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Side:アッシュ
不思議な事に<混沌の種>の中から何かを吸い上げると、私の魔力が増えた。
正しくは最大魔力量と言うべきか?
なぜか魔力の持てる量そのものが増えている。
意味が分からないが、いったいどういう事なのだ?
「アッシュの持てる魔力。
つまり最大魔力量が増えてるって事は、<混沌の種>って魔力の塊なの? それともそうじゃない?
そもそも<混沌の種>っていったい何なの?」
「それを調べていたのも研究所だけど、研究所は答えを出せないままさ。
もしかしたら今の私達の方が答えに近いのかもしれないね。
しかし魔力かそれに近い物となると………」
「<妖精のキス>が使えるマーヤさんも、同じように吸えるという事では?
だって魔力に近い物なんですよね?」
「そうよ! 私も魔力量を増やせるわ!
なんて凄いんでしょう、ここは宝の山ね!!」
そう言うとマーヤは早速近くの<混沌の種>に近づいて手を置いた。
魔力を吸い上げるつもりなのだろうが……
「私も魔力量を増やして更なるパワーアップを果たすのよ。
言うなればスーパーマーヤちゃんに生まれ変わ、ぶぅぉぉおぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!!?」
「ちょ! 大丈夫かい?
何があったっていうんだ!?」
「うぶっ! うぼぇっ!? おぉぉげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!??!???!」
吐きそうになっているマーヤは吐けないような状態になっているが……
なんだ? マーヤからおかしな色の靄が出ているような?
あの靄はいったいなんだ?
私は気になったのでマーヤの近くに手を持って行くと、いきなりマーヤが私の手に抱き着いてきた。
いったいどうしたのだろうか?
「あー…………なんでか知らないけど、アッシュの手に触れてると気持ち悪さが減る。
コレってなに?」
「知らないけど、いきなり危ない事をすんじゃないよ。
死んだらどうするつもりだい、まったく」
「それよりも、アッシュさんとマーヤさんの違いって何でしょう?
何が違うから2人で結果が変わるんでしょうね?」
「さあねえ?
とはいえアッシュが何かを吸収しているのは間違いないし、それをコイツも吸収したのは間違いない。
でも何も問題ないアッシュと違って、コイツは吐くほどに気持ち悪くなってる。
この違いは何だって事だけど……」
「わたしがアッシュの手に触れてると楽になるって事は、その何かはアッシュに効かない。
もしくはアッシュはそれを綺麗に出来るって事だと思うのよ。
今も触れて楽になってる以上はさ、そういう事だと思うのよね」
そう話し合っているが、私としては先程の靄がそれだと思うのだがな?
「先程マーヤから得体のしれない色の靄が出ていたぞ?
なんというか、色々な色に見える気味の悪い靄だったが………」
「それって……もしかしてステージ3以降の<混沌の種>の色なんじゃないですか?」
「アタシには見えなかったけど、だとしたら元々<混沌の種>にはアレが含まれてるって事かい?
そしてアッシュはそれを綺麗に出来る?
だから魔力という恩恵だけ受け取れる、と考えれば辻褄は合うね」
「うぇぇぇぇぇ………あんなものが私の中に入って来たっての?
勘弁してよ」
「アンタが勝手にやったんでしょうが。
そもそもあんな物を取り込むなんて、昔の邪法と何も変わらないよ。
しかもその非道な研究は失敗したろうに」
「でもアッシュさんは取り込む事に成功してますよ?
アッシュさんって生まれが分からないんですよね?」
「それはマーヤにも言われたな。
私はその実験とやらに成功したのではないかと。
だが残念ながら分からないとしか言えん。
私は自分の出自を知らないし、それどころか種族も分からんのだ」
「ただ何がしかの秘密はありそうだけどねえ。
とはいえ、今は<混沌の種>を消せる方が大事さ。
……ってどうかしたかい?」
「いや………増えた魔力なのだが、まるで澱のように沈殿しているのだ。
となると………」
「元々アッシュが持ってた魔力も澱のようになってたし、誰かが<混沌の種>をアッシュに与えてた?」
「アッシュさんは澱のような魔力をいつから持っていたんですか?
それによって分かると思います」
「すまないが、私はヴェルイーの支部長に教わるまで、自分の魔力の感じ方すら知らなかったのだ。
だからいつからと言われても……」
「最近分かるようになった以上は、いつからと言われても困るだろうさ。
とりあえずアッシュはどんどん<混沌の種>を消していっておくれ。
こんな物が溜まってたって何の得も無いんだからね」
「それに澱のような魔力が増えるって事は、また紫色のパワーが出せるようになるって事だもんね。
今度こそはアッシュ自身が制御して使わないと」
「そうですね。
短時間とはいえアレが使えるとなれば、ワイバーンすら単独で狩れますよ」
「そんなパワーだったのかい?
そりゃまたとんでもないねえ……」
そんな会話を聞きつつ、私は体中に<混沌の種>をくっ付けられながら吸い込んでいく。
どんどんと<混沌の種>が小さくなって消えていくが、私は全身で吸い込むようなイメージを持ちつつ行っている。
それが良かったのか、意外に早く終わったので奥の扉から先へと進む。
中に入ると今度はステージ2の物が並んでおり、中にはファイアリザードの物と変わらない大きさの物が納められている一角があった。
「アレがモンスターに大量に与えて討伐していたってヤツ?」
「そうさ。あの大きさで止まるんだけど、沢山あるだろ?
ある種の限界ってのがあるみたいでね、幾らでもモンスターが食う訳じゃないんだよ。
限界になると食べなくなっちまってね、そうなると後は戦って倒すだけさ。
だから何れはここも一杯になっちまうところだったんだ」
「なるほど、限界はあるんですね。
決して幾らでも食べさせられる訳じゃないと」
「ああ。
とはいえ統率者そのものが簡単に出て来るようなヤツでもない。
なんで昔からの物が溜まり続けているといっても、まだ満杯になるほどじゃないんだよ。
だいたいソレの大きさの倍から3倍ぐらいまでだね。
個体差はあるけど、それぐらい食うと限界になる」
「つまり半分から3分の一ぐらいにまで減らせるって事ね。
そりゃどこからも困ったって声が聞こえてこないはずよ。
そこまで減らせるなら、後は分散させればいいだけでしかないし」
「そういうこと。
ま、だからこそ各所に溜まってるんだけどね。
王城の研究所にもあるけど、アレはあくまでも研究の為の物だから行く必要は無いよ」
「言われてなくても行かないわよ。
何で面倒臭い連中の相手なんてしなきゃいけないんだか」
「いや、行くのはアッシュだろうに。
まあ、王城には研究用の小さなのしかないから、放っておいても問題は無い。
そもそも危ない物を王城に持ち込むなんて出来ないからね。
たまに思い出したように、研究したいから持ってこいとかホザきやがるけど」
「それは御苦労様ね。
バカに付き合わされると大変で仕方がないって思うわ。
………アッシュ、どうかした?」
私はマーヤに聞かれたので答える。
「澱の魔力が増えているが、やはり大きさによって変わるらしい。
大きいのの方が増える量は多い」
「そりゃそうでしょうよ」
「いえ、そういう基本的な事は大事ですよ。
変わらないのであれば、また考えなければいけませんので」
確かに小さいのと変わらないとなれば、それはそれで別の疑問が生まれてくるしな。
当然と言えば当然だ。




