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02-59-0077




 Side:アッシュ



 「ファイアリザードを倒した後は、適当に国境のモンスターを退治してたりしたら呼ばれたってわけ。

 で、それはいいんだけど、貴族街にある専門店の紹介状をくれない? アッシュの為の強い武器が欲しいのよ。

 金棒は鈍器だから、硬いモンスター相手だと効かないし」


 「ファイアリザードは鱗のあるモンスターだからね。鱗が硬いが肉は柔らかい。

 だからこそ鈍器で殴っても力が分散してしまう、そういう事だね?

 言いたい事は分かるし理解も出来るんだけど……それはちょっと待ってくれるかい?」


 「どういうこと?」


 「次にアッシュに行ってもらうのは、ヴァルカネッサ地方のオゥリーの町だ。

 あそこにある鉱山周辺の調査となる」


 「あー……そういうこと。それはまた厄介な事を言い出すわねえ。

 鉱山の中に出て来るモンスターは、基本的に硬いヤツが多いわ。

 特に硬くて脆いタイプがね」


 「硬くて脆い? 矛盾してないか、それは」


 「してないわ。一定以上の力で殴りつければ壊れるの、だから硬くて脆いとなるわけ。

 とはいえ専門店の紹介状は寄越しなさい。それなら複合武器をアッシュに持たせればいいだけよ。

 特に後ろが鈍器系の物を持ってもらえば、両方に対応できるでしょうが」


 「ポールアックスの系統にあるけど、ああいうのは耐久力が犠牲になりやすいんだけどねえ………

 仕方ない、紹介状を書いてやろう。

 確かに装備が悪くて死にましたとなったら話にならないし、そうなってもらうとこっちも困る」


 「そうそう。片方が斧で、もう片方がハンマー。もしくはピッケルのような物でもいいわね。

 そうすれば刃物と鈍器で戦えるし、無理にハルバードみたいな槍を加えなくてもいいでしょ。

 そんな事をしたら武器が重くなりすぎるわ」


 「そもそも鈍器と斧刃だけで十分に重いけどね。

 斧刃の裏はピッケル系にした方がいいよ、ハンマーヘッドだと重くなりすぎる。

 威力は出るけど持ち運びに不便過ぎるし、体力を無駄に消費するだけだ。

 斧刃も当てやすい三日月型にするといい」


 マスターは紹介状を書きながら武器の助言もしてくれている。

 私は複合武器? というような物は使った事が無いので分からない。


 とはいえポールアックスは闘技場にあったので練習した事はある。

 なのでそこまで使えないという事もないだろう。


 「三日月形のヤツより半月型の方が耐久性は高いんだけど、それじゃ重量バランスが悪いかしら?

 あんまり軽くし過ぎると、それはそれで威力不足になる恐れもあるし……」


 「まあ、行ってみて持ってからさ。

 それと最後に判断するのはアッシュだから、アッシュの使いやすそうなのを買ってきな。

 他人は適当に言うけど、使うのはアッシュだからね。

 周りが何を言ってきても、自分が使いやすいのにしなよ」


 「分かりました。

 それと、私が<混沌の種>を消せる件はどうしましょうか?」


 「は?」


 マスターが口を開けて呆けたような表情になった。

 流石に私が言っている事が理解できないらしい。


 まあ、いきなり言われても意味が分からないだろうな、とは思う。

 <混沌の種>が消せるなんて意味不明だし。


 「…………すまないね。耳がおかしくなっちまったようだ。

 もう一回言ってくれるかい?」


 「別に耳が遠くなったりなんてしてないわよ。アッシュは本当に<混沌の種>を消せるの。

 正確には持っているというか触れていると小さくなっていくのよ。

 で、最後には消えるわ」


 「………どうやら冗談じゃないようだね?

 だったら消してもらいたいが………大丈夫かい?」


 「大丈夫か、ですか?」


 「ここは王都のハンター協会本部だ。当然ながらマズい<混沌の種>も封じてある。

 過去に討伐されたステージ3や4のヤツもね」


 「それは………分かりません。

 少なくともステージ2までなら消せる事は実証済みです」


 「なるほど、だったら書き終わったからコレ持ってついてきな。

 ………行くよ」


 マスターは執務机の引き出しから鍵を取り出し、そして足早に執務室を出た。

 どこに行くのかと思ったら、途中の部屋の鍵を開けて入る。

 こんな所に置いてあったのかと思うも、部屋の中には本棚と本しかなかった。


 部屋の中に入ったマスターは、急に小声になって話しかけて来る。


 「この部屋は資料室だけど、部屋の中に隠し扉がある。

 ここから地下へと行けるんだけど、静かに歩いてついてきな。

 1階に音が響く可能性があるんでね。

 ドスドス歩かれると困るんだよ」


 そう言ったマスターに対し、私達は頷くだけで返事を返す。

 そしてマスターの後をついていくと、奥の壁際の本棚まで来た。

 そして本棚の横に手を掛けると、それを扉の様に開く。

 すると本のある部分が表となっていて、奥に通路が見えた。


 「こんな隠し扉まで用意しないと、よからぬ連中が<混沌の種>を奪いに来るのね?」


 「バラ撒けば国を混乱に陥(おとしい)れる事も可能な代物だ。

 特級の危険物として扱わなきゃいけない物さ。

 特にステージ4のヤツはね」


 確かにそうだろう。

 食べたヤツをステージ4のバケモノに変えてしまうような物だ。

 あまりに危険すぎて封印するしかないだろうし、それ以外にどうする事も出来ない。


 裏の通路の途中にランタンが掛けてあったのでマスターは手に取り、それに魔法を使う事で点火。

 それを左手に持って先へと進んで行く。


 通路の奥には階段があったので、私達はゆっくりと音をさせないように慎重に下りていった。

 そして地下にまで下りると、今度はひんやりとした石の床や壁に変わる。

 どうやら地下はかなり強固に作ってあるらしい。


 そんな中を歩いて行くと、重厚な木の扉があったので開いて中に入る。

 奥に木の扉が見える部屋の中には、小さな<混沌の種>が保管されていた。

 どうやら段階が進むと奥の部屋に入れていくらしい。


 「ここは最初の部屋だから危険な物は無いよ。

 まずはここの<混沌の種>を消してもらおうかね?」


 マスターとしては半信半疑なんだろう、気持ちはよく分かる。

 私は近くにあった小さい<混沌の種>を持ち、マスターの目の前に手の平を上げる。

 そうして見ていると………


 「ね? <混沌の種>が小さくなっていくでしょう?

 それ、最後には消えてなくなるのよ」


 「………確かに<混沌の種>が小さくなってるねえ。

 こんな事が出来るヤツなんて初めて聞いたけど、いったいどういう事だい?」


 「私に聞かれても困ります。

 そもそも統率者を倒した後に<混沌の種>に触れたのが初めてですし、その時に発覚したんですよ。

 それまでに<混沌の種>に触れた事も無いんですから、知っている事なんて何もありません」


 「まあ、それは確かにそうだろうね。さっきのはアタシが悪かった。

 とはいえ………消えたか。

 ちょっと調べてみていいかい? 手の平だけなのかどうかをさ」


 「ええ。むしろ私も知っておきたいので、お願いします」


 すると私の手の平、腕や二の腕、更に太ももなどにくっつけ始める。

 その結果、私の近くにあればさえ消えていく事が判明。

 しかしその距離は短い。


 私から10センチも離れれば消える事も小さくなる事も無い。

 そして肌に触れている時の方が早く小さくなる事も判明した。


 「アッシュって大気中の魔力を微量だけど吸い込むじゃない?

 アレと同じように吸い込んだり出来ないの?

 そしたらさ、もっと早く消せると思うんだけど」


 「<混沌の種>の中身を吸い込むって事かい?

 そりゃ危険すぎないかね?」


 「でも、それなら肌に付いて消えていっている時点で危険では?」


 「とりあえず少しだけ試してみるか。

 呼吸のように吸い込めばいいのだろう?」


 「そうよ」


 私はマーヤの言う通りに、手の平に持っている<混沌の種>から何かを吸い込むのを意識する。

 そうやって吸い込んでいると、とある事に気づいた。


 「おお、早く消えたわね! これが正しい方法なんじゃないの?」


 「アッシュさん、大丈夫ですか?

 手の平をジッと見てますけど、何か危険が?」


 「いや、危険は何も無い。

 何も無いんだが………魔力の量が増えたぞ?」


 「「「……はい?」」」


 なんでだ?


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