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 Side:アッシュ



 私は2つ目の部屋の<混沌の種>を全て消し、いよいよ3つ目の部屋へと入る事になった。

 この時点で今まで持っていた澱(おり)の魔力量を超えているのだが、果たして私は大丈夫なのだろうか?

 多すぎる魔力に破裂したりしないよな?


 「さて、3つ目の部屋に行く前に言っておく事がある。

 もし駄目ならすぐに部屋から出な。

 それと、おかしくなったヤツが居たら問答無用で叩き出す。

 いいね?」


 「当然でしょ。ステージ3と4の<混沌の種>は本当にマズいもの。

 私は今までに何度も見た事があるから大丈夫だけど、アッシュとラブはマズいかもね。

 駄目ならすぐに出さないといけないわ。

 おそらくアッシュは大丈夫だと思うけど……」


 「だね。<混沌の種>を吸収しても問題ないくらいだ。

 アッシュは問題ないだろうさ」


 「ぼくは気分が悪くなったらすぐに出ます。

 おかしくなるのも嫌なので」


 「よし。それじゃ、入るよ」


 マスターが開けた木の扉から入ると、先程マーヤから出ていた靄(もや)と同じような感じの塊があった。

 間違いなくこのおかしな色だったので、やはり先程マーヤから漏れていたのは<混沌の種>の中身らしい。


 私は近くにある小さな<混沌の種>を持ってみる。

 そして手の平を目の高さに持って来て見ていると、徐々に小さくなっていく事が分かった。

 やはりコレも消せるみたいだ。


 「大丈夫なの、アッシュ。狂ってない?」


 「狂ってはいないし、問題なく小さくなっていく事が判明した。

 後はコレを吸い込んでも大丈夫かどうかだが………少しずつやってみるしかないな。

 先程のマーヤのような失敗をしても仕方ない」


 「それ、お願いだから言わないでくれる?

 普通はさ、目の前でアッシュが大丈夫なんだから、私も大丈夫だろうって思うじゃない。

 そしたら、あんな風になるなんて思わないわよ」


 私の左肩に乗りながらマーヤが言うが、そもそも慎重に事を行うのは当たり前だと思うのだがな?

 モンスターを統率者にしてしまう危険な物だと教えてくれたのは、いったいどこの誰だったのだろうか……


 呆れて来るものの、私は気合を入れて少しずつ吸い込んで行く。

 散々やってきたので、大凡(おおよそ)の力加減は分かっているつもりだ。

 なので、少しの吸い込む力で様子を見る。

 すると……


 ドクン!!


 「う………?」


 「なに? 危険ならすぐに止めなさい!」


 「アッシュさん、すぐに吸い込むのを止めて下さい!!」


 「アッシュ、止まれ!!」


 「いや、大丈夫。

 何というか………魔力がほとんど含まれていない?

 澱(おり)のような魔力が増えた感じがしないのだ」


 「そぅなの?」


 「ああ。しかし代わりに………体が活性化してる?

 何だか今までより体がスムーズに動かせそうな気がする」


 「………いやいや、意味が分からないんだけど?

 そんな健康に良い食べ物みたいに言われても困るのよ。

 って、本当にそんな感じなの?」


 「ああ。

 何故か分からんが体が活性化しているというか、元気になっている感じだな。

 疲れが取れたというか、爽やかな朝と言えば伝わるか?」


 「意味が分かりませんね? いったいアッシュさんの体の中で何が起きてるんでしょう?

 それと、魔力がほとんど含まれていないという事は、そのおかしな色の中身とはいったい……」


 「残念ながら考えても分からないね。

 少なくともアッシュ以外には害しかない物さ。

 何故かアッシュは問題ないみたいだし、恩恵しか受けないようだ。

 だったら全部吸収しちまっておくれ。

 こんな物あったって邪魔だからね」


 「了解。

 なんだか無性に体を動かしたくなるが、とりあえず全て吸収してしまおう」


 私は何故か元気になる<混沌の種>を吸収していき、全て終わったら慎重に上へと戻って行った。

 音をさせても困るからなのだが………妙に体が動かしやすいな?

 何故か指先にまでしっかり意思が伝わっているような、そんな感覚だ。


 今までとは全く違う、新しい自分になったような、それでいて今までの自分の延長線上に自分がある。

 何と言うか、非常に説明し辛くて悩む。

 だが、自分の体が自分じゃないくらいに上手く扱えているんだ。

 それは間違いない。


 「まあ、言いたい事は分かるよ。

 行きよりも帰りの方が遥かに足音が小さかったからね。

 それだけ上手く自分の体が使えてるって事だろうさ。

 それよりも、それぞれの場所に行っては<混沌の種>を減らしていってくれると助かる。

 出来るのはアッシュだけだからねえ」


 「次の場所はヴァルカネッサのオゥリーだっけ?

 この国の王都からそこまで離れてもいない場所かー。

 ………もしかして王か王族から何か言われた?」


 「…………はぁ、流石にアンタが居ると誤魔化すのは無理かね?

 アッシュは分かってないだろうから説明すると、オゥリーの町は鉱山の町であり、鉱山は全て国の物なんだよ。

 勝手に金属類を他国に売られても困るんで、昔から変わらず鉱山は国の物なのさ。

 当然、鉱山街も国の物となる」


 「ぼくの祖国でもそうですが、自分の領地に鉱山があると、国から年間にある程度の金銭が支払われるんです。

 何もしなくても貰えるので、鉱山が領地内にある家は恵まれていると言われてますね」


 「儲かるから裏でコッソリと……というのは無いのか?

 もしくは鉱山があっても黙っているとか」


 「そもそも鉱石を精錬して金属にするには炉が必要よ。

 それも大量生産するには巨大な炉が要るの。

 そんな物を建設したら、流石に国の監査にバレるわよ。

 それなら何もしなくても得られるお金の方がありがたいって事ね。

 鉱山から掘り出すのも精錬するのもタダじゃないし」


 「なるほど。

 掛かる費用や仕事量を考えると、面倒なものは国に放り投げた方が良いとなるわけだ。

 そして国は金属類を他国に出さずに自国で使えると」


 「そういう事さ。

 とはいえ鉱山が多い国とか、豊富に採れる国は違うけどね。

 そういう国は国家が計算して輸出してるよ。

 金属類はどこの国も欲しがるものだから、買い手は必ずつく。

 特に鉄は必ずと言っていいほどに売れるからねえ」


 「赤鉄や聖鉄の材料でもあるからね。

 もちろん銅も優秀な金属になるから重要は大きいし、金銀に至っては貨幣で使うもの。

 率先して掘り出されるわ」


 金属というのも考えてみると、身近な物なのだなと改めて思う。

 貨幣を始め、確かに身近に大量に存在するのだ。

 ならば国が他国に出したくないと考えるのもよく分かる。

 しかし……それと巡回先に何の関係が?


 「おそらく坑道か鉱山に問題が起こって、それの対処にアッシュが使いたいって事なんじゃないの?」


 「あっさり言い当てるのは止めてほしいねえ、簡単に分かる事ではあるんだけどさ。

 それはともかく、アッシュにやってほしいのはモンスターの駆除だよ」


 「それって地元のハンターで事足りるのではありませんか?

 鉱山街ってハンターが多い所ですよね? 運ぶ仕事もありますから」


 「そうなんだけどねえ………まあ、いいか。

 笑い話にしかならないんだけど、オゥリーには鉱石運びの仕事をする奴らばかりで、肝心の強いハンターが碌に居ないんだとさ。

 儲かるモンスターが出る場所じゃないから、ってのが理由だよ」


 「ああ、そういう………」


 「儲かるモンスターが居ないなら、確かに強いハンターは居ないでしょうね。

 ですが……」


 「そう、普通は数に任せて倒しちまえばいいとなる。

 しかしね、地下の方で空洞にぶつかったらしいんだけど、そこに大量のモンスターが居たらしい。

 今は【土魔法】で崩したから来れないようだけど、掘ってる先でぶつかってるからね。

 国としては何とかしたいのさ」


 「有力な鉱脈があるかもしれないし?」


 「残念。あるのが既に分かってる」


 「ああ、そりゃ駄目だわ。

 何としても国はモンスターを殲滅するでしょうよ」


 「特に金鉱脈ともなればね、国が諦める筈が無いのさ」


 「それは無理ですね。絶対に諦めないでしょう。

 たとえ多くの犠牲が出たとしても殲滅しますよ。

 それ以外に選択肢はありません」


 金と言えば最上級の金属であり、最も価値の高い天然の金属だ。

 どの国も金鉱脈など、喉から手が出るほど欲しいだろう。


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