方がいい。
「くそっ! 3番が抜けられたぞ、一気に攻めて殺せ!!
こいつはここから絶対に逃がすな!!」
「「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」」
パルデオム2頭は立てなくなっており、2人の盗賊は徒歩で戦闘を行うらしい。
それでも動きが悪いのは、おそらく投げ出された際のダメージだろう。
残りは8騎と2人だが、囲まれていないならどうにでもなる。
私は槍を突き出して来る奴らの槍を【身体強化】で大きく弾く。
更には回避に徹して、傷を受けないように立ち回る。
当然ながら私の【身体強化】だ、飛ばされた槍の柄など折れてしまって使えない。
そもそも私のポールアックスは赤鉄製であり柄も太いのだ。
普通の鉄の槍で勝てる道理は無い。
盗賊は剣も佩いていたので抜いているが、パルデオムの上からでは届かせるのに苦労する長さだ。
当然そんな攻撃に当たってやる私ではなく、パルデオムを攻撃して転倒させていった。
それを見て理解したのだろう、パルデオムを下りて剣を構える盗賊。
「くそっ! こいつハンターの癖に異様なまでに強いぞ。
こうなったら仕方ない、裏の1番で仕留める。
気合を入れろ!!」
「「「「「「「「「はっ」」」」」」」」」
また妙な番号を言ったな? そう思った矢先、10人の盗賊は私を囲んで切りに来た。
が、剣を振るったのは半分の5人でしかない。
しかも間の者はそれぞれ剣を振っていないので、歯抜けのような形だ。
私は前に出ると、ポールアックスの柄で一人の剣を受け止めた。
かなり接近しているので他の者の剣は届いていない。
「掛かったぞ!! 今だ!!!」
リーダーの男がそう叫ぶと、歯抜けだった部分の男が一斉に私を切りに来る。
当然のように予想出来ていた私は、左手を柄から離して前に出つつ、その離した左手で盗賊の首を鷲掴みにした。
そして私は半回転するように【身体強化】で後ろを向く。
当然左手を前に出してだが、その結果5人からの剣を一斉に受ける鷲掴みにした盗賊。
ドッ! ザシュッ! ザクッ! ドシュッ! ズバッ!
「がぁぁっ!! ……が、あ………」
「くそっ! まさ、ぐあっ!?」
私は背中を切りつけられて重体となった盗賊を、リーダーの男に放り投げる。
その所為でリーダーの男は倒れたが、私はその隙に開いた左手で左の男の首を鷲掴みにし、そして適当な盗賊に投げつけた。
「ぐぁっ!?!」
「くっ! こいつ味方を投ぐぇっ!?!」
右のヤツが喋っていたので、そんな隙を見逃す私ではない。
右手をポールアックスから離して短剣を持つと、右の男の首を薙ぐ。
血が一気に噴出する前に蹴り飛ばし、私は更に先に居る盗賊に襲い掛かる。
ここまでの接近戦になるとポールアックスは邪魔だな。
そう思いつつ右の男の先に居た盗賊の喉を穿ち、すぐに離れる。
これで2人殺したが、盗賊どもは仲間を殺されて浮足立った。
こうなると一人でしかない私の方が有利だ。
喉を穿った盗賊を無視して近くの盗賊に強化ステップで接近、短剣を素早く喉に突き込むと捻って抜く。
この時点で放っておけば死ぬが、私は左手で喉を穿った盗賊を適当に掴むと放り投げた。
当たるを幸いに放り投げたのだが、盗賊2人を巻き込んだようだ。
横になるように放り投げたのが良かったらしい。
リーダー格の男も未だに倒れたままだ。
ここは一気に殲滅してしまうべきだな。
こいつらはおそらく兵士か騎士だし、立ち直られると面倒にしかならない。
あくまでも【身体強化】が上手く使える私が有利なだけだ。
戦いの基本に関しては、こいつらの方が上なはず。
ここは慢心せず、私が有利なままに決着をつけてしまおう。




