02-62-0080
Side:アッシュ
「という事は、わたし達のやるべき事ってモンスター退治?
しかも坑道に潜っての? ……面倒臭いわね」
「周辺のモンスターの間引きも含まれるから、分かれてしてくれてもいいよ。
アンタとラブが外、アッシュが坑道という風に分かれたらどうだい?
流石にアッシュは坑道の方に行かなきゃいけないだろうからね」
「そう、するかな? 坑道って狭苦しいから好きじゃないのよね。
昔、鉄級への進級で行かされた事があるけれど、凄く面倒臭かったのを覚えてるわ。
って、2人の鉄級への試験にすれば良くない?」
「………そうしてもいいけど、そうなるとアンタ達は王都で留守番って事になるよ?
それでも良いなら鉄級の試験にしてもいいけどね。
行かせるのはロッドンで問題ないだろうし」
「ロッドン?」
「ロッドンは銀4級のハンターで山髭族の男さ。
今回の鉱山の事はアッシュが居なきゃロッドンにさせているはずだったんだよ。
ただアッシュを戻す時期になって鉱山街に今回の問題が起きてね、だったらアッシュの経験の為に回そうかとなったんだ。
王都に近い鉱山だから、何かあっても連絡はすぐに来るし」
「まあ、それは確かにそうでしょうよ。
ならわたし達は留守番で、アッシュだけが鉱山へ出発か。
暇だけど王都で適当に遊んでおきましょう。
ついでにそのお金は適度にモンスターを狩ってくれば作れるでしょ」
「銀10級のアンタなら何の問題も無いのしか居ないよ。
そもそも王都の周りに危険なモンスターを置いとくはずがないだろう?
唯でさえ五月蠅いバカどもが多いっていうのにさ」
「居るわねえ、そういうバカ。
モンスターなんてどこにでも居るのに、少しでも居れば殲滅しろとか言い出す頭のおかしいの」
「祖国にも居ましたよ。
そんな事をしたって他所から来るんですから意味が無いんですけどね。
それも知らずに喚く頭の悪いのって居るんです、本当に」
そういえば臭い女の中にも、虫を見た途端に全て始末しろと言っていたのが居たな。
その一度で来なくなったが、どこにでも虫なんぞ居るというのに喚いていたのを思い出す。
そもそもだが、お前の屋敷にも虫は居るだろう、としか思わないのだがな。
何故か五月蠅かった。
虫嫌いなのかもしれんが、だったら屋敷から出るなと言いたかったぐらいだ。
もちろん言うと面倒な事になるので言わなかったがな。
「ま、そういう事なんで2~3日後には出発する事になる。
それまでには専門店に行って武器を見繕っておきな。
坑道の中はあんまり広くないから、主に使うのは短剣とかナイフになるだろう。
そこを考えて選びなよ」
「ナイフは良い物に替えたかったので、まずはナイフを見るつもりでした。
なので丁度良かったのかもしれません」
「解体用の事を考えてるなら、別のにしな。
解体用と戦闘用の2本を持つのが普通だ。
ハバンから習ったんだから仕方ないけど、アイツは【影魔法】が使えるからね。
普通のハンターと同じじゃないよ」
「あ………そういう事ですか」
「アイツも自分を中心というか、自分を前提にして考えちまうからね。
どうしても他のハンターの常識には疎い部分も出来るのさ。
戦闘用の物は短剣、解体用はナイフ。そう考えるといい。
閉所での戦いでも役に立つから無駄にはならないよ」
「閉所………建物内ですか」
「そうだね。ハンターの仕事の中には殺しもある。
凶悪犯を見つけた際には殺す事を優先しなきゃいけない事も多いんだ。
一番いいのは捕まえる事なんだけどね、中には実力者も多くいる。
そうなると殺してでも倒さなきゃいけないってのはあるのさ」
「<悪逆のドフォーグ>とか<戦鬼レレデオ>に<死切のジャジャ>。
後は<剛腕のセッバル>とか?」
「なんで有名どころばかり言うのか知らないけど、そいつらが出て来たら流石にアッシュでも勝てないだろ。
命を保つ為には逃げる事も重要さ」
「「………」」
私は特にどうも思っていないが、マーヤとラブは何とも言えない表情となった。
そしてそれを見て困惑するマスター。
まあ、私も知らなかったくらいだし、マスターも違法闘技場の中で行われていた事まで知らなかったのだろう。
「なんでそんな顔をするのか知らないけど、言いたい事があるならハッキリ言いな」
「その4人は違法闘技場でアッシュに殺されてるみたいよ。
おそらく間違いないと思うわ」
「は?」
「<剛腕のセッバル>に至っては、アッシュさんに両腕を圧し折られたそうですよ」
「………」
マスターもさっきの2人と似たような顔になったが、マーヤとラブが頷くと、何故かマスターも頷いた。
何かは分からないが、何かを確認し合ったらしい。
私には分からないので気にしない事にする。
気にしても仕方ないからだが。
「そろそろ私達は貴族街にある専門店に行ってきます。
話を続けていても、後は世間話しかないようですし」
「ある意味でとんでもない話ではあるんだけど、それに関しては上に丸投げしておくしかないからね。
行ってきな」
「失礼します」
私は一礼して執務室を出ると、一階に下りてハンター協会を出た。
そのまま貴族街の方へと進み、門番にマスターからの紹介状を見せると通して貰えた。
こっちに来るのは初めてだが、平民街と違って混雑がまるでないな。
出歩く者が居ないからだろう。
そう思っていたらゾロゾロ歩いている者を発見したが、どうやら貴族の奥方らしい。
周りに護衛が居るのでよく分か………私はその人物達からそっと目を逸らす。
アレはかつて見た事がある臭い女の一人で間違いない。
まさか王都に居るとは思わなかったな。
幸い向こうはこちらに気づいていないので無視しておこう。
こんな所で妙な話になっても困る。
マーヤとラブは私の行動に何となく気づいたみたいだが、何も言っては来なかった。
そのまま私達は専門店まで来たので中へと入る。
専門店が貴族街にあるのは、高価な素材を使っている武具だからだ。
防犯の為にも貴族街の方が守りやすいらしい。
なにより貴族街の方が兵士や騎士が多いのだ。
実際に巡回している者が必ず居るらしく、更には詰所のような場所に5人ほど常駐している。
そこまで居るならば犯罪は犯せまい。
私でさえそう思うのだ、他の者も同じように思うだろう。
専門店の中に入り紹介状を見せると、店主から購入の許可が出た。
なので色々と見ていくも、マーヤが言っていたポールアックスぐらいしかしっくり来る物が無い。
剣は幅が狭く軽い為、あまり使い勝手が良さそうではなかった。
他の物も似たような物だったので却下。
半月型の斧刃だが、後ろ側はピッケル状になっている物を選ぶ。
長さは150センチで、柄の太さは直径8センチ。
十分に振り回せる私としてはコレで問題ない。
後は分厚い刃の短剣と解体用のナイフを買うのだが………
「まさか小金貨4枚も掛かるとは思わなかったな。
それでも買えただけマシか」
「マシですよ。そもそもソレ赤鉄製ですし、もっと高くても不思議じゃありません。
っていうか、小金貨4枚も持っていたんですね。
そこにビックリです」
「私はもっと持ってるわよ!
……っていうのはともかくとして、ハンターになってから日が浅いのによく持ってたわねえ」
「アレはハバン殿が取って来てくれた、私への慰謝料らしい。
簡単に言うと、違法闘技場の女オーナーの懐にあった金銭なんだそうだ。
私が貯めていた金銭は小銀貨で3枚ほどしかなかったのでな。
それで私が貰っても罰は当たらないだろうとくれたのだ」
既に専門店を出ての帰り道だったのだが、その事を聞いたマーヤとラブが憤慨した。
「22年も奴隷闘士を無理矢理させておいて、手元にあったお金が小銀貨3枚ってどういう事よ!?」
「信じられません! あまりに非道が過ぎるでしょう!!
そんなの絶対に許されない事ですよ!!」
そうは言われてもなぁ。
お金を貰ったところで使える場所も無かったし、そもそも町に出られる事もほとんど無かったのだ。
だったら持っていても意味の無い物でしかない。
もちろん、あそこを出てからは違うがな。




